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第83話 俺、冒険者達に大人気になる
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――ダンジョンのロビーに座り込んで3日、俺の目の前にはロビーを埋め尽くさんとする程の人だかりができていた。
全ては天使を使役する少年がペストマスクを被る奇妙な格好の医者のおかげとキャンプ中に喋って回った為だ。
(あの少年の功績により、この人気ぶり。いや~情報って怖いな~、戸づまりすとこ)
「――おい! あんたが天使のガキが言ってた医者なんだろ? 早く俺にもダンジョンの攻略方法を教えてくれ!」
俺は今壁に凭れる様にして座っている。今喋ったのは真正面にいる重厚な鎧に躰を包んだ大男が叫んでいる。
「落ち着け。まず、この場に盗賊は何人いる?」
俺がそう言うと何人かの人間が手を上げた。
「盗賊諸君、俺の前に来い。良いか、ダンジョンには無数のトラップや隠し部屋がそこら中にあるんだ。それを唯一見破れる存在がお前らだ。ダンジョン攻略において盗賊はキーパーソンである事を覚えておけ。時にお前らは鷹の目を使えるか?」
「鷹の目?」
周りの盗賊達がざわつき始めた。皆目を合わせては首を左右に振っている。
(マジかよ~。鷹の目使えないとか話進められないんだけど!)
「ひ、ひとりもいないのか? ほら! 罠を解除したり、目視で状態異常を判別する奴!」
「判別眼の事か? それなら盗賊なら最初に覚えるスキルだ」
「な、なんだあるんじゃないか。そう! その……判別眼を使って隠された部屋を見つけ出すんだよ!」
「そうすればあの子供の様に強い武器が手に入るのか!」
周りの連中が『おぉ!』と声を上げ喜んでいる。
「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。全ては己の運で決まるからだ。ダンジョン内には宝箱に擬態したミミックだっているんだぞ。欲張り過ぎてピンチになり、結果パーティ全滅って事も十分ありえる」
俺の言葉に嬉々とした雰囲気は一瞬で沈む。
「では、どうすれば?」
「百聞は一見にしかず。盗賊諸君? 観察眼を今この場で使ってみろ」
「この場で?」
「よし、やってみよう」
「お、俺も!」
次々と盗賊達の目が緑色に光る中、突然大声が響き渡る。
「入り口近くに階段が出来ているぞ!?」
「何!? それは本当か!?」
周りの人間がてんやわんやの大騒ぎを始めた。このダンジョンのロビーは決して広くない為、1人か2人動くとそれに釣られて周りも動かざるを得なくなるのだ。
「落ち着け! 止まれ!」
俺が叫ぶと一瞬で静かになった。
「ここはローグタイプのダンジョンだ。1日に一度入ると必ず構造が変わる。その階段は俺が見つけて放置しておいたものだ。良いか? 耳の穴かっぽじってよーく聞け? ダンジョンの醍醐味は敵を倒す事だけではない。隠された通路や財宝を見つけて己を強化する事こそ、ダンジョンの醍醐味! それがローグだ! 覚えておけ! わかったか!?」
「「「「はい! 先生!!!」」」」
「誰が先生だ! 長くなったが、最後に言っておく。30階毎に美味しい仕掛けを施しておいた。もしかしたらあの天使を使役する少年の様な存在にお前等もなれるやも知れんぞ?
それと罠やモンスターに襲われて死んでも、全てのアイテムと経験値を犠牲にしてロビーに強制送還される様にダンジョン全体を改造しておいた。幾らでも死ねるから安心して潜るがいい。何をボケッとしてんだ? 隠し通路見つけたなら潜って潜って潜りまくれ!」
――一瞬の静寂がこの場を支配したその時――。
「い、一番乗りは俺だああああああああああ!!!」
出入り口に近かった魔術師が走り出し、隠し通路へ突撃していく。それを歯切りに次々と冒険者達は俺の目の前から消えていき、誰一人として残ってはいなかった。
「ハァ~、世話の焼ける奴らだな~。さーて、そろそろこっちも動かせてもらおうか」
俺は指パッチンすると凭れていた壁が消え去り、1人掛けの黒いソファーが現れた。俺はソファーに座るとひとりでに椅子が反転し、黒い空間の中を進んでいくとモニター群が現れた。数々のモニターにはポップするモンスターの概要や罠の種類、階層ごとのマップや宝箱の設定画面、ダンジョンを一心不乱に駆け抜けていく冒険者達の姿等が映し出されている。
「カチカチで土臭いロビーの地べたと違って、ソファーのこの座り心地の差よ! やっぱ……ふかふかのソファーを……最高やな! さてと、アーサー達の攻略はどの位進んだかな?」
この空間こそ、アジュラスⅦ式2つ目のパッシブスキルであるコントロールルームだ。内容は言わずもがなダンジョン内に司令室を構築するパッシブスキルである。このアジュラスⅦ式の軍服の様なデザインはコケ脅しではなく、この為にある……らしい。あとアジュラスⅦ式のこの服装は厳密に言えば服ではなく流体金属であり、全身れっきとしたパワードスーツである。
閑話休題。
「イザナミ、アーサー達を中央の巨大モニターに映してくれ」
「わかったのじゃ」
数あるモニターの中で最もでかいモニターにアーサー達の姿が映し出される。3人共かなりグロッキーになっている様に見えた。
「あの目だ。皆あの死んだ魚の様な目になるんだよなぁ。何故だ? もしや……何かしらの精神汚染を受けているのか? いや皆全耐性の装備を確かに与えた。そんな筈はない」
俺は画面上のコールボタンを押し、アーサーに連絡を取ることにした。
「おい、お前ら一体どうした? かなりグロッキーになっているぞ」
「お師匠様~、お腹空きました~」
3日間の間俺はずっとダンジョンに引きこもりっぱなしだった為、食い物の事を失念していた。
「ごめん、普通に忘れてた」
「ふぇええぇ……」
「今の声はエルだな。ダンジョン攻略は中断して今すぐ入り口に戻ってこい」
「お兄様……戻っても……食事する方法と場所が……ありません」
「何言ってんだエスカ? 俺がこれから飯作ってやるんだよ! とっとと戻ってこい! 好きなもんたらふく喰わせてやるよ」
「「「え? えええええええええええ!?」」」
「えっ、なにその反応は」
アーサー達の驚愕の声が俺の耳に響いた。
全ては天使を使役する少年がペストマスクを被る奇妙な格好の医者のおかげとキャンプ中に喋って回った為だ。
(あの少年の功績により、この人気ぶり。いや~情報って怖いな~、戸づまりすとこ)
「――おい! あんたが天使のガキが言ってた医者なんだろ? 早く俺にもダンジョンの攻略方法を教えてくれ!」
俺は今壁に凭れる様にして座っている。今喋ったのは真正面にいる重厚な鎧に躰を包んだ大男が叫んでいる。
「落ち着け。まず、この場に盗賊は何人いる?」
俺がそう言うと何人かの人間が手を上げた。
「盗賊諸君、俺の前に来い。良いか、ダンジョンには無数のトラップや隠し部屋がそこら中にあるんだ。それを唯一見破れる存在がお前らだ。ダンジョン攻略において盗賊はキーパーソンである事を覚えておけ。時にお前らは鷹の目を使えるか?」
「鷹の目?」
周りの盗賊達がざわつき始めた。皆目を合わせては首を左右に振っている。
(マジかよ~。鷹の目使えないとか話進められないんだけど!)
「ひ、ひとりもいないのか? ほら! 罠を解除したり、目視で状態異常を判別する奴!」
「判別眼の事か? それなら盗賊なら最初に覚えるスキルだ」
「な、なんだあるんじゃないか。そう! その……判別眼を使って隠された部屋を見つけ出すんだよ!」
「そうすればあの子供の様に強い武器が手に入るのか!」
周りの連中が『おぉ!』と声を上げ喜んでいる。
「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。全ては己の運で決まるからだ。ダンジョン内には宝箱に擬態したミミックだっているんだぞ。欲張り過ぎてピンチになり、結果パーティ全滅って事も十分ありえる」
俺の言葉に嬉々とした雰囲気は一瞬で沈む。
「では、どうすれば?」
「百聞は一見にしかず。盗賊諸君? 観察眼を今この場で使ってみろ」
「この場で?」
「よし、やってみよう」
「お、俺も!」
次々と盗賊達の目が緑色に光る中、突然大声が響き渡る。
「入り口近くに階段が出来ているぞ!?」
「何!? それは本当か!?」
周りの人間がてんやわんやの大騒ぎを始めた。このダンジョンのロビーは決して広くない為、1人か2人動くとそれに釣られて周りも動かざるを得なくなるのだ。
「落ち着け! 止まれ!」
俺が叫ぶと一瞬で静かになった。
「ここはローグタイプのダンジョンだ。1日に一度入ると必ず構造が変わる。その階段は俺が見つけて放置しておいたものだ。良いか? 耳の穴かっぽじってよーく聞け? ダンジョンの醍醐味は敵を倒す事だけではない。隠された通路や財宝を見つけて己を強化する事こそ、ダンジョンの醍醐味! それがローグだ! 覚えておけ! わかったか!?」
「「「「はい! 先生!!!」」」」
「誰が先生だ! 長くなったが、最後に言っておく。30階毎に美味しい仕掛けを施しておいた。もしかしたらあの天使を使役する少年の様な存在にお前等もなれるやも知れんぞ?
それと罠やモンスターに襲われて死んでも、全てのアイテムと経験値を犠牲にしてロビーに強制送還される様にダンジョン全体を改造しておいた。幾らでも死ねるから安心して潜るがいい。何をボケッとしてんだ? 隠し通路見つけたなら潜って潜って潜りまくれ!」
――一瞬の静寂がこの場を支配したその時――。
「い、一番乗りは俺だああああああああああ!!!」
出入り口に近かった魔術師が走り出し、隠し通路へ突撃していく。それを歯切りに次々と冒険者達は俺の目の前から消えていき、誰一人として残ってはいなかった。
「ハァ~、世話の焼ける奴らだな~。さーて、そろそろこっちも動かせてもらおうか」
俺は指パッチンすると凭れていた壁が消え去り、1人掛けの黒いソファーが現れた。俺はソファーに座るとひとりでに椅子が反転し、黒い空間の中を進んでいくとモニター群が現れた。数々のモニターにはポップするモンスターの概要や罠の種類、階層ごとのマップや宝箱の設定画面、ダンジョンを一心不乱に駆け抜けていく冒険者達の姿等が映し出されている。
「カチカチで土臭いロビーの地べたと違って、ソファーのこの座り心地の差よ! やっぱ……ふかふかのソファーを……最高やな! さてと、アーサー達の攻略はどの位進んだかな?」
この空間こそ、アジュラスⅦ式2つ目のパッシブスキルであるコントロールルームだ。内容は言わずもがなダンジョン内に司令室を構築するパッシブスキルである。このアジュラスⅦ式の軍服の様なデザインはコケ脅しではなく、この為にある……らしい。あとアジュラスⅦ式のこの服装は厳密に言えば服ではなく流体金属であり、全身れっきとしたパワードスーツである。
閑話休題。
「イザナミ、アーサー達を中央の巨大モニターに映してくれ」
「わかったのじゃ」
数あるモニターの中で最もでかいモニターにアーサー達の姿が映し出される。3人共かなりグロッキーになっている様に見えた。
「あの目だ。皆あの死んだ魚の様な目になるんだよなぁ。何故だ? もしや……何かしらの精神汚染を受けているのか? いや皆全耐性の装備を確かに与えた。そんな筈はない」
俺は画面上のコールボタンを押し、アーサーに連絡を取ることにした。
「おい、お前ら一体どうした? かなりグロッキーになっているぞ」
「お師匠様~、お腹空きました~」
3日間の間俺はずっとダンジョンに引きこもりっぱなしだった為、食い物の事を失念していた。
「ごめん、普通に忘れてた」
「ふぇええぇ……」
「今の声はエルだな。ダンジョン攻略は中断して今すぐ入り口に戻ってこい」
「お兄様……戻っても……食事する方法と場所が……ありません」
「何言ってんだエスカ? 俺がこれから飯作ってやるんだよ! とっとと戻ってこい! 好きなもんたらふく喰わせてやるよ」
「「「え? えええええええええええ!?」」」
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