アーマード勇者育成記 産業革命遺産チート! 世界観ガン無視完全無敵の俺が無双する件 剣と魔法?よろしいならばこちらは強化外骨格だ。

からくり8

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第82話 俺、少年にダンジョンとは何ぞやを教える

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 俺はダンジョン内のロビーを歩き、一角に小さめの赤い絨毯を敷き、壁にもたれる様に腰を落とす。インベントリから無作為に選んだ武器、防具を並べる。周りを観察すると、同じく壁を背にし武器や防具を並べている冒険者の姿が見受けられた。

「1人でも来てくれれば良いや。さて、どの位来るかなー!」

 ――それから30分経過したが、誰1人俺の元へ来る事はなかった。いや、一度は足を止めてくれるのだ、しかし俺の顔を見るやいなや客は化物を見るかの如く表情をし、皆一目散に逃げていくのだ。

「なんで!? 何が悪いの!? 顔か!? このペストマスクがいかんのか!? 怖くて近寄れないとか!? だとしたら詰みなんだけど!?」
「まぁまぁ、お前様落ち着くのじゃ。外せば良かろう?」
「これ外すとまたお前居なくなると思うぞ?」
「えっ!? 絶対に外してはならんぞ! もうあの真っ暗な所に帰るのはごめんなのじゃ!」

 イザナミがあたふたと狼狽え始めた。どうやら相当嫌なようだ。

「お前こそ落ち着けって! 大丈夫だ、そもそもこいつを外してしまったら、お前は元よりパッシブスキルの殆どが使えなくなるだろう? それは俺が困るんだよ。だから絶対外さないよ」
「ほんとう?」
「ああ、本当だよ」
「イザナミ、頑張るのじゃ!」

 目に涙を貯めながらイザナミは手をグーにして突き上げて気合を入れている。

「うんうん、一緒にやってこうな」
「あの~、一体誰と話してるんです?」

 俺は目を瞑って頷いていた為、目の前に来た人物に気が付かなかった。目の前には黒いローブを着て眼鏡を掛けた少年が立っていた。

「お、いらっしゃい! 君はテントで会った少年! 何か気になる物でも?」
「い、いえ、やっぱり良いです」

 踵を返し、去ろうとした少年のローブを手で掴み、こちらへ無理やり引き込む。

「ローブが破ける! やめてください! 何するんですか!」
「逃げないで仲良くしようよ~? お隣さん同士じゃんか~。ちょっとお話しとかしたいし~? ね~?」
「わかりました! わかりましたから離してください!」

 俺は少年のローブから手を離す。

「じゃ、幾つか質問するから応えてくれな! ちゃんと応えてくれたら俺のバザーの売りもん全部格安で売ってやるよ」
「え、本当にですか!? この杖やその本も!?」
「あ~、やっぱ魔術師だからその辺気になっちゃう? えっと杖は【コルトネスの心音しんね】本は【魔導書グリモア・オルタナティブ】だよ。杖の方はね、ひと振りで状態異常回復と体力の回復同時に出来るって優れもんだよ。魔導書の方は読むと幾つかの魔法を瞬時に覚えられるし、装備した状態で敵を攻撃すると敵へのダメージが1.5倍になるパッシブスキルが付いてるって感じかな。どれもユニーク位はあるんじゃないかな」
「凄い! ぜ、是非買わせて下さい」
「良いよ。じゃ、1つ目の質問。君達冒険者にとってダンジョンの正しい・・・姿って何?」
「はい? 正しい姿? ダンジョンはただひたすら出現するモンスターを倒し続け経験を積むのが――」
「ハイ、違います。ダンジョンの真の姿、それはな?」
「そ、それは?」
「ハックアンドスラッシュだ」

 俺の言葉に少年は思いっきり首を傾げた。

「なんですかそれは? 聞いたこともありません」
「だろうな。良いか? 少年の言っている事もあながち間違いでない。それもダンジョンの姿の一部だからだ。だが、真の姿ではない。ダンジョンの真の姿、それは隠された武器や防具を見つけて装備し、己を強くしていく。それがハックアンドスラッシュ! それがダンジョンだ!」
「ダンジョンで武器や防具を見つける? そんなの有り得ません! ダンジョンで出てくる宝箱は木箱みたいな形で、入っているのはポーションとかエーテルとかの回復薬ですよ」

 少年はキャンキャンとわめきながら、俺に突っかかってきた。

「それはレアリティが低いからだ。少年はレアリティをどの程度知ってる?」
「レアリティですか? ノーマル、コモン、アンコモン、レア、ユニーク、レジェンダリーの6つでしょう? その位、誰でも知ってますよ。でも、ダンジョンに幾ら潜ったってアンコモン以上の装備や武器なんて出てきやしませんよ」
「い~やあるね。君が知らんだけだ。あとレアリティはもうひとつある。まぁ、これは教えたところで99%手に入らないから言わないけどね」

 顔をと耳を真っ赤にさせて少年は憤っている。

「じゃあ! じゃあ、今すぐ貴方が言うハックアンドスラッシュっていうのを体験させて下さい! 出来るからいってるんでしょ!」
「勿論だとも、後ろ見てみ?」

 少年は後ろを振り向き、すぐに前に向き直った。

「何にもないじゃないか!」
「本当か? よーく眼ん玉見開いてみ? 明らかにおかしい所があるだろう? 何なら壁に触ってみろ」
「壁に触る?」

 少年が壁に触ると壁の一部が波打つように波紋が広がり、手が吸い込まれていく。

「か、壁に手が吸い込まれていく!」
「わ~、おめでとう~。見事に隠し部屋を見つけたね~」
「隠し部屋!? 僕はどうなっちゃうんですかー!?」

 俺は立ち上がり、そのまま少年の背中を押して一緒に壁を抜ける。そこは真っ白な空間。奥には金で装飾された赤い宝箱がぽつんと1つだけ設置されている。

「あの宝箱は……」
「ありゃレジェンダリー級の装備が入った宝箱だな。よかったね」
「――レ、レジェンダリーの装備? 本当に? 僕が貰って良いんですか?」
「最初に隠し部屋に入ったの君じゃん。宝箱の所有権は最初に部屋に入ったパーティのものだよ」

 少年は生唾を飲み込むとゆっくり宝箱に近づいていき、震える手で宝箱を開けた。
 少年が手にしたのは白い杖だった。先端には卵の様な球体が付いておりその上部には天使の輪っかが付いているように見える。

「……杖、杖です! 宝箱の中は杖が入ってました!」
「そいつは【導きの審判】っていうレジェンダリー級の杖だね~。大当たりだよ。そいつには天使の力が封じ込められててノーコストでラファエルを使役する事ができるよ」
「天使を使役!? 僕がですか!? どの位強いんでしょうか!?」
「そうだね。最上位の天使の1体だからゴブリンなんて姿見ただけで消し炭になるんじゃない? もう一人めちゃくちゃ強い仲間が出来たと思えば良いんじゃないかな? ラファエルだから戦闘力は据え置きだし、回復に特化した天使だった筈だよ。さ、もう戻ろうか、これ以上ここにいても意味ないし」

 俺は少年を連れてダンジョンロビーへと戻る。

「あの、貴方はお医者様ではないのですか?」
「医者? あぁ~、その通り! よくぞ聞いてくれた! 俺はダンジョン専門の医者なんだよ!」
「ダンジョン専門のお医者様!?」
「そう! 周りの人達を見てみろ。皆死んだ魚みたいな表情をしてるだろう? これはダンジョンの病気が君達に知らず知らず感染ったからだよ! ダンジョンの病気が君の認識を鈍らせていたのだ! それを俺が治療したから例の隠し部屋を発見する事が出来るようになったんだ!」
「な、なんだってー!」
「良いか少年? 忘れるなよ? ハックアンドスラッシュだぞ?」
「はい、お医者様! 今までありがとうございました! この事を仲間に教えたいのですが良いですか?」
「勿論だ、言いふらして結構! その方が治療が早まると言うもの!」

 俺がそう言うと少年は杖を抱えながら外へ向かって走り出した。

「お医者様ありがとうございました! 今日あった事は一生忘れません!」
「あ、少年! 俺のバザーは? ――まぁ、良いか」

 実は少年が宝箱を開けた瞬間、俺は中身をすり替えていた。少年が手にした杖こそ幻の7つ目のレアリティのアイテムである。名をマッドネスと言い、どれもバランスブレイカー並の能力を秘めている。俺が渡した導きの審判はマッドネス級装備の中で一番ヘボい装備なのだ。

「もっと客来ないかなー!」

 なお、この後3時間程粘ったが、誰1人として話を聞いてくれる人はいなかった。
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