アーマード勇者育成記 産業革命遺産チート! 世界観ガン無視完全無敵の俺が無双する件 剣と魔法?よろしいならばこちらは強化外骨格だ。

からくり8

文字の大きさ
上 下
78 / 151

第78話 俺、王女様にお別れの挨拶をする

しおりを挟む
「さぁて、王様達への挨拶も済ませた。後はあいつ等が何処に居るかだが」

 俺がそう言うと画面下部のミニマップに青い斑点が3つ表示された。

「どうやらアーサー様達は王女の部屋に居るようです」
「王女の自室ね。了解」

 謁見の間を退室した俺は真っ直ぐ王女の部屋へと向かう。無駄に長い廊下や階段を幾つも昇り降りして王女の部屋の前にたどり着いた。
 俺はノックしてから反応を待つ。

「誰です?」
「ゲインです。失礼します」

 俺は王女の返答を待たず、扉を開け部屋の中へ入っていく。
 王女の部屋には王女、アーサー、エル、エスカの他に見覚えのあるメイドがいた。どピンクの髪に前髪が青いメッシュが派手な、俺に退任の儀の場所を教えてくれたあのメイドだ。部屋の隅に陣取り、直立不動で王女を見据えている。

 王女は俺と目が合うと持っていたティーカップを机に置き、早歩きで近づいてきた。

「お父様とお母様を救って頂き感謝の言葉もございません。何から何まで貴方様のおかげです! 本当にありがとうございます!」

 王女は目に涙を溜めながら俺の手を両手で包み込みように握っている。

「いや、良いんすよ。これも従者の務めと言いますか、それよりもちゃんと首飾り付けてくれていますか?」
「首飾りですか? アンドリューから渡された物があります。彼はいつも誕生日の日に必ずプレゼントを私にくれるんです。えっと、ああ! あそこに――」

 王女の指さす方を見ると小さな本棚があり、その上に立てかけるように長細い箱が置いてあった。

「あのネックレスは機甲騎士様が? 私わたくしてっきりアンドリューがくれたのかと思いましたが」
「俺はアドバイスしただけですよ。そのネックレスは【慈愛の蝶】というネックレスでしてね? 大変面白い効果が幾つも宿ってるんです。ずっと身につけているときっといい事がありますよ」
「本当ですか? では、早速つけさせて頂きます」

 王女は本棚へ近付き箱からネックレスを取り出す。

「王女様、私が」
「ありがとう、エスカ」

 エスカが王女からネックレスを受け取り、王女の後ろへと周り込むとネックレスを首に巻いた。

「エスカ、どうですか?」
「大変お似合いです。王女様」
「ふふふ、ありがとう」

 エスカと王女は向かい合いニッコリ微笑んでいる。

「ちょっといいすかね? 仲睦まじいとこ申し訳ないんすけど、実は今日中に王都を出ようかと思いまして」
「え? 1週間滞在するんじゃないんですか?」

 アーサーが首を傾げながら俺の方を見ていた。

「そのつもりだったんだが、ちょっと予定を変更せざるを得ない状況になってしまってな。だから王女様の自室に来たのは別れの挨拶の為だ」
「そうだったのですか。貴方様の事は決して忘れません。また近くを通った時は必ず王都に寄ってくださいね。約束ですよ?」
「ええ、勿論です。俺の妹を大切にして頂きありがとうございました」

 俺は王女様に向かい深々と礼をする。


「エスカ、今まで本当にご苦労様でした。これからは一人の女の子として生きてください」
「王女様……エスカ、行って参ります!」
「僕も勇者として頑張ります!」
「あり……がとうござい……ました」

 俺達は王女の部屋を出ると城の出入り口へと歩き出す。

「女の子として生きろ……か」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ、なんでも!」
「ほーん。うっし、王都を出たら北西へ向かうぞー!」
「北西には……うわぁ、すっごいでかい塔みたいなものがあります!」
「――ほう、塔の形をしているのか。それはそれは」

 俺がこの後どうしようか考えにふけっているとエルが俺のマフラーを引っ張るっているのに気が付いた。

「話聞くからマフラー引っ張るのやめて。取れたら俺泣いちゃうから」
「王女様が……付けてたネックレスの効……果教えて。あれ聖典で見た記憶……ある」
「【慈愛の蝶】の効果か? 1日毎に防弾、防毒、防刃のパッシブスキルと死亡判定予防の効果が付いたアクセサリーだ。あと特殊条件下で面白いパッシブスキルが幾つも発動する」
「な……んで、そんな代……物を?」
「なんとなく」
「な……んとな……く?」
「ああ、こまけぇこたぁ気にすんな。あった方がいいと思って、あげただけ。ただ、それだけだ」

 ハガセンにおいて、死亡というステータスは最も厄介なバッドステータスである。なってしまった場合の回避方法は30秒以内に超希少アイテムであるハイエリクサーを誰かに使用させるか、マッドネス級装備であるゴッドオブスタッフを持つ魔術師を連れてくるかの2つのみ。手遅れの場合はキャラクターのロストかリアルマネーを消費しての復活どちらかの選択を迫られる。
 しかし、死亡を予防・・する事は可能である。俺が渡した【慈愛の蝶】というアクセサリーはこの予防において最高の代物である。

 閑話休題。

「お、出入り口に到着したな」

 俺達はそのまま城を出て門を潜る。

「門番君、世話になったな。それじゃ」
「立たれるのですね。道中お気を付けて!」

 門番君の声を背中で聞きながら俺達は北の門へと歩を進める。そのまま暫く歩き続け、北の門へ到着すると金の甲冑を着た兵士が仁王立ちしていた。その横にはメイドが立っている。

「ネア!? こんな所で一体何を!?」
「エスカ様水臭いじゃないですか! 私に一言もなく出て行かれるなんて!」
「すまん。私もそう思ったが、お前の顔を見てしまうと辛くなってしまうのではないかと思ってな」

 エスカがネアをハグしているのが目に入る。

「行かれるのであるな。武運を祈っているのである」
「おう、お前にも世話になったなアンドリュー。王女様の事諦めんなよ」
「な、なな何の事だかさささっぱりわわからなないであるなな」
「動揺し過ぎだろ……。まぁ、達者でな」

 俺が手を差し出すと、カチャカチャと兜を脱ぎ小脇に抱え、無駄にイケメンな顔を晒すとガッと力強く握手してきた。

「このイケメン金ピカゴリラめ」
「イケメン金ピカゴリラ!?」
「じゃあな。っとそうだ、餞別代わりにお前にもやる。王女とおそろいのネックレス」

 俺はインベントリから【慈愛の蝶】を取り出しアンドリューへ手渡す。

「おお! これはかたじけない! 一生の宝にするのである」
「良いから首に掛けとけ。その方がずっといい」
「うむ! 承知したのである。ガハハハハ!!」
「よし! いざ、ゆかん! 前人未到のグランドデスピアーへ! イクゾー!」
「「「「「オー!」」」」」

 俺達は門を出て颯爽と歩き出した。


 ◆◆◆◆◆◆

 ゲインが王都を出たその晩、王女サンティーヌは夜空に向かって祈りを捧げていた。

「神よ、どうか機甲騎士様達の旅路に安寧があらん事を」

 サンティーヌが空に向かい、そう祈っていると目の前に小さな羽根を生やした白い球体が姿を現した。

「こ、ここは!?」
「あぁ、神様! 私めの願いを聞き届けてくださるのですね!」
「また君か壊れるなぁ。いいかい? 王女様? 前にも言ったけど僕は色々と忙しい身なんだよ。君のユニークスキル神への謁見だっけ? 全く困ったもんだよ。僕の力すら及ばないんだから」
「申し訳ございません! 神様が仰った通り私の目の前に黒き騎士が現れたのです!そしてこの王都の危機を2度も救い、お父様とお母様の昏睡まで治療してくださったのです! どうしてもご報告したくて!」
「あ~! 彼ね! 彼、面白い人間だよねー! 彼の行動は突拍子なさ過ぎて、この神である僕にも予測不能なんだよね! 面白いのなんのって! いやぁ、愉快愉快! あ、でもあれはちょっといけなかったね。あの蜘蛛の声拡張する奴ね。都合が悪かったから記憶を改竄させてもらったよ。奴に勘付かれる可能性あるかもだし」
「記憶を改竄!? 私もですか!? 奴とは!?」
「君には関係ないさ。う~ん、ちょっとお喋りが過ぎたな。この会話が終わったら僕についての記憶は消させて貰うからね」
「……」

 王女が一方的に話を進める神を名乗る球体の話を聞いているとドアのノックが部屋に響いた。

「こ、こんな夜更けに誰でしょう?」
「さぁ? 開けてみたら?」

 王女は立ち上がりドアを開けると、そこにはピンクの髪に青いメッシュの前髪が特徴のメイドが立っていた。このメイドは最近配属された新人であり、サンティーヌの身の回りの世話を担当している。

「王女様? どなたかいらっしゃるのですか?」
「えぇ、今そこに――? いえ、ずっと私は1人だった筈、おかしいですわね。どうして勘違いしたのかしら。ところで用件は?」
「就寝前のティータイムの時間なので、ティーセットをお持ち致しました」
「あら、もうそんな時間に? 入ってください。貴方も良かったら一緒にどうです?」
「い、いえ恐れ多い」
「そう? 残念です」

 メイドが王女の部屋へ入ると蝋燭を机に置きポットを傾けカップにお茶を注ぐ。

「あら、いつもは茶葉を別々にしているのに今日は違うんですね」
「え、えぇ。今日は特別・・なんです。どうぞ」
「ありがとう」

 メイドからカップを受け取り、王女はお茶を啜すすすすった。

「いつもと違う味ですがこれも中々美味しいです。どうしました?」

 メイドはわなわなと震え、王女を見据えている。

「そんな……そんな馬鹿な!? あのカップには致死量の毒が塗ってあった筈なのに!? な、なぜ、何故死なない!?」
「毒!? 貴女は一体何者!?」
「クソ!」

 王女の声を無視して窓から身を投げ出し、メイドが暗闇の中へと消えていく。

「誰かー!」

 王女の悲鳴が城中に響き渡った。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...