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第76話 俺、露店で立ち話をする
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俺は1人薄暗い道を往く、皆と別れ適当にぶらついているうちに裏路地の様な所に来てしまったようだ。
「なんか変な場所に来ちまったな。ん?」
見ると狭い裏路地の一角に露店らしき建物が目に入った。バナナの様なフルーツが適当に並べられている。皮の色が真っ青なのでバナナっぽい何かかもしれない。
「こんな場所に何故露店が……」
「お、客か? 一房100ローゼスだよ。試しに1本どうだい?」
頭にターバンを巻いた髭面の主人が俺に千切って1本渡してきた。近くで見ると形はバナナだが柑橘系の匂いを感じる事が出来た。
怪しい雰囲気抜群の主人からバナナらしき物体Xを受け取り皮を向いてみると、予想通り中身はオレンジの様な物だった。しかし、形はやはりバナナである。
「な、なかなか個性的な果物……だな真っ青な皮に果肉はオレンジのバナナとは」
俺は兜を脱ぎ、煩い排出音をシカトし小脇に抱え、そのまま口へと運ぶ。バナナの感触を中途半端に残したオレンジだった。決して不味くはないが凄まじい違和感が俺を襲う。
「どうだい? 美味いだろ?」
「……正直、俺は普通のオレンジとバナナの方が好きだ」
「ほう、そうかい」
露店の主人の顔が一気に険しくなった。どうやら不機嫌にさせてしまった様だ。謝るか迷っていると主人は徐に葉巻を吸い出した。
「フゥーっ。で? 何が欲しいんで? 黒い騎士の旦那」
「は? 欲しいって?」
「情報だよ! 情報! 情報欲しいからこの俺、売れ残りのヤスィーの元へ来たんだろ? 今秘密の言葉を言ったじゃねーか?」
「あ、そういう、ふ〜ん」
「で? どうなんだ? 何もないならとっとと消えな! 商売邪魔だ! 今日こそオレンナを全部売りさばいてみせるんだからよぉ!」
「情報ねぇ、ある! 王都で見た変な白ローブの連中について教えてくれ」
「白ローブ? あぁ、聖国のクソ共の事か。あいつ等、いざこざの時に約束した不可侵条約を無視しやがって! 未だにこの国に来ちゃ、聖女の奇跡がどうだ聖女の力がああだと言っては住人を連れていきやがる」
「住人を連れてくって何処に?」
「そりゃあ、自分の国に決まってんだろ。あの国は子作りが禁止されてるらしく世継ぎが作れねぇのさ。だから労働力が欲しくなったら他国から人間をパクって来るほかねぇんだと。おまけに気候が狂ってて年中雪降ってるらしくてな生産性も皆無、国としては詰んでるらしい」
「何だそれ!? 無茶苦茶も良いとこじゃねぇか!? この国から追い出せよ!」
「やっててこれだ。追い出しても後から後からネズミみたいにどんどん来やがる。20年位前にこちらとあちらで大きないざこざがあって、それ以来勝手に目の敵にされてんのさ。この国はよ」
「圧倒的にこっちが強いんだから叩き潰せば良いだろうが!?」
「そうも行かねぇのさ、聖女の存在がある限り下手に手は出せない。噂でしか知らねぇがありゃ相当な化物らしい。何でも聖女様の言う事を聞けば必ず良い事が起こるんだと。攻めてこないって事は聖女が関係してるんだろ。そしてこの国の状況も良くないだろう。王様と王妃様が謎の昏睡状態、いるのは戦争のせの字知らないような王女様が1人いるだけ。上がる士気も上がらねぇ」
「あ、その事なら多分もう大丈夫だぞ」
「あ? 旦那、悪い冗談はよせよ」
「まぁ、そのうちわかるって。興味深い話聞けてよかったわ。その売れ残ってるオレンナ全部買ってやるよ。言い値で」
「は、はぁ!? 言い値!? 何故急に!?」
「いや、だって俺もあいつ等気持ち悪くてなんか気に入らねぇんだもん。仲間がいて嬉しくなった。それだけ」
「ほんとに良いのか?」
「おう。良いぞ」
「じゃ、じゃあ14万、いや15万ローゼスで……」
「え? そんなはした金でいいの? 500万ローゼス位来るかと思ったのに」
「500万……ちょ、ちょっと待ってくだせぇ旦那! そんなに貰っても処理に困りますよ!」
「あ、そっかぁ。じゃ、これもやるわ」
俺はインベントリからピンクのウエストポーチを取り出しファスナーを開ける。中は小さな黒い玉が浮いているのが見える。その黒い玉に手を突っ込み、適当に金貨を流し込んだ。これはアーサーが持っている、何でも入る君リュックVerの劣化版である何でも入る君ウエストポーチVerである。
リュックVerを作る過程で出来た副産物であり、腐るほど所持している為、1個くらい無くなったところで問題はないのだ。
「ほらよ。このウエストポーチの中に500万ローゼス位突っ込んどいた」
「こいつは一体?」
「こまけぇこたぁ気にすんな」
「ありがとうございます! 旦那! そうだ! とっておきの情報を1つ! 最近来る聖国の奴らは男ばっか連れてくみたいなんでさ! 近々マジでこの国と戦争おっ始めるんじゃないかってのが俺たち情報屋の見立てでさ!」
「戦争怖いなぁ、戸づまりすとこ」
「え?」
「冗談だよ。ま、なんだ、有益な情報ありがとう! 達者でな! 売れ残りのヤスィー!」
「こちらこそって! もう売れ残りじゃありやせんぜ旦那! あ、そのオレンナですが千切ったら30秒以内に食べてくだせぇ! それ以上放置するとこの世のものとは思えないくらい酸っぱくなって食べれなくなるんで!」
「……売れ残る理由がわかった気がするわ」
俺はオレンナをインベントリに全部突っ込み、情報屋売れ残りのヤスィーに手を振られるのを尻目に見ながら、大通りを目指し歩を進めた。
「なんか変な場所に来ちまったな。ん?」
見ると狭い裏路地の一角に露店らしき建物が目に入った。バナナの様なフルーツが適当に並べられている。皮の色が真っ青なのでバナナっぽい何かかもしれない。
「こんな場所に何故露店が……」
「お、客か? 一房100ローゼスだよ。試しに1本どうだい?」
頭にターバンを巻いた髭面の主人が俺に千切って1本渡してきた。近くで見ると形はバナナだが柑橘系の匂いを感じる事が出来た。
怪しい雰囲気抜群の主人からバナナらしき物体Xを受け取り皮を向いてみると、予想通り中身はオレンジの様な物だった。しかし、形はやはりバナナである。
「な、なかなか個性的な果物……だな真っ青な皮に果肉はオレンジのバナナとは」
俺は兜を脱ぎ、煩い排出音をシカトし小脇に抱え、そのまま口へと運ぶ。バナナの感触を中途半端に残したオレンジだった。決して不味くはないが凄まじい違和感が俺を襲う。
「どうだい? 美味いだろ?」
「……正直、俺は普通のオレンジとバナナの方が好きだ」
「ほう、そうかい」
露店の主人の顔が一気に険しくなった。どうやら不機嫌にさせてしまった様だ。謝るか迷っていると主人は徐に葉巻を吸い出した。
「フゥーっ。で? 何が欲しいんで? 黒い騎士の旦那」
「は? 欲しいって?」
「情報だよ! 情報! 情報欲しいからこの俺、売れ残りのヤスィーの元へ来たんだろ? 今秘密の言葉を言ったじゃねーか?」
「あ、そういう、ふ〜ん」
「で? どうなんだ? 何もないならとっとと消えな! 商売邪魔だ! 今日こそオレンナを全部売りさばいてみせるんだからよぉ!」
「情報ねぇ、ある! 王都で見た変な白ローブの連中について教えてくれ」
「白ローブ? あぁ、聖国のクソ共の事か。あいつ等、いざこざの時に約束した不可侵条約を無視しやがって! 未だにこの国に来ちゃ、聖女の奇跡がどうだ聖女の力がああだと言っては住人を連れていきやがる」
「住人を連れてくって何処に?」
「そりゃあ、自分の国に決まってんだろ。あの国は子作りが禁止されてるらしく世継ぎが作れねぇのさ。だから労働力が欲しくなったら他国から人間をパクって来るほかねぇんだと。おまけに気候が狂ってて年中雪降ってるらしくてな生産性も皆無、国としては詰んでるらしい」
「何だそれ!? 無茶苦茶も良いとこじゃねぇか!? この国から追い出せよ!」
「やっててこれだ。追い出しても後から後からネズミみたいにどんどん来やがる。20年位前にこちらとあちらで大きないざこざがあって、それ以来勝手に目の敵にされてんのさ。この国はよ」
「圧倒的にこっちが強いんだから叩き潰せば良いだろうが!?」
「そうも行かねぇのさ、聖女の存在がある限り下手に手は出せない。噂でしか知らねぇがありゃ相当な化物らしい。何でも聖女様の言う事を聞けば必ず良い事が起こるんだと。攻めてこないって事は聖女が関係してるんだろ。そしてこの国の状況も良くないだろう。王様と王妃様が謎の昏睡状態、いるのは戦争のせの字知らないような王女様が1人いるだけ。上がる士気も上がらねぇ」
「あ、その事なら多分もう大丈夫だぞ」
「あ? 旦那、悪い冗談はよせよ」
「まぁ、そのうちわかるって。興味深い話聞けてよかったわ。その売れ残ってるオレンナ全部買ってやるよ。言い値で」
「は、はぁ!? 言い値!? 何故急に!?」
「いや、だって俺もあいつ等気持ち悪くてなんか気に入らねぇんだもん。仲間がいて嬉しくなった。それだけ」
「ほんとに良いのか?」
「おう。良いぞ」
「じゃ、じゃあ14万、いや15万ローゼスで……」
「え? そんなはした金でいいの? 500万ローゼス位来るかと思ったのに」
「500万……ちょ、ちょっと待ってくだせぇ旦那! そんなに貰っても処理に困りますよ!」
「あ、そっかぁ。じゃ、これもやるわ」
俺はインベントリからピンクのウエストポーチを取り出しファスナーを開ける。中は小さな黒い玉が浮いているのが見える。その黒い玉に手を突っ込み、適当に金貨を流し込んだ。これはアーサーが持っている、何でも入る君リュックVerの劣化版である何でも入る君ウエストポーチVerである。
リュックVerを作る過程で出来た副産物であり、腐るほど所持している為、1個くらい無くなったところで問題はないのだ。
「ほらよ。このウエストポーチの中に500万ローゼス位突っ込んどいた」
「こいつは一体?」
「こまけぇこたぁ気にすんな」
「ありがとうございます! 旦那! そうだ! とっておきの情報を1つ! 最近来る聖国の奴らは男ばっか連れてくみたいなんでさ! 近々マジでこの国と戦争おっ始めるんじゃないかってのが俺たち情報屋の見立てでさ!」
「戦争怖いなぁ、戸づまりすとこ」
「え?」
「冗談だよ。ま、なんだ、有益な情報ありがとう! 達者でな! 売れ残りのヤスィー!」
「こちらこそって! もう売れ残りじゃありやせんぜ旦那! あ、そのオレンナですが千切ったら30秒以内に食べてくだせぇ! それ以上放置するとこの世のものとは思えないくらい酸っぱくなって食べれなくなるんで!」
「……売れ残る理由がわかった気がするわ」
俺はオレンナをインベントリに全部突っ込み、情報屋売れ残りのヤスィーに手を振られるのを尻目に見ながら、大通りを目指し歩を進めた。
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