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第67話 俺、ギヌルベルに魔術師会へ招待される
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二人が帰った後、俺は一人酒場に残り酒を煽っていた。
「ふぅ……まずは装備の強化だな。あと全員のレベリングをなんとかしなきゃならん」
木で出来たジョッキにはビールの様な液体が入っており、俺はぐいっと飲み込み机に叩きつけるように置く。
「だめだ。酔いたい時に酔えないのがコレほど辛いものだとは思わなかった。……帰るか」
俺は手を上げてウエイトレスのお姉さんを呼び止める。
「お姉さん! お勘定!」
「ハーイ! ビール1杯ですね! 400ローゼスになります!」
俺は机に数枚の金貨を置くと席を立ち酒場を出た。
外は既に暗くなっていた。まばらに設置された外灯代わりの松明が闇を照らしているのが見える。
「外着ッ!」
俺はヤルダバオトⅧ式を着装し暗視モードを起動させる。
真っ暗だった視界が薄い赤色で照らされ、周りが視認出来るようになった。
「よし、人気のない所へ――」
「もし? そこの黒い甲冑の人」
俺は不意に呼び止められ、振り向くとローブを着込んだ老婆が立っていた。
「ん? ああ、ギヌルベルの婆さんか。どうした?」
「おお! やはり機甲騎士様でありましたか! 丁度良い。実は折り入った話があるのです。
もし、よろしければ儂と一緒に根城へ来ていただきたいのです!
「根城? 婆さんの?」
「そうです。儂は魔術師会という魔術の深淵を覗くという集まりの会長を務めさせてもらってましてな。貴方様に是非見てもらいたいものが根城にあるのです」
ギヌルベルはくすんだ緑のローブを引きずりながら俺に近づき手をがっちり掴んで離さない。
「い、良いっすよ。暇だし」
「左様でございますか! では、今すぐ向かうとしましょう」
「は?」
突如、ギヌルベルを中心にして青色の魔法陣が出現し、俺と彼女は別の何処かへとワープした。
「ようこそ! これが儂の根城であります!」
「はえ~、すっごいおっきい」
気が付くと俺は美術館の様な場所に立っていた。
よくわからない巨大な人物画やスタッフ、ワンド、ローブなどが所狭しと並べられている。
「ここは?」
「ミュージアムですな! この地下に見てもらいたいものがあるのです! ついてきて下さい!」
ギヌルベルの婆さんに付いて行くと、所狭しと並べられた美術品の中に一つだけやけに汚らしい杖があった。
その杖をギヌルベルの婆さんは手に取り、思いっきり2回大きく振る。すると壁に魔法陣が出現し一部の美術品が掻き消えると共に鉄でできた大きな扉が姿を表した。
「どうぞ、お進み下さい」
俺は催促されたため扉を開けると地下へと続く階段が現れた。
長く狭い階段を降りていく。
狭い階段を降り続けて3分ほど経った頃、漸く地下室の様な所へたどり着いたのか、またしても大きな鉄製の扉が見えてきた。
「また、扉か」
「貴方様に見てもらいたいものはこの奥にあります」
俺は意を決してゆっくりと扉を開ける。
中はとんでもなく広く、何人もの人間が忙しそうに歩きまわっていた。
「何だ? ここは?」
「ここは言わば、研究室ですな。ここであらゆる研究や実験をしております。全ては魔術の深淵を覗かんが為。奥にあります、あれを御覧ください!」
ギヌルベルが指を指す方向を見る。そこにはサビだらけの甲冑が、両手を鎖に繋がれた状態で飾られていた。
「――あれは? もっと近くで見ても?」
「勿論でございます。何なら出しても構いませんが?」
「よろしく頼む」
ギヌルベルが指を鳴らすと何人かの人間が集まってきた。
「誰か! あの甲冑の鎖を外しとくれ」
「会長殿! まずいですよ! もし、勝手に動き出したりしたら! そ、それにこの御方は一体?」
白いローブを着たメガネの男が俺を指しながら何やら騒いでいる。
「あ、ども。勇者の従者やってます。ゲインって言います」
「は、はぁ」
「全くしょうがないね。ナズル! ナズル居るかい!」
「ハイ、ママ! 今すぐ行くよ!」
ギヌルベルが声を張り上げると何処からともなく男の声が聞こえ、ズダダダダッ!という足音が耳に入る。
「ぬぅん! ママ! お帰りなさい!」
俺の目の前に黒いローブを着たゴリラが現れた。
「何だ!? モンスターか!?」
「儂の息子ですじゃ!」
「ぬふぅ! 初見の人にはよく間違えられます! もう慣れました! ママ、どうしたんですか?」
「甲冑の鎖を解いとくれ」
ノースリーブのローブを着たゴリラ――いや、ナズルというマッチョメンな魔術師はサビだらけの甲冑の前に立つと、徐ろに鎖を思いっきり引きちぎり、壁にもたれる様な形で慎重にその場に置くと甲冑から距離を置いた。
「えぇ……、解くってそういう……」
「さぁ、よく見て下さい。見覚えありませぬか?」
「ん~」
俺はサビだらけの甲冑の前に立ち、舐めるように観察する。
「ひとつ聞きたい」
「何でしょう?」
「何故これを俺に見せたがったんだ?」
「その事でございますか。実はその甲冑誰一人外すことが出来なかったのです。機甲騎士様なら何かわかるのではないかと思いまして」
「なるほど。触っていいか? あと後ろ側も見たい」
「構いません。あ、出来れば慎重に扱って下さい」
俺は甲冑の胴辺りを潰さぬよう慎重に持ち上げ半回転させる。
背中の辺りには人間の背骨を模したかの様なデザインが施されていた。
(これは――ッ!)
俺は甲冑の後頭部辺りに手を突っ込む。そこには小さなボタンの様なものがあった。
俺がそれを押すと甲冑は一斉に外れ、床に崩れ落ちた。
「なんと! 誰も外すことが出来なんだ甲冑をこうも簡単に! 流石でございます! 一体どのようにして!? そしてこの甲冑はやはり――」
「この甲冑の名前は”汎用型外格Ⅰ式”俺のジョブであるフルメタラーの、一番初めに着装する羽目になる外格だ。何処でこいつを手に入れた?」
「おおぉお!! やはり!! やはりそうでしたか! その外格はそこにおりますナズルが武者修行を終え、帰ってきた時に背負っていたのです」
俺はナズルの方を見るとマッスルポーズをしながら白い歯を俺に向けて笑っていた。
「ハーン!! その甲冑は王都からずっと北西にあります、人呼んで難攻不落の超巨大ダンジョン【グランド・デスピアー】というダンジョンで偶然見つけたものです!」
「ほう、そんなダンジョンがあるのか? どんなダンジョンなんだ?」
「ルォ! ハイ! グランド・デスピアーは余りにも巨大かつ、他にない特殊な特徴のせいで誰も最下層まで辿りついたことがなく全貌は未だ不明なのです!」
「他にない特殊な特徴?」
「ほぉん! グランド・デスピアーは階層を進むたび、構造が独りでに変わってしまうのです! そのせいで地図が役に立たず、殆どの冒険者が途中で攻略を諦めてしまうのです! しかし武者修行には最適なダンジョンと言えます! 階層を進めば進むほどモンスターが強くなっていくのです!」
ナズルの言葉を聞いて俺はある一つのゲーム用語を思い出していた。
「ローグライクタイプのダンジョンか! そりゃ良い! レベリングに最適じゃないか!」
「「ローグライク? レベリング?」」
二人は顔を見合わせながら声を綺麗にシンクロさせながら俺の方を見ている。
「あっ……なんでもない。気にしないでくれ。色々情報くれてありがとな。そろそろお暇しようと思う。魔術の深淵を覗くんだっけ? 頑張ってな」
ギヌルベルの婆さんが目を血走らせながら俺に握手してくる。
「貴方様は正真正銘のフルメタラーであらせられるのですね!!! 厚かましいお願いなのですが他の外格をいただけないでしょうか!? お願いします!」
「流石にそれは……あっ! そうだ! 俺の汎用型外格Ⅰ式とあれを交換しよう! 俺のは、ほぼ無傷だぞ! どうだ?」
「ほ、本当でございますか!? 是非、お願いします!」
俺が手を翳すと空中に魔法陣が現れ、ねずみ色の外格が姿を表した。
それと同時に錆びついた外格の姿が霧のように消え失せる。
「おお! これが本来の姿なのですね!」
「ああ、そうだ。こいつをバラしたくなったら後頭部の内側に突起がある。それを押せばいい、あとこいつは独りでに動いたりはしない。可哀想だから鎖で繋いだりしないであげてくれ」
ギヌルベルの婆さんが深々と腰を曲げる。
「色々と本当にありがとうございました! 貴方様から頂いた数々のアイテムを解明し、必ずや魔術の向上に役立ててみせます!」
「ありがとうございました! あはーっん!!!」
(こいつは一々マッスルポーズを決めないと喋れないんだろうか?)
俺がそんなことを考えていると俺の足元に魔法陣が現れ、気が付くと大衆酒場の近くへワープしていた。
「汎用型外格Ⅰ式か。フルメタラーになってすぐこの世界に来てしまったんだろうな。ご苦労さん同志よ。ゆっくり休んでくれ」
気が付くと雨がポツポツと降り始めていた。
「ふぅ……まずは装備の強化だな。あと全員のレベリングをなんとかしなきゃならん」
木で出来たジョッキにはビールの様な液体が入っており、俺はぐいっと飲み込み机に叩きつけるように置く。
「だめだ。酔いたい時に酔えないのがコレほど辛いものだとは思わなかった。……帰るか」
俺は手を上げてウエイトレスのお姉さんを呼び止める。
「お姉さん! お勘定!」
「ハーイ! ビール1杯ですね! 400ローゼスになります!」
俺は机に数枚の金貨を置くと席を立ち酒場を出た。
外は既に暗くなっていた。まばらに設置された外灯代わりの松明が闇を照らしているのが見える。
「外着ッ!」
俺はヤルダバオトⅧ式を着装し暗視モードを起動させる。
真っ暗だった視界が薄い赤色で照らされ、周りが視認出来るようになった。
「よし、人気のない所へ――」
「もし? そこの黒い甲冑の人」
俺は不意に呼び止められ、振り向くとローブを着込んだ老婆が立っていた。
「ん? ああ、ギヌルベルの婆さんか。どうした?」
「おお! やはり機甲騎士様でありましたか! 丁度良い。実は折り入った話があるのです。
もし、よろしければ儂と一緒に根城へ来ていただきたいのです!
「根城? 婆さんの?」
「そうです。儂は魔術師会という魔術の深淵を覗くという集まりの会長を務めさせてもらってましてな。貴方様に是非見てもらいたいものが根城にあるのです」
ギヌルベルはくすんだ緑のローブを引きずりながら俺に近づき手をがっちり掴んで離さない。
「い、良いっすよ。暇だし」
「左様でございますか! では、今すぐ向かうとしましょう」
「は?」
突如、ギヌルベルを中心にして青色の魔法陣が出現し、俺と彼女は別の何処かへとワープした。
「ようこそ! これが儂の根城であります!」
「はえ~、すっごいおっきい」
気が付くと俺は美術館の様な場所に立っていた。
よくわからない巨大な人物画やスタッフ、ワンド、ローブなどが所狭しと並べられている。
「ここは?」
「ミュージアムですな! この地下に見てもらいたいものがあるのです! ついてきて下さい!」
ギヌルベルの婆さんに付いて行くと、所狭しと並べられた美術品の中に一つだけやけに汚らしい杖があった。
その杖をギヌルベルの婆さんは手に取り、思いっきり2回大きく振る。すると壁に魔法陣が出現し一部の美術品が掻き消えると共に鉄でできた大きな扉が姿を表した。
「どうぞ、お進み下さい」
俺は催促されたため扉を開けると地下へと続く階段が現れた。
長く狭い階段を降りていく。
狭い階段を降り続けて3分ほど経った頃、漸く地下室の様な所へたどり着いたのか、またしても大きな鉄製の扉が見えてきた。
「また、扉か」
「貴方様に見てもらいたいものはこの奥にあります」
俺は意を決してゆっくりと扉を開ける。
中はとんでもなく広く、何人もの人間が忙しそうに歩きまわっていた。
「何だ? ここは?」
「ここは言わば、研究室ですな。ここであらゆる研究や実験をしております。全ては魔術の深淵を覗かんが為。奥にあります、あれを御覧ください!」
ギヌルベルが指を指す方向を見る。そこにはサビだらけの甲冑が、両手を鎖に繋がれた状態で飾られていた。
「――あれは? もっと近くで見ても?」
「勿論でございます。何なら出しても構いませんが?」
「よろしく頼む」
ギヌルベルが指を鳴らすと何人かの人間が集まってきた。
「誰か! あの甲冑の鎖を外しとくれ」
「会長殿! まずいですよ! もし、勝手に動き出したりしたら! そ、それにこの御方は一体?」
白いローブを着たメガネの男が俺を指しながら何やら騒いでいる。
「あ、ども。勇者の従者やってます。ゲインって言います」
「は、はぁ」
「全くしょうがないね。ナズル! ナズル居るかい!」
「ハイ、ママ! 今すぐ行くよ!」
ギヌルベルが声を張り上げると何処からともなく男の声が聞こえ、ズダダダダッ!という足音が耳に入る。
「ぬぅん! ママ! お帰りなさい!」
俺の目の前に黒いローブを着たゴリラが現れた。
「何だ!? モンスターか!?」
「儂の息子ですじゃ!」
「ぬふぅ! 初見の人にはよく間違えられます! もう慣れました! ママ、どうしたんですか?」
「甲冑の鎖を解いとくれ」
ノースリーブのローブを着たゴリラ――いや、ナズルというマッチョメンな魔術師はサビだらけの甲冑の前に立つと、徐ろに鎖を思いっきり引きちぎり、壁にもたれる様な形で慎重にその場に置くと甲冑から距離を置いた。
「えぇ……、解くってそういう……」
「さぁ、よく見て下さい。見覚えありませぬか?」
「ん~」
俺はサビだらけの甲冑の前に立ち、舐めるように観察する。
「ひとつ聞きたい」
「何でしょう?」
「何故これを俺に見せたがったんだ?」
「その事でございますか。実はその甲冑誰一人外すことが出来なかったのです。機甲騎士様なら何かわかるのではないかと思いまして」
「なるほど。触っていいか? あと後ろ側も見たい」
「構いません。あ、出来れば慎重に扱って下さい」
俺は甲冑の胴辺りを潰さぬよう慎重に持ち上げ半回転させる。
背中の辺りには人間の背骨を模したかの様なデザインが施されていた。
(これは――ッ!)
俺は甲冑の後頭部辺りに手を突っ込む。そこには小さなボタンの様なものがあった。
俺がそれを押すと甲冑は一斉に外れ、床に崩れ落ちた。
「なんと! 誰も外すことが出来なんだ甲冑をこうも簡単に! 流石でございます! 一体どのようにして!? そしてこの甲冑はやはり――」
「この甲冑の名前は”汎用型外格Ⅰ式”俺のジョブであるフルメタラーの、一番初めに着装する羽目になる外格だ。何処でこいつを手に入れた?」
「おおぉお!! やはり!! やはりそうでしたか! その外格はそこにおりますナズルが武者修行を終え、帰ってきた時に背負っていたのです」
俺はナズルの方を見るとマッスルポーズをしながら白い歯を俺に向けて笑っていた。
「ハーン!! その甲冑は王都からずっと北西にあります、人呼んで難攻不落の超巨大ダンジョン【グランド・デスピアー】というダンジョンで偶然見つけたものです!」
「ほう、そんなダンジョンがあるのか? どんなダンジョンなんだ?」
「ルォ! ハイ! グランド・デスピアーは余りにも巨大かつ、他にない特殊な特徴のせいで誰も最下層まで辿りついたことがなく全貌は未だ不明なのです!」
「他にない特殊な特徴?」
「ほぉん! グランド・デスピアーは階層を進むたび、構造が独りでに変わってしまうのです! そのせいで地図が役に立たず、殆どの冒険者が途中で攻略を諦めてしまうのです! しかし武者修行には最適なダンジョンと言えます! 階層を進めば進むほどモンスターが強くなっていくのです!」
ナズルの言葉を聞いて俺はある一つのゲーム用語を思い出していた。
「ローグライクタイプのダンジョンか! そりゃ良い! レベリングに最適じゃないか!」
「「ローグライク? レベリング?」」
二人は顔を見合わせながら声を綺麗にシンクロさせながら俺の方を見ている。
「あっ……なんでもない。気にしないでくれ。色々情報くれてありがとな。そろそろお暇しようと思う。魔術の深淵を覗くんだっけ? 頑張ってな」
ギヌルベルの婆さんが目を血走らせながら俺に握手してくる。
「貴方様は正真正銘のフルメタラーであらせられるのですね!!! 厚かましいお願いなのですが他の外格をいただけないでしょうか!? お願いします!」
「流石にそれは……あっ! そうだ! 俺の汎用型外格Ⅰ式とあれを交換しよう! 俺のは、ほぼ無傷だぞ! どうだ?」
「ほ、本当でございますか!? 是非、お願いします!」
俺が手を翳すと空中に魔法陣が現れ、ねずみ色の外格が姿を表した。
それと同時に錆びついた外格の姿が霧のように消え失せる。
「おお! これが本来の姿なのですね!」
「ああ、そうだ。こいつをバラしたくなったら後頭部の内側に突起がある。それを押せばいい、あとこいつは独りでに動いたりはしない。可哀想だから鎖で繋いだりしないであげてくれ」
ギヌルベルの婆さんが深々と腰を曲げる。
「色々と本当にありがとうございました! 貴方様から頂いた数々のアイテムを解明し、必ずや魔術の向上に役立ててみせます!」
「ありがとうございました! あはーっん!!!」
(こいつは一々マッスルポーズを決めないと喋れないんだろうか?)
俺がそんなことを考えていると俺の足元に魔法陣が現れ、気が付くと大衆酒場の近くへワープしていた。
「汎用型外格Ⅰ式か。フルメタラーになってすぐこの世界に来てしまったんだろうな。ご苦労さん同志よ。ゆっくり休んでくれ」
気が付くと雨がポツポツと降り始めていた。
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