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第61話 反逆
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ゲインがリズロと会話を楽しんでいた頃、城の中を一人の犬獣人が巡回していた。
彼の名はファース。王立騎士団のメンバーの一人だ。
彼の嗅覚と聴覚は人間の500倍程あり、この生まれ持っての能力を使い、城内部の警備を自主的に行うのが彼の日課である。
「今日も城内はなんともないようでよかった。そろそろ皆帰ってくるだろう。ん? この匂いと色は……」
ファースには物体が持つ匂いそのものを視認し、色による状態判別能力が備わっている。
この能力は彼の生まれ持ったユニークスキルなのだが、自身は全くそのことに気付いていない。
大した戦闘技能を持たないファースが王立騎士団に入団出来た最大の理由は、この判別能力を使い敵の状態や攻撃のタイミングなどを見切りながら戦ってきたからにほかならない。
「クンクン……間違いない。この匂いはロンメルさんのもの。しかし……この赤い色は強い警戒をはらんだ色だ。一体?
彼は匂いを嗅ぎながら歩き、謁見の間直ぐ近くまでたどり着く。
ロンメルの匂いは謁見の間内部まで続いていた。不審に思った彼は自らの聴覚を拡張する。
神経を集中させるとロンメルと王女様の声が耳に届いた。
「――ロンメル!? 一体どうしたのです!? 何故臣下を石に変えたのですか!? これは……これは明確な反逆行為です!」
「ちッ……うっせぇな。邪魔だったからに決まってんだろ。あんたはオレの后になるんだからな。おとなしくしてろ」
「いや! やめて! 誰か助け……」
彼は耳を疑った。しかし、ロンメルが発する匂いの色が赤から白へと変わる。白は赤とは真逆の満足感などを示している色だ。
彼の脳裏に一人の男性と女性の姿が浮かび上がる。ファースは匂いを嗅ぎ分けながら全速力で走りだした。
「は、反逆だ! まさかロンメルさんが! 僕一人じゃどうする事もできない! 隊長と副隊長は……外か! 急がなきゃ!」
ファースは中庭を抜け、城内を脱し外へと続く門を接近すると勢いそのままに天高く飛び上がり、城門を飛び越える。
「よ、よし! 近いのは……クンクン……アンドリュー隊長だ!」
そのまま城下へと降りて行き走り続け、市場にて黄金の甲冑を着込んだ人物を彼は発見する。
「アンドリュー隊長! 大変です!」
「おお、ファースではないか。珍しいな、お主がそのように慌てるとは! ガハハハ!」
彼は城内であった出来事をアンドリューに説明した。
「それは誠か?」
「この耳でしっかりと聞きました! 間違いなく謀反です! ロンメルは国賊となったのです!」
「あいわかった。今すぐ城へ戻ろう。ファース、お前はエスカにこの事を伝えてくれまいか」
「ハイ! 今すぐに!」
アンドリューと別れ、今度はエスカの元へと向かう。エスカは住宅区の巡回を行っていた。
エスカと合流したフ彼は口早に出来事を彼女に伝える。
「……では何か? ロンメルが王女様を手に掛けたと?」
「そこまではわかりません。ですか、最悪……」
ファースの言葉を無視し、エスカは城に向かって歩き出した。
「私は王女様の騎士だ。王女様に手を掛けたと言うのなら――私は死んでも許すつもりはないッ!!」
ファースは今まで見たことない程に激昂するエスカの後ろ姿に、少し怯えながら付いて行く。
城に着くとアンドリューが既に城門前へと来ていた。
ファースは我が目を疑った。城全体に灰色の魔障防壁が張られていたのだ。
「ぼ、僕が外に出た時はこんなものありませんでした!」
「うむ、どうやら我々は閉めだされてしまったようであるな」
エスカが魔障防壁に近づいていき、勢いよく殴りつける。
「クソッ! この中に王女様がいるというのに!」
「落ち着けエスカ。焦ってもどうにもならんのである」
「アンドリューお前は心配じゃないのか!?」
「某だって心配である! しかし我らが取り乱してはならぬのだ! エスカ副隊長、周りをよく見るのである」
彼女が周りを注視する。住民が心配そうに、こちらを見ているのを知り我に返る。
「す、すまないアンドリュー。あまりにも私は未熟だった」
「うむ。落ち着いて、この魔障防壁を解く方法を考えようではないか」
3人は魔障防壁をどうにかしようとしたがびくともせず、途方に暮れるのだった。
「おや? 王立騎士団のお三方、こんな所でなにやってるんだい?」
声の主は魔術師会、会長のギヌルベルだった。
城に張られている魔障防壁を見た瞬間、彼女の目が鋭くなる。
「これは……お前さん達これに物理攻撃したね?」
「わかるのであるか?」
「私は魔導に生涯を掛けてきたババアだよ? 当たり前さね。良いかい? この魔障防壁はね、アタックリフレクトバリアって言って、殴れば殴るほど固くなっちまうんだよ。やっちまったね。こりゃもうどうにもならんよ」
「そ、そんな……」
エスカの表情が絶望に染まる。
「もうだめなのか。私達では王女様を助けることは出来ないのか」
「おい、エスカ! お前なんで待ち合わせ場所に来ないんだよ。約束は守ってくれないと困るだろ」
エスカが諦めかけたその時、左の方から声がし振り向くとそこにはエルとアーサーを連れたゲインの姿がそこにあった。
彼の名はファース。王立騎士団のメンバーの一人だ。
彼の嗅覚と聴覚は人間の500倍程あり、この生まれ持っての能力を使い、城内部の警備を自主的に行うのが彼の日課である。
「今日も城内はなんともないようでよかった。そろそろ皆帰ってくるだろう。ん? この匂いと色は……」
ファースには物体が持つ匂いそのものを視認し、色による状態判別能力が備わっている。
この能力は彼の生まれ持ったユニークスキルなのだが、自身は全くそのことに気付いていない。
大した戦闘技能を持たないファースが王立騎士団に入団出来た最大の理由は、この判別能力を使い敵の状態や攻撃のタイミングなどを見切りながら戦ってきたからにほかならない。
「クンクン……間違いない。この匂いはロンメルさんのもの。しかし……この赤い色は強い警戒をはらんだ色だ。一体?
彼は匂いを嗅ぎながら歩き、謁見の間直ぐ近くまでたどり着く。
ロンメルの匂いは謁見の間内部まで続いていた。不審に思った彼は自らの聴覚を拡張する。
神経を集中させるとロンメルと王女様の声が耳に届いた。
「――ロンメル!? 一体どうしたのです!? 何故臣下を石に変えたのですか!? これは……これは明確な反逆行為です!」
「ちッ……うっせぇな。邪魔だったからに決まってんだろ。あんたはオレの后になるんだからな。おとなしくしてろ」
「いや! やめて! 誰か助け……」
彼は耳を疑った。しかし、ロンメルが発する匂いの色が赤から白へと変わる。白は赤とは真逆の満足感などを示している色だ。
彼の脳裏に一人の男性と女性の姿が浮かび上がる。ファースは匂いを嗅ぎ分けながら全速力で走りだした。
「は、反逆だ! まさかロンメルさんが! 僕一人じゃどうする事もできない! 隊長と副隊長は……外か! 急がなきゃ!」
ファースは中庭を抜け、城内を脱し外へと続く門を接近すると勢いそのままに天高く飛び上がり、城門を飛び越える。
「よ、よし! 近いのは……クンクン……アンドリュー隊長だ!」
そのまま城下へと降りて行き走り続け、市場にて黄金の甲冑を着込んだ人物を彼は発見する。
「アンドリュー隊長! 大変です!」
「おお、ファースではないか。珍しいな、お主がそのように慌てるとは! ガハハハ!」
彼は城内であった出来事をアンドリューに説明した。
「それは誠か?」
「この耳でしっかりと聞きました! 間違いなく謀反です! ロンメルは国賊となったのです!」
「あいわかった。今すぐ城へ戻ろう。ファース、お前はエスカにこの事を伝えてくれまいか」
「ハイ! 今すぐに!」
アンドリューと別れ、今度はエスカの元へと向かう。エスカは住宅区の巡回を行っていた。
エスカと合流したフ彼は口早に出来事を彼女に伝える。
「……では何か? ロンメルが王女様を手に掛けたと?」
「そこまではわかりません。ですか、最悪……」
ファースの言葉を無視し、エスカは城に向かって歩き出した。
「私は王女様の騎士だ。王女様に手を掛けたと言うのなら――私は死んでも許すつもりはないッ!!」
ファースは今まで見たことない程に激昂するエスカの後ろ姿に、少し怯えながら付いて行く。
城に着くとアンドリューが既に城門前へと来ていた。
ファースは我が目を疑った。城全体に灰色の魔障防壁が張られていたのだ。
「ぼ、僕が外に出た時はこんなものありませんでした!」
「うむ、どうやら我々は閉めだされてしまったようであるな」
エスカが魔障防壁に近づいていき、勢いよく殴りつける。
「クソッ! この中に王女様がいるというのに!」
「落ち着けエスカ。焦ってもどうにもならんのである」
「アンドリューお前は心配じゃないのか!?」
「某だって心配である! しかし我らが取り乱してはならぬのだ! エスカ副隊長、周りをよく見るのである」
彼女が周りを注視する。住民が心配そうに、こちらを見ているのを知り我に返る。
「す、すまないアンドリュー。あまりにも私は未熟だった」
「うむ。落ち着いて、この魔障防壁を解く方法を考えようではないか」
3人は魔障防壁をどうにかしようとしたがびくともせず、途方に暮れるのだった。
「おや? 王立騎士団のお三方、こんな所でなにやってるんだい?」
声の主は魔術師会、会長のギヌルベルだった。
城に張られている魔障防壁を見た瞬間、彼女の目が鋭くなる。
「これは……お前さん達これに物理攻撃したね?」
「わかるのであるか?」
「私は魔導に生涯を掛けてきたババアだよ? 当たり前さね。良いかい? この魔障防壁はね、アタックリフレクトバリアって言って、殴れば殴るほど固くなっちまうんだよ。やっちまったね。こりゃもうどうにもならんよ」
「そ、そんな……」
エスカの表情が絶望に染まる。
「もうだめなのか。私達では王女様を助けることは出来ないのか」
「おい、エスカ! お前なんで待ち合わせ場所に来ないんだよ。約束は守ってくれないと困るだろ」
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