58 / 151
第58話 俺、アーサーのリュックサックを確認する
しおりを挟む
アーサーの実家を出た俺達は一旦広場へと戻る。
「では、ここからマジで自由時間とする」
「ハイ!」
「私は見回りに行かせて頂きます。では」
「ん゛……ばばぁっふぁ」
エルは広場にある露店でお菓子を買い漁っていたようだ。手にはいっぱいのお菓子の山。
口にペロペロキャンディを突っ込んで喋っている。
「あのさぁ……エル? 一度お菓子置こうよ。あと口に食べ物突っ込んだ状態で喋っても何言ってんのかわかんねぇから」
エルは抱えていたお菓子を床に起き、口からはみ出ているキャンディの取手を掴み引き抜いた。
「もぉわ。わかった」
「ああ、うん。そのお菓子は――とりあえずアーサーのリュックサックの中にでも入れさせてもらえ」
エルは地面に置いたお菓子を両手で拾い上げると千鳥足でアーサーの元へ近づいていく。
「お菓……子をお願い」
「ハイ、良いですよ」
アーサーは背中に背負ったリュックを地面に置くと、リュックのフォックを開けた。すると、エルの手に持った全てのお菓子が宙に浮き、リュックの中へ吸い込まれていった。
「こ……これは!」
「す……ごい」
「勝手に吸い込まれていきました! どうなってるんですかね?」
俺はおもむろにリュックの中を覗く。リュックの中は小さなブラックホールの様なものが入っており、お菓子はどこにも見当たらなかった。
「間違いねぇ! これは【何でも入る君リュックサックver】だ。生産職を極めた者でも作れる確率は0.0001%以下っていう最狂マジキチアイテムだ!」
「そ、そんなに凄いアイテムなん……ですか?」
「凄い? 凄いなんてもんじゃねぇ! 俺ですら何千何万回と作ろうとして出来たのはウエストポーチレベルだぞ? 持ってるだけ神もしくはキチ○イ扱いを受ける。今お前が背負ってるリュックはそういう代物なんだよ!」
ハガセンのアイテムにはコストが設定されており、インベントリ内に保存する場合キャパシティよりけりだが、必ず限界がやっている。
課金すれば幾らでも拡張できるのだが、無課金戦士やケチンボ廃生産職プレイヤーにはその選択肢は存在しない。
一部の廃プレイヤーと無課金プレイヤーが運営に突撃し、緩和策として作られたのが何でも入る君シリーズだ。
何でも入る君を作る条件は常軌を逸した難しさであり、まず大前提として生産職で作れるアイテムを9割コンプリートする必要がある。その上幾つもの素材をドブに捨てて神に祈りながら出来るのを願う。
大抵の生産職――いや、まともな思考回路を持つ人であればやろうとは思わないだろう。その何でも入る君シリーズで最も出来る確率が少ないのがリュックサックバージョンである。
こいつのヤバイ所は例のブラックホールの様なものそのものだ。噂によるとあの中に入ったアイテムはコストが0となり実質容量は無限となる……らしい。
「わかったか? それは俺ですら持っていない恐らくこの世で最もレアな代物だ。そのリュックに比べたら俺がお前にやった魔剣などヒノキの棒みたいなもんだ」
「僕の……お母様って……い、一体……」
「……自分で聞け。そうだ、一度確かめたい事がある。リュックの中に手を突っ込んでみても良いか?」
「はい、どうぞ」
俺は恐る恐るリュックの中に手を突っ込む。中は空どうで何も掴む事が出来ない。
「ん? エルが買ったお菓子がないぞ? 何処だ? 何でもいいからお菓子を……」
俺がそう言った瞬間手に感触が伝わった。掴んでみると棒状のお菓子ようだ。俺はそれをしっかりと握る。
「よし、掴んだぞ。ネメシス今掴んでいる物体のコストを測ってくれ」
「今掴んでいるチョコバーのコストは0となっております」
俺は思いっきりチョコバーを掴んだまま手を引っ込める。
リュックから引っ込めた手にはブラウン色の包み紙に包まれたチョコバーが確かに握られていた。
「ネメシス再び計測してくれ」
「チョコバーのコストは0.5です」
「まさか本当に0になるとは……とんでもないな。あの女……出来るッ!」
俺はチョコバーを再びリュックの中へと戻そうとしたところエルが凄いスピードで俺からチョコバーを掠め取った。
「食べる」
「あ、あっそ。どうぞご自由に」
エルはチョコバーをニヤニヤしながら食べるとまたお菓子屋に並び始めた。
「あいつどんだけ甘党なんだよ……」
「お師匠様! もう大丈夫ですか?」
「悪かったな。アーサーもう良いぞ。お袋さんが作ってくれたリュック大切にしろよ」
「ハイ!」
アーサーはいつも以上にニコニコ笑顔だった。
「では、ここからマジで自由時間とする」
「ハイ!」
「私は見回りに行かせて頂きます。では」
「ん゛……ばばぁっふぁ」
エルは広場にある露店でお菓子を買い漁っていたようだ。手にはいっぱいのお菓子の山。
口にペロペロキャンディを突っ込んで喋っている。
「あのさぁ……エル? 一度お菓子置こうよ。あと口に食べ物突っ込んだ状態で喋っても何言ってんのかわかんねぇから」
エルは抱えていたお菓子を床に起き、口からはみ出ているキャンディの取手を掴み引き抜いた。
「もぉわ。わかった」
「ああ、うん。そのお菓子は――とりあえずアーサーのリュックサックの中にでも入れさせてもらえ」
エルは地面に置いたお菓子を両手で拾い上げると千鳥足でアーサーの元へ近づいていく。
「お菓……子をお願い」
「ハイ、良いですよ」
アーサーは背中に背負ったリュックを地面に置くと、リュックのフォックを開けた。すると、エルの手に持った全てのお菓子が宙に浮き、リュックの中へ吸い込まれていった。
「こ……これは!」
「す……ごい」
「勝手に吸い込まれていきました! どうなってるんですかね?」
俺はおもむろにリュックの中を覗く。リュックの中は小さなブラックホールの様なものが入っており、お菓子はどこにも見当たらなかった。
「間違いねぇ! これは【何でも入る君リュックサックver】だ。生産職を極めた者でも作れる確率は0.0001%以下っていう最狂マジキチアイテムだ!」
「そ、そんなに凄いアイテムなん……ですか?」
「凄い? 凄いなんてもんじゃねぇ! 俺ですら何千何万回と作ろうとして出来たのはウエストポーチレベルだぞ? 持ってるだけ神もしくはキチ○イ扱いを受ける。今お前が背負ってるリュックはそういう代物なんだよ!」
ハガセンのアイテムにはコストが設定されており、インベントリ内に保存する場合キャパシティよりけりだが、必ず限界がやっている。
課金すれば幾らでも拡張できるのだが、無課金戦士やケチンボ廃生産職プレイヤーにはその選択肢は存在しない。
一部の廃プレイヤーと無課金プレイヤーが運営に突撃し、緩和策として作られたのが何でも入る君シリーズだ。
何でも入る君を作る条件は常軌を逸した難しさであり、まず大前提として生産職で作れるアイテムを9割コンプリートする必要がある。その上幾つもの素材をドブに捨てて神に祈りながら出来るのを願う。
大抵の生産職――いや、まともな思考回路を持つ人であればやろうとは思わないだろう。その何でも入る君シリーズで最も出来る確率が少ないのがリュックサックバージョンである。
こいつのヤバイ所は例のブラックホールの様なものそのものだ。噂によるとあの中に入ったアイテムはコストが0となり実質容量は無限となる……らしい。
「わかったか? それは俺ですら持っていない恐らくこの世で最もレアな代物だ。そのリュックに比べたら俺がお前にやった魔剣などヒノキの棒みたいなもんだ」
「僕の……お母様って……い、一体……」
「……自分で聞け。そうだ、一度確かめたい事がある。リュックの中に手を突っ込んでみても良いか?」
「はい、どうぞ」
俺は恐る恐るリュックの中に手を突っ込む。中は空どうで何も掴む事が出来ない。
「ん? エルが買ったお菓子がないぞ? 何処だ? 何でもいいからお菓子を……」
俺がそう言った瞬間手に感触が伝わった。掴んでみると棒状のお菓子ようだ。俺はそれをしっかりと握る。
「よし、掴んだぞ。ネメシス今掴んでいる物体のコストを測ってくれ」
「今掴んでいるチョコバーのコストは0となっております」
俺は思いっきりチョコバーを掴んだまま手を引っ込める。
リュックから引っ込めた手にはブラウン色の包み紙に包まれたチョコバーが確かに握られていた。
「ネメシス再び計測してくれ」
「チョコバーのコストは0.5です」
「まさか本当に0になるとは……とんでもないな。あの女……出来るッ!」
俺はチョコバーを再びリュックの中へと戻そうとしたところエルが凄いスピードで俺からチョコバーを掠め取った。
「食べる」
「あ、あっそ。どうぞご自由に」
エルはチョコバーをニヤニヤしながら食べるとまたお菓子屋に並び始めた。
「あいつどんだけ甘党なんだよ……」
「お師匠様! もう大丈夫ですか?」
「悪かったな。アーサーもう良いぞ。お袋さんが作ってくれたリュック大切にしろよ」
「ハイ!」
アーサーはいつも以上にニコニコ笑顔だった。
0
お気に入りに追加
1,541
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる