アーマード勇者育成記 産業革命遺産チート! 世界観ガン無視完全無敵の俺が無双する件 剣と魔法?よろしいならばこちらは強化外骨格だ。

からくり8

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第51話 邂逅

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「くッ!! 皆の者持ちこたえるのだ! 一体は倒せた! このまま戦いつづければ必ず勝機はある!」

 隊長であるアンドリューの激励が私を含め皆の耳に届く。

 二体目のグリフォンは空中に陣取り、羽ばたきによるソニックブームで波状攻撃を仕掛けてきたのだ。
 ソニックブームによる衝撃波で前衛の者は吹き飛ばされ、後衛の魔法もまた同じく衝撃波に弾かれてしまっている。
 私もニーベリングスレイヤを振りかぶるが、やはり弾かれていまう。いつしか戦闘は膠着状態へと陥っていた。

「この刃が届きさえすれば一瞬で決着が付くというのに!」

 私は悔しくなり歯噛みした。グリフォンにではなく、無能な自分に対して。

「ちッ! グリフォン如きに何をやっている! もっと集中して魔力を高めろ! ダボ共めが!」

 後ろでは、王立騎士団魔術師のロンメルが、他の兵士や魔術師に対し悪態をつくのが聞こえる。

「副隊長、このままではいずれ……」

 私の隣りにいるファースが不安なのか私に話かけてきた。ファースや、私が率いている兵士たちの顔色を伺ってみると、皆だいぶ疲弊しているようだ。

「大丈夫だ。きっといつか活路は開かれる」

 今も魔術師達が魔法を撃ち続けているのが見える。ダークエルフである私は一部を除き、魔法を扱う事が出来ない。
 エルフが遠距離、弓や魔法に特化した亜人ならダークエルフは近接戦闘に特化した亜人だ。

 我ながらなんとも情けない事だ。副隊長でありながら、打開策のひとつも思いつかないとは。

「……お兄様ならこういう時どうするのだろうか?」

 私が現実逃避をした瞬間、討伐に参加している冒険者の一人が叫び声をあげ、私は我に返る。

「な、なんだありゃ!? 謎の飛行物体があり得ないスピードでこちらへ向かって来ているぞ!」

 声を上げたのはどうやら盗賊の様だ。盗賊のジョブに付いている者は皆、異常に視力が発達していると文献で読んだことを私は思い出した。
 私を含め、皆が盗賊と同じ方向方を見る。集中すると、確かに黒い何かがこちらへ向かって来ているのがわかった。

「ハハッ……嘘だろ? 目がおかしくなったのか? なんだよあれ」

 よく見ると黒く巨大な鎌の様な、槍の様なものを持っているのようにも見えた。
『なんだあれは?』私がそう思うと、黒い鎌が鋭い風切音と共に飛来しグリフォンの胴体を貫いたのだ。

「KYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?」

 叫び声を上げめちゃくちゃに羽ばたくグリフォン。
 グリフォンの胴体に突き刺さったのは槍や鎌などではなく超巨大な蟻の足であった。

「なんだ!? どこからこんなもんが飛んで来やがった!?」

 後方で魔法を撃ち続けていたロンメルが声を張り上げる。
 皆あまりの事に声を失っていた。ただ一人を除いて。

「ッしゃあ! オラアアアアアアアアアアアア!! キーック!!!」

 声の主はそのままグリフォンに激突し、木々をなぎ倒していった。
 衝撃により土煙が辺りに充満し、周りがよく見えない。
 皆も突然の自体に混乱しているようだ。

「皆落ち着け! 怪我しているものはいないか!?」

 私が安否確認をすると、皆落ち着きを取り戻したようだった。

「エスカ無事か? 一体何が起こったのだ?」

 この土煙の中でも燦然さんぜんと輝く黄金で出来た甲冑着こむ人物、それは王立騎士団隊長アンドリューに他ならない。

「ああ、アンドリュー大事ない。すまん、私にも何が何やら」

 突如風が発生し土煙が嘘のように飛散したかと思うと、ある一人の人物が上空から我々の中心、丁度グリフォンが居た辺りに着地した。
 忘れる筈もない。その現れた人物は漆黒の甲冑に身を包んでいた。

「ウィンダム、ご苦労さん。戻っていいぞ。いや~、間に合ってよかった~。もしかしたら負けてんじゃないかと心配した」
「お主がグリフォンを討伐した者か?」
「おわ~金ピカだな、すっげぇ派手な甲冑着込んでんな! まぁ、そうだよ。ん?」

 目が合った。私は知らず知らずのうちに漆黒の騎士の元へ来てしまっていた。

「――あ、あのもしや……お兄様?」
「その全身真っ赤な甲冑に褐色の肌! お前エスカか!? こんな所で出会えるなんて思いもよらなかったぞ! 相変わらずお前は美人だなぁ! 元気だったか?」
「お兄様ぁッ!!」

 私は居ても立ってもいられず、お兄様に抱きついていた。


 遂にこの日、私は夢に見たお兄様との邂逅を果たしたのだった。
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