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第48話 俺、王都に行く

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 大賢者にあった翌日、俺達はリーメルの喫茶店で最期の朝食を摂っていた。魔術大会が終わった為か、店内は閑散としていた。

「知りたい事情報は全て手に入れた。だから、朝飯喰い終わったらこの街を出るぞ」
「うん……」
「はい……わかりました」

 アーサーは喫茶店に来てから、ずっとこの調子だ。エルのテンションが低めなのはいつもの事だが、珍しくアーサーのテンションが低いのが俺は気になった。

「どうしたんだ? アーサー? 調子でも悪いのか? 病気や怪我ならエクストラヒールで速攻治してやるぞ?」
「いえ、違うんです。その……お師匠様! 申し訳ございません! 僕が無能なばっかりに!」

 アーサーはいきなり俺に向かって謝り始めた。額をテーブルに打ち付けながら謝辞の言葉を連呼している。

「うわ! 馬鹿! 落ち着け! なんだ一体! 今朝からどうしたんだ! ほんとにおかしいぞ!」

 幾ら閑散としているとはいえ喫茶店。俺達以外にも客や店員がいるのだ。俺はアーサーを両肩を掴み、顔を上げさせる。アーサーは目に涙がこれでもかと溜まっていた。まさに決壊寸前といった感じだ。

「お師匠様! お願いがあります! 悪魔を察知するスキルが使えなくなってしまった事を、王女様に報告しなければなりません! 王都へ付いてきて下さい!」

 アーサーが、朝からおかしかった原因を察知した俺は一気に脱力する。

「アーサー、お前は何を言ってるんだ。お前にとって俺は何だ?」

 怒られるとでも思っていたのか、アーサーは俺の質問にキョトンとしていた。

「えっと……お師匠様はお師匠様です」
「違うだろぉ~? 俺はお前の従者だ。従者ってのは付いてくのが仕事だ。お前の行く所が次の目的地になるんだよ!」

 アーサーはハッとした表情になると俺の手を掴んで来た。

「じゃ、じゃあ付いてきて頂けるんですね!」
「当たり前だろ? な、エルも別に行きたい所とかないだろ?」

 俺はもしゃもしゃとパンケーキを食べてるエルに話題を振る。エルは口の中にパンケーキを押し込んだ状態のまま首をコクコクと揺らし、相槌をうつのが見えた。

「よし、じゃあとっとと王都に行っちまう。それに個人的に興味もある。金は俺が払っとくから外で待っててくれ」
「ハイ! よろしくお願いします!」
「ンー」

 俺が金を払い出ていこうとすると、リーメルに呼び止められ。

「この街を出るのね。エルの事頼んだわよ」
「わかってるって。前に言っただろ? コーヒー美味かったぞ。じゃあな!」

 俺はリーメルに手を振り、喫茶店を出た。

「この街の出口は何処にあるんだ?」
「ここから北に……進めば出入り口の……門に辿り着く」

 3人で北へ歩き続けると、やがて入ってきた門と同じものが見えてきた。

「あれが門だな」

 門番は俺達を見ると、ゆっくりと身をひいた。巨大な門を俺はくぐる。

「やっとこの街を出る事が出来たのか。あ~、長かった。そういや、王都にはどう行くんだ?」
「王都には第3大陸に行かなきゃなりませんから、ここから西にある、バニアル山を越えて港町に行く必要がありますね! 大体、歩きで行くと4日程掛かる道程です!」

 俺は思ったより道程が長かった為、少し驚く。

「近くに人気のない草原みたいな所はないか?」
「この先西に行った所に草原があります」

 俺は足早に歩き人気のない草原を目指し、草原の真ん中辺りで立ち止まると、腿を叩きギアの入ったケースから紫の歯車を取り出し放り投げる。

「ウェイクアップ、紫炎龍」

 俺が放り投げた歯車がどんどん分裂していき人の姿を形どっていく。

「おはようございます、皆さん。ゲイン様、今日はどの様な指令でしょうか?」
「ああ、お前には今すぐ飛行形態になってアーサーとエルを乗せてやってくれ」
「承知致しました」

 紫炎龍は戦闘機に姿を変えると、エルとアーサーの元へ近づく。

「私! 私1番前がいい!」

 エルが目をキラキラさせ 、声を声を張り上げている。

「じゃあ、僕はエルさんの後ろで」

 俺は紫炎龍のキャノピーを開け、手を差し出しアーサーとエルを順番にコクピットへ乗せる。

「ちょっと待ってください。お師匠様はどうするんですか?」

 アーサーは身を乗り出し、俺の方を見ている。

「あ、俺飛べるから」

 この場を一瞬の静寂が支配した。

「「ええええええええええええええ!!??」」
「あれ? 言わなかったっけ?」

 キャノピーが閉まっていき、アーサーとエルを乗せた紫炎龍がバーニアを吹かし始めた。薄いキャノピーの奥でエルとアーサーが何か騒いでいるが全く聞こえない。

「紫炎龍、道はアーサーが知っている。俺は、お前の後を付いてくからな」
「承知致しました。では発進します」

 俺は紫炎龍が飛んでいくのを見送る。

「さて、久々にやるか。チェインジ! ヤルダバオトⅧ式!!」

 俺が叫ぶとウルガイスⅥ式が外れ、再び俺と対面する形で組み上がっていく。

「じゃあね、ゲイン様楽しかったわ。よかったら、また呼んでちょうだい」
「おう、じゃあな。ご苦労さん」

 ウルガイスⅥ式が消えさると同時に、身体に軽い衝撃が奔るとヤルダバオトⅧ式を装着していた。

「お久しぶりです。ゲイン様」
「おう、ネメシス。早速だがブースターを起動しろ。先に紫炎龍が飛んでるのがわかるか?」
「魔力の察知を完了しました。追尾開始」

 背中のブースターが起動した為、俺は助走を付け天高く跳躍する。

「どの位の距離差がある?」
「距離にして90キロ程です。直ぐに追いつけます」

 ブースターの推力が急上昇しあっという間に紫炎龍に追いついた。

「ゲイン様、城が見えてきました」

 地上を見ると、青い尖った屋根が特徴的なとても立派な城が目に入った。

「よし! 王都の近くに着陸しろ!」
「承知致しました。ゲイン様」

 紫炎龍と俺は王都近くの森の中へ着陸する。
 キャノピーが開くとエルが飛び降りて盛大にリバースする。

「オロロロロロロロロ」
「やっぱり吐くんだな……」

 遅れてアーサーが折りてくる。

「お師匠様! 僕も空飛びたいです!」
「長距離飛行は……多分お前らには無理だ。エリアルダイブで我慢しようね!」

 しょぼんとするアーサーを尻目に、エルにクリーンを掛けてやる。

「アーサー、道案内を頼む」
「ハイ! こっちです」

 俺達はアーサーの後をついて行くと城下の入り口様な所へ出た。目の前には兵士が突っ立ったまま居眠りしている。居眠り兵士を無視し、城下町へと入る。

「門番が居眠りって……」
「ま、まぁ王都はとっても安全ですからね」
「ほう、そうなのか。何か理由があるのか?」

 俺がそう言うとアーサーは目をキラキラさせて俺の方を向き喋りだした。

「なんと言っても王立騎士団の存在です! この王都でゆりすぐりの猛者を集めて作ったと言われる。この国の要の様な存在なんです!」
「へぇ、そうなんだ」

 アーサーと世間話をしているとどうやら城下町へ入ったようだった。ルギームも人通りは多かったが流石王都と言ったところか、屋台やらアクセサリー屋やら武器屋やらが処狭しと並び多種多様な人がいる。

「うわー、人だらけだな。下手すると迷子になりそうだ。で? 城は何処にあるんだ?」
「ついてきて下さい! 僕は王都出身なんでもう道は頭に入っています!」
「あっ、そっかぁ。じゃあ頼む」

 俺アーサーについていき市場と住宅区を抜け、城門前へと辿り着く。

 門番はアーサーを見るなり声を上げた。

「勇者殿!? いつ王都に戻られたのですか?」
「すいません。王女様に謁見も申し込みたいのですがよろしいですか?」
「勿論です! 少々お待ちください!」



 走り去っていた門番を待つこと10分後……。

「王女様が謁見に応じるとの事です。どうぞ、皆様お入りください!」
「え? 俺達も良いの?」

 門番は俺に対し背筋を伸ばし、ハキハキとした声で答える。

「アーサー殿のお付の皆様の事をお伝えしたところ興味があるとの事です!」
「じゃ、お言葉に甘えて」

 城門を潜り城の中へと入る。城の入り口には階段が幾つもあり、初見では道に迷うだろう。わざとこうなっているのだろうか?アーサーがいなければ危ないところだ。引き続きアーサーについていき巨大な扉の前でアーサーは立ち止まった。

「ここが謁見の間です。入ります」

 アーサーが扉を開ける。謁見の間には何人かの人物がいる。臣下だろうか?
 周りにはヘンテコな白髪のかつらを被ったおっさんがいる。そして中央にいる女性が王女様だろう。
 青い髪に小さな宝石が付いた金色のサークレットを頭に付けている。純白のドレスが似合う、ザ・王女といった感じだ。

 アーサーとエルは王女に近づいていきある距離で跪いた。俺も見様見真似で跪く。

「息災のようで何よりです。勇者アーサー、今日はどうしたのですか?」
「はい! 今日は報告があってまいりました! 悪魔の反応が突如として消えてしまいましたので、その報告に立ち寄らせていただきました」
「そうですか、仕方ありません。何も焦る必要はありません。ゆっくりでいいから確実におやりなさい」
「はい!」

 アーサーが言い終ると王女様は俺の方をジッと見ていた。

(ん ?なんだ? 俺なにか失礼な態度とったかな?)

「漆黒の騎士……? まさか、もし? 貴方は――」

 王女様が俺に何か言おうとした瞬間、後ろの扉が乱暴に開き息を切らした門番が入ってきた。
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