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第43話俺、vsジェミニスターライト
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闘技場へ付いた俺達は受付前へ歩を進める。
闘技場の受付嬢は金髪のエルフの男性だった。長い耳に幾つもイヤリングをしている。
「ようこそ! チームパープルの皆さん! こちらから奥に行けばすぐに試合が開始されます! 頑張ってください!」
「あ、ありが……とう」
エルフは俺を無視しエルにだけ握手をすると、左手を広げる。
「こちらから入って奥の昇降機へ乗って下さい。では、ご武運を」
「んじゃ、アーサーは応援よろしく」
「ハイ! 精一杯応援します!」
俺達はアーサーと別れ、奥の昇降機へと乗る。
「あのエルフ、ロリコンだな……。間違いない」
「ん? 何か……言った?」
「いや、別に~」
闘技場の昇降機がゆっくりと上昇し、バトルフィールドへ駆り出され、遂に俺達はジェミニスターライトの2人と対峙する。一方は薄ピンクのドレスアーマーを着込み、もう一方は水色のドレスアーマーを着込んでいる。上半身の甲冑は薔薇の装飾が入っており、胸の形がクッキリとわかる。スカートの部分に鋼鉄の板の様なものが張り付いているように見えるが、舞踏会にあの姿で出ても違和感は感じないだろう。まさに、良いとこのお嬢様といった感じだ。
よく見ると2人とも全く同じ顔立ちに輝かしい金髪、決定的に違うのは、片割れである水色が似付かわしくない紫色の眼帯を左目にしている事だろうか?
薄ピンクはロングストレートが風に揺れているのがわかる。水色の方はロングなのは一緒だがサイドがマカロニの様な特徴的な髪型をしている。ちなみに双方共胸の自己主張がかなり激しい。双方の甲冑は恐らく特注品だろう。特にマカロニの方は控えめに言って爆乳と言って良い。水色のドレスアーマー上部から谷間がはっきりと見えている。
「おい、エル教えてくれ。どっちがアイーナなんだ?」
「胸の谷……間が出て……ない方」
「実にわかりやすい。ありがとう。という事は、あの爆乳がイクルナだな」
俺はエルの方を尻目で見ると、コクッと相槌をうつのが見えた。目を元に戻し正面を見るとアイーナと目が合う。そして一瞬微笑むと、スカートの裾を両手で掴み、小さくお辞儀を俺に向かってしてきた。
「御機嫌よういい天気ですわね。晴れて良かった。しかし、本当にここまで来るとは思いもしませんでした。余程の自信があるのか、馬鹿なのか」
「お前等はギルドで皆と一緒に俺達の試合を見たりしなかったのか?」
俺の質問にアイーナは目をパチクリさる。
「必要ありませんわ。どうせ私達姉妹が勝つのですから」
「お姉様、もうお喋りはその辺で。そろそろ時間です」
聞き覚えのある声が闘技場に響きわたる。
「さぁー! やってまいりました。エキシビションマッチ! 決勝戦にて極東に存在する忍者という摩訶不思議なジョブ、零影を見事討ち破った挑戦者チームパープル! 対するは前回、前々回と連覇中のチームジェミニスターライト! 制限時間無制限エキシビションマッチ試合開始ッ!!」
「お姉様」
「わかっています! イクルナ時間を稼いで下さい!」
アイーナが何やら魔力を貯め、イクルナが手を翳し魔法を放ってきた。
「ダークネス・ハウンド」
イクルナが詠唱すると魔法陣が展開され、ヘドロで出来た犬の様なモンスターが数匹召喚されエルに向かって来た為、俺は聖属性の防御魔法をエルに付属させる。
「ホーリー・プロテクション! エル、お前は上空から支援してくれ」
「わ……かった!」
エルの周りに白く薄っすらとしたバリアする。ダーク・ハウンドがバリアに激突すると飛散し消え去ったの確認し、俺はエルに上空に行くよう指示する。そして、鑑定スキルを無詠唱で発動させ、イクルナのステータスを確認しする。
「なに……? 私のダークネス・ハウンドを掻き消す程の防御魔法だと?」
「爆乳のお嬢さん、あんた面白い奴だなぁ。お礼に俺も面白いもんを見せてやるよ。その前に、とりあえずアイーナお嬢さん何貯めてっか知らんけど、ちょっと大人しくしててもらおうか。グレイプニル」
「何!? キャッ!?」
グレイプニルはウルガイスⅥ式のパッシブスキルだ。地中から人間の背骨のような物が数本飛び出し、アイーナはあっという間に縛られてしまった。
「よし、準備は整ったな」
俺は目を閉じて神経を尖らせ、イクルナに向かって手を翳し詠唱を開始する。
「音と空間の狭間に存在する精霊よ、我が前にその姿を表せ。絶音精霊ノイズ!」
俺が詠唱を完了させると空間に突如ガラスを叩き割ったかのような切れ目が発生し、そこから一体の精霊がゆっくりと現れた。
その見た目は人間の形を保っているが、全身がイカれたVHSの砂嵐の様なもので構成されており、ザーというノイズ音を鳴らしながら俺の前に立つと、ゆっくりと礼をする。
「久しぶりだな。ノイズいきなりで悪いが絶音界を発動してくれ。巻き込む範囲は俺と俺に対峙している2人だ」
『ザー! ザ、ザザ、ザー!』
ノイズが両手を天に向ける。すると、小さな球体を自らの身体から生み出すとそれがドンドン大きくなり、俺とジェミニスターライトの双方を飲み込んでいく。
「ゲイン!!?」
「悪いなエル。初めからこうするつもりだったんだ。お前姉達を殺すかもしれんからな。大丈夫、任せておけ」
驚いて急降下してくるエルを見ながら、俺とスターライトジェミニはノイズの放った砂嵐の空間に飲まれていく。
「さてと、お嬢様方、絶音界は特殊なフィールド魔法みたいなもんだ。外からは一切こちらの姿は見えないし、一切音も聞こえない。これで堂々とお話出来るってもんだ」
俺は、グレイプニルの締め付けを強めると、アイーナを気絶させる。
「なんだ? この……魔法は? 何故我の魔法が発動しない! 答えろ!」
「どうでも良いけどさぁ、とてもお嬢様の口調じゃなくなってるよ? 大丈夫? 爆乳の姉ちゃん。ま、もうわかってるから別に良いんだけどさ。ダークネス・ハウンドは攻撃スキルみたいなもんだが、悪魔やら闇の眷属しか使えない筈だ。お前、悪魔だな? 何でイクルナに取り憑いてんだ?」
「チッ! クソボディめが!」
悪魔が悪態を吐くと眼帯を脱ぎ捨て、隠れていた左目が露わになる。その目玉は全体が真っ黒であり、明らかに人間の目ではない。左目からコールタールの様なドロドロとした黒い涙を流しイクルナの足元に溜まると、そこから艶めかしい黒い下着姿の様な格好をしている悪魔が姿を現す。肌は人間と同じ様だが、頭に2つのデカい角がはえおり、眼球は金色に輝き蛇の様な目付きをしている。紫色の長い髪を弄りながら悪魔は喋りだした。
「このボディはもう使い物にならん。貴様のボディを我の新しい依り代としよう」
女性と男性が同時に喋っているかのような声を出しながら、悪魔は俺の元へ近づいてくる。
「出来るもんならやってみたら?」
俺は両手を軽く広げ挑発する。
「ほざけ!」
悪魔が叫びなら俺の身体に触れようとするが弾かれてしまい、悪魔は目を見開く。
「憑依すら不可能だと!? あり得ぬ!」
「はい、残念でした。お前みたいな低級悪魔じゃ俺の相手になりませーん。おまけにこの絶音界はもうお前程度の力じゃ破壊はおろか、抜け出す事も不可能でーす」
「低級? 我はハイデーモンだぞ!」
「は? デーモンカイザー位になってから出直せ雑魚」
「デ……デーモンカイザー……だ……と」
ハイデーモンは悪魔の中で下から数えて3番目に位置する種族だ。レッサーデーモン、デーモン、ハイデーモンといった感じ。因みに、デーモンカイザーはデーモン種の中で1番上から2番目に属する。
「お前には聞きたい事があるからな。お前には俺の駒になってもらうぞ」
「フ、フハハハハ! 愚かな! 我が貴様の駒になるだと? 出来る訳がなかろう!」
「いや、手はある。お前悪魔なんだからあんだろ? 真名が。悪魔は真名を知られると知った奴には逆らえなくなるんだよな?」
それを言った途端、悪魔の顔から余裕の表情が消えた。
「に、人間の貴様が何故……我等最大の弱点を……いや! 貴様が我の真名を知っている訳がない!」
「確かに今現在お前の真名なんぞ知らんよ。知らないなら調べればいい」
「な――」
俺は絶句している悪魔を無視し、インベントリの中から人間が悲痛の叫びを上げているかの様な顔が表紙になっている、禍々しい1冊のデカい本を取り出す。
「悪魔事典ネクロノミコン~。よく知ってるだろ? こいつにはお前等悪魔の能力や設定は勿論、真名もぜーんぶ載ってる。ネクロマンサー御用達の1冊だ」
「――その本を寄越せぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
悪魔が叫んだ瞬間、本がひとりで開き表紙の顔が喋り始めた。
『彼ノ者真名ヲ、セーレ。移動ヤ情報収集叉ハ運搬二、長ケタ能力ヲ持チ、瞬キヲスル間二、世界ノ何処ヘデモ運べルト言ワレテイル』
「セーレ、俺の言う事を聞け。俺が新しい主人だ」
セーレの動きがピタリと止まり、一呼吸置いて俺足元へ跪く。
「真名の元に、新たなる我が主の御意のままに」
「良し、お前は何故イクルナに乗り移った?」
「ハッ、情報収集の為で御座います。我の前主が情報を欲しておりました。前主は知識欲の深き者だと聞き及んでおります」
「お前の前の主は何と呼ばれていたんだ?」
「魔王と呼ばれております」
(やっぱ、魔王居るんか……まぁそりゃそうだよな)
「わかった。次の質問だ。エルの母親を毒殺したのはお前か? お前だった場合何故毒殺したのか理由を言え」
「あの女は何故かはわかりませんが、私の正体に勘付いたのです。任務遂行の妨げになると思い毒殺しました。直接殺さず毒殺を選んだのは、じわじわと死んでゆく様を見たかったからであります」
「クソッ垂れな理由だ。流石、悪魔だな。エルが居なくて良かった。居たら間違いなく逆上してお前を殺していただろう」
「恐れ入ります」
「最後の質問だ。イクルナは大丈夫なのか?」
「気絶しているだけです。心配は無用です」
「よし、ではお前に命令する。この世界の神に関しての情報を集めろ。とりあえず今はそれだけだ」
「我が主の御意のままに」
「絶音界を解除すると同時に行け」
俺は再びノイズを呼び出し絶音界を解除するように言う。広がっていた砂嵐の空間に次々とヒビが入り、ガラスが砕ける様な音と共に元の空間が広がりノイズが消え去る。それを追う様にしてセーレの姿も黄緑の炎に撒かれて散布する。
「ふぅ~。終わったか」
「ゲイン!!」
俺の目の前には、目を血走らせて怒るエルの姿がそこにはあった。
俺はこの後、エルに無茶苦茶怒られた。
闘技場の受付嬢は金髪のエルフの男性だった。長い耳に幾つもイヤリングをしている。
「ようこそ! チームパープルの皆さん! こちらから奥に行けばすぐに試合が開始されます! 頑張ってください!」
「あ、ありが……とう」
エルフは俺を無視しエルにだけ握手をすると、左手を広げる。
「こちらから入って奥の昇降機へ乗って下さい。では、ご武運を」
「んじゃ、アーサーは応援よろしく」
「ハイ! 精一杯応援します!」
俺達はアーサーと別れ、奥の昇降機へと乗る。
「あのエルフ、ロリコンだな……。間違いない」
「ん? 何か……言った?」
「いや、別に~」
闘技場の昇降機がゆっくりと上昇し、バトルフィールドへ駆り出され、遂に俺達はジェミニスターライトの2人と対峙する。一方は薄ピンクのドレスアーマーを着込み、もう一方は水色のドレスアーマーを着込んでいる。上半身の甲冑は薔薇の装飾が入っており、胸の形がクッキリとわかる。スカートの部分に鋼鉄の板の様なものが張り付いているように見えるが、舞踏会にあの姿で出ても違和感は感じないだろう。まさに、良いとこのお嬢様といった感じだ。
よく見ると2人とも全く同じ顔立ちに輝かしい金髪、決定的に違うのは、片割れである水色が似付かわしくない紫色の眼帯を左目にしている事だろうか?
薄ピンクはロングストレートが風に揺れているのがわかる。水色の方はロングなのは一緒だがサイドがマカロニの様な特徴的な髪型をしている。ちなみに双方共胸の自己主張がかなり激しい。双方の甲冑は恐らく特注品だろう。特にマカロニの方は控えめに言って爆乳と言って良い。水色のドレスアーマー上部から谷間がはっきりと見えている。
「おい、エル教えてくれ。どっちがアイーナなんだ?」
「胸の谷……間が出て……ない方」
「実にわかりやすい。ありがとう。という事は、あの爆乳がイクルナだな」
俺はエルの方を尻目で見ると、コクッと相槌をうつのが見えた。目を元に戻し正面を見るとアイーナと目が合う。そして一瞬微笑むと、スカートの裾を両手で掴み、小さくお辞儀を俺に向かってしてきた。
「御機嫌よういい天気ですわね。晴れて良かった。しかし、本当にここまで来るとは思いもしませんでした。余程の自信があるのか、馬鹿なのか」
「お前等はギルドで皆と一緒に俺達の試合を見たりしなかったのか?」
俺の質問にアイーナは目をパチクリさる。
「必要ありませんわ。どうせ私達姉妹が勝つのですから」
「お姉様、もうお喋りはその辺で。そろそろ時間です」
聞き覚えのある声が闘技場に響きわたる。
「さぁー! やってまいりました。エキシビションマッチ! 決勝戦にて極東に存在する忍者という摩訶不思議なジョブ、零影を見事討ち破った挑戦者チームパープル! 対するは前回、前々回と連覇中のチームジェミニスターライト! 制限時間無制限エキシビションマッチ試合開始ッ!!」
「お姉様」
「わかっています! イクルナ時間を稼いで下さい!」
アイーナが何やら魔力を貯め、イクルナが手を翳し魔法を放ってきた。
「ダークネス・ハウンド」
イクルナが詠唱すると魔法陣が展開され、ヘドロで出来た犬の様なモンスターが数匹召喚されエルに向かって来た為、俺は聖属性の防御魔法をエルに付属させる。
「ホーリー・プロテクション! エル、お前は上空から支援してくれ」
「わ……かった!」
エルの周りに白く薄っすらとしたバリアする。ダーク・ハウンドがバリアに激突すると飛散し消え去ったの確認し、俺はエルに上空に行くよう指示する。そして、鑑定スキルを無詠唱で発動させ、イクルナのステータスを確認しする。
「なに……? 私のダークネス・ハウンドを掻き消す程の防御魔法だと?」
「爆乳のお嬢さん、あんた面白い奴だなぁ。お礼に俺も面白いもんを見せてやるよ。その前に、とりあえずアイーナお嬢さん何貯めてっか知らんけど、ちょっと大人しくしててもらおうか。グレイプニル」
「何!? キャッ!?」
グレイプニルはウルガイスⅥ式のパッシブスキルだ。地中から人間の背骨のような物が数本飛び出し、アイーナはあっという間に縛られてしまった。
「よし、準備は整ったな」
俺は目を閉じて神経を尖らせ、イクルナに向かって手を翳し詠唱を開始する。
「音と空間の狭間に存在する精霊よ、我が前にその姿を表せ。絶音精霊ノイズ!」
俺が詠唱を完了させると空間に突如ガラスを叩き割ったかのような切れ目が発生し、そこから一体の精霊がゆっくりと現れた。
その見た目は人間の形を保っているが、全身がイカれたVHSの砂嵐の様なもので構成されており、ザーというノイズ音を鳴らしながら俺の前に立つと、ゆっくりと礼をする。
「久しぶりだな。ノイズいきなりで悪いが絶音界を発動してくれ。巻き込む範囲は俺と俺に対峙している2人だ」
『ザー! ザ、ザザ、ザー!』
ノイズが両手を天に向ける。すると、小さな球体を自らの身体から生み出すとそれがドンドン大きくなり、俺とジェミニスターライトの双方を飲み込んでいく。
「ゲイン!!?」
「悪いなエル。初めからこうするつもりだったんだ。お前姉達を殺すかもしれんからな。大丈夫、任せておけ」
驚いて急降下してくるエルを見ながら、俺とスターライトジェミニはノイズの放った砂嵐の空間に飲まれていく。
「さてと、お嬢様方、絶音界は特殊なフィールド魔法みたいなもんだ。外からは一切こちらの姿は見えないし、一切音も聞こえない。これで堂々とお話出来るってもんだ」
俺は、グレイプニルの締め付けを強めると、アイーナを気絶させる。
「なんだ? この……魔法は? 何故我の魔法が発動しない! 答えろ!」
「どうでも良いけどさぁ、とてもお嬢様の口調じゃなくなってるよ? 大丈夫? 爆乳の姉ちゃん。ま、もうわかってるから別に良いんだけどさ。ダークネス・ハウンドは攻撃スキルみたいなもんだが、悪魔やら闇の眷属しか使えない筈だ。お前、悪魔だな? 何でイクルナに取り憑いてんだ?」
「チッ! クソボディめが!」
悪魔が悪態を吐くと眼帯を脱ぎ捨て、隠れていた左目が露わになる。その目玉は全体が真っ黒であり、明らかに人間の目ではない。左目からコールタールの様なドロドロとした黒い涙を流しイクルナの足元に溜まると、そこから艶めかしい黒い下着姿の様な格好をしている悪魔が姿を現す。肌は人間と同じ様だが、頭に2つのデカい角がはえおり、眼球は金色に輝き蛇の様な目付きをしている。紫色の長い髪を弄りながら悪魔は喋りだした。
「このボディはもう使い物にならん。貴様のボディを我の新しい依り代としよう」
女性と男性が同時に喋っているかのような声を出しながら、悪魔は俺の元へ近づいてくる。
「出来るもんならやってみたら?」
俺は両手を軽く広げ挑発する。
「ほざけ!」
悪魔が叫びなら俺の身体に触れようとするが弾かれてしまい、悪魔は目を見開く。
「憑依すら不可能だと!? あり得ぬ!」
「はい、残念でした。お前みたいな低級悪魔じゃ俺の相手になりませーん。おまけにこの絶音界はもうお前程度の力じゃ破壊はおろか、抜け出す事も不可能でーす」
「低級? 我はハイデーモンだぞ!」
「は? デーモンカイザー位になってから出直せ雑魚」
「デ……デーモンカイザー……だ……と」
ハイデーモンは悪魔の中で下から数えて3番目に位置する種族だ。レッサーデーモン、デーモン、ハイデーモンといった感じ。因みに、デーモンカイザーはデーモン種の中で1番上から2番目に属する。
「お前には聞きたい事があるからな。お前には俺の駒になってもらうぞ」
「フ、フハハハハ! 愚かな! 我が貴様の駒になるだと? 出来る訳がなかろう!」
「いや、手はある。お前悪魔なんだからあんだろ? 真名が。悪魔は真名を知られると知った奴には逆らえなくなるんだよな?」
それを言った途端、悪魔の顔から余裕の表情が消えた。
「に、人間の貴様が何故……我等最大の弱点を……いや! 貴様が我の真名を知っている訳がない!」
「確かに今現在お前の真名なんぞ知らんよ。知らないなら調べればいい」
「な――」
俺は絶句している悪魔を無視し、インベントリの中から人間が悲痛の叫びを上げているかの様な顔が表紙になっている、禍々しい1冊のデカい本を取り出す。
「悪魔事典ネクロノミコン~。よく知ってるだろ? こいつにはお前等悪魔の能力や設定は勿論、真名もぜーんぶ載ってる。ネクロマンサー御用達の1冊だ」
「――その本を寄越せぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
悪魔が叫んだ瞬間、本がひとりで開き表紙の顔が喋り始めた。
『彼ノ者真名ヲ、セーレ。移動ヤ情報収集叉ハ運搬二、長ケタ能力ヲ持チ、瞬キヲスル間二、世界ノ何処ヘデモ運べルト言ワレテイル』
「セーレ、俺の言う事を聞け。俺が新しい主人だ」
セーレの動きがピタリと止まり、一呼吸置いて俺足元へ跪く。
「真名の元に、新たなる我が主の御意のままに」
「良し、お前は何故イクルナに乗り移った?」
「ハッ、情報収集の為で御座います。我の前主が情報を欲しておりました。前主は知識欲の深き者だと聞き及んでおります」
「お前の前の主は何と呼ばれていたんだ?」
「魔王と呼ばれております」
(やっぱ、魔王居るんか……まぁそりゃそうだよな)
「わかった。次の質問だ。エルの母親を毒殺したのはお前か? お前だった場合何故毒殺したのか理由を言え」
「あの女は何故かはわかりませんが、私の正体に勘付いたのです。任務遂行の妨げになると思い毒殺しました。直接殺さず毒殺を選んだのは、じわじわと死んでゆく様を見たかったからであります」
「クソッ垂れな理由だ。流石、悪魔だな。エルが居なくて良かった。居たら間違いなく逆上してお前を殺していただろう」
「恐れ入ります」
「最後の質問だ。イクルナは大丈夫なのか?」
「気絶しているだけです。心配は無用です」
「よし、ではお前に命令する。この世界の神に関しての情報を集めろ。とりあえず今はそれだけだ」
「我が主の御意のままに」
「絶音界を解除すると同時に行け」
俺は再びノイズを呼び出し絶音界を解除するように言う。広がっていた砂嵐の空間に次々とヒビが入り、ガラスが砕ける様な音と共に元の空間が広がりノイズが消え去る。それを追う様にしてセーレの姿も黄緑の炎に撒かれて散布する。
「ふぅ~。終わったか」
「ゲイン!!」
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