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第40話 俺、忍者のルーツを知る
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試合終了が実況から宣言され、闘技場にそのまま突っ立っていると足元に魔法陣が現れ、気づくと俺達は控室へと戻っていた。
「わざわざ自分の足で戻らなくて良いのか。なかなか有能じゃないか。でも、こんな所でボヤボヤしている暇じゃない」
至急、俺は零影の元へ行かなくてはならない。その為俺は控室の扉のノブに手をかけドアを引くと、待ってましたとばかりに人が雪崩のように入ってきた。
「妖怪ワッペンむしり!! エキシビジョンマッチ出場おめでとう!」
「お、わざわざありが――うおッ!? 何だ!? あんた達は!?」
「あんたのせいで無一文になっちまった! 金返せ!」
「あ! なんかね、後ろのおじさん達は勝敗でお金を賭けてたんだって!」
俺は応援してくれた少年から出たあまりにも理不尽な言葉に憤慨する。
「なんだそりゃ! 自業自得もいいとこだろうが! お前ら逆恨みも甚しいぞ!」
「何だと!? こんちくしょう! ぶっ殺すぞ!」
「あぁん? 出来るもんならやってみろオラァ!」
場の空気が殺伐とし、一触即発の事態へなったその時、壁の中から見覚えのある手が生えてきたかと思えば、そこからゆっくり零影が這い出てきたのである。
「全く騒がしいのぉ。これお主いつまで待たせる気じゃ? 儂になんぞ聞きたいことがあったんじゃないのか? 幾ら待てども来やせんからこっちからでむいてやったぞ。ん? なんじゃ? その鳩が豆鉄砲を食ったような顔は?」
「お前どっから入ってんだよ!」
「何処って見りゃわかるじゃろ。壁の中を移動してきたんじゃが?」
「おじいさん……ゲインを止めて」
「はぁ、仕方ないの。とっととこっちゃ来い!」
零影の右腕が俺の首を掴むと、そのまま俺とエルを壁の中へ引きずり込んだ。壁の中(?)は真っ暗でどうなっているのかさっぱりわからない。体感で4秒程経った頃、急に周りが明るくなったと思えば俺達はいつの間にか零影達の控室にいた。あまりのことにボーっとしていると、零影が喋り出した為俺は我に返る。
「さてと漸く話が出来るわい。で、儂がどうやって忍の者になったかじゃったな」
「その前に聞きたい。さっきのありゃなんだ?」
「お主達をここまで運んだ術か? あれは影移ノ術極という影においては影に潜み移動し、火においては火に潜み移動する。土においては土に、水においては水に、といった感じにの現象と半同化しつつ移動する技、これが儂の編み出した忍術よ」
「生み出した……技……ね」
正直、あまり驚きはしなかった。この可能性も0ではないと考えていたからだ。やはり、この世界はゲームなどではなく現実なのだと俺はこの時再び強く自覚した。
「話遮って悪かったな爺さん。本題に入ってくれ」
「うむ、我が里全域に伝うておる、ある人物についての伝記に忍の者となる方法が書かれておる。儂の故郷キョウゴクにとある青年がいたとされる。その青年はたいそう体が弱かったらしく、何かとすぐに怪我したり病気になったり散々だったらしい。ある日のこと青年がいつもの様に病気になり一ヶ月床につきずっと夢を見ておったらしい。巨大な魂の塊が人名を叫びながら、自分の中へ入っていくそんな奇っ怪な夢を。そしてある日、目覚めると今までがウソのように元気になり、そればかりか多種多様な忍びの術を会得していたそうじゃ。青年はこの奇妙な出来事と会得していた術全てを書に書き記した後、元の名を捨てその魂の叫びを自らの名とし初代零影となったのじゃ。初代零影が残した伝記を読み解き、解読していく過程そのものこそ忍者となる方法そのものじゃ。伝記を書き記した著者の名は――」
「不知火散華」
「お主!? 何故、初代零影の名を知っておる!?」
「ああ、知っているとも。昨日の事のように思い出せる」
シラヌイ・サンゲとはハガセンにおけるNPCの一体である。師事することで忍者系統のスキルを習得できる。中でもサンゲは最後まで師事する事で、MPの消費が半減する有能パッシブスキル【食い溜め】を習得することが出来る唯一の存在であるため忍者スキーや有能スキルが目当てのプレイヤーはこぞってサンゲの元へ通うのだ。
あと、最後まで師事した特典として白と黒が特徴的なカラーリングの忍装束が手に入る……らしい。
「教えてくれ! シラヌイは今も生きてるのか!?」
「何を馬鹿な! 初代零影が生きておったのは数千年も昔のことよ!」
「そう……か、クソ! 大賢者に聞かなきゃならんことが増えた」
「お主は一体……何を考えておるのだ?」
「さぁね、俺が聞きたい位だよ」
「おっとそうじゃ、我らは初代零影が遭遇したあの現象を御魂返みたまがえりり御魂返りと読んでおる。儂も御魂返りにより零影となった身よ。先代の零影が死ぬとどうやら勝手に選出されるらしい」
俺は零影の台詞に目が点になった。
「そんな重要な情報をサラッと言うな! じゃあ、爺さんが死ぬとまたどっかの誰かさんが御魂返りで零影になるっていうのか?」
「伝記にはそう書いてあったぞ。まぁ忍の者は我らキョウゴク出身者しかおらんからの探すのは容易じゃって」
「じゃあ……もし剣士や魔術師の類が御魂返りにあったら……」
「仮に探し当てるとするならかなりキツイじゃろうて」
「……」
「で、他に聞きたいことははあるかの?」
「いや、もう十分だ。色々ありがとな爺さん」
「いやいや、儂も久々に骨のある奴と戦えて楽しかったぞ。お主どうだ? 忍の者にならぬか? お主ならきっと良い忍の者になれるぞ? それとアヤメを嫁にどうじゃ?」
急に話を振られてアヤメと呼ばれたくのいちは驚いたようだ。ちなみにこのアヤメというくのいちはかなり背が小さい、小柄なエルよりもちいさいのでまだ子供なんじゃないかと思う。
「ちょ!? じっちゃん!? 藪から棒に何いってんの!?」
「い、いや遠慮しとくよ。聞くこと聞いたしお暇させてもらうよ。じゃあな爺さん」
「うむ、そうか。もし第三大陸の極東に来ることがあったら、我が故郷へ来るが良い。丁重にもてなしてやるぞ」
「ああ、覚えとくよ」
余談ではあるが、俺達が控室を出たあと待ち合わせ場所を決めていなかったせいで、アーサーを探す為に闘技場内を駆けずり回る羽目になるのだった。
「わざわざ自分の足で戻らなくて良いのか。なかなか有能じゃないか。でも、こんな所でボヤボヤしている暇じゃない」
至急、俺は零影の元へ行かなくてはならない。その為俺は控室の扉のノブに手をかけドアを引くと、待ってましたとばかりに人が雪崩のように入ってきた。
「妖怪ワッペンむしり!! エキシビジョンマッチ出場おめでとう!」
「お、わざわざありが――うおッ!? 何だ!? あんた達は!?」
「あんたのせいで無一文になっちまった! 金返せ!」
「あ! なんかね、後ろのおじさん達は勝敗でお金を賭けてたんだって!」
俺は応援してくれた少年から出たあまりにも理不尽な言葉に憤慨する。
「なんだそりゃ! 自業自得もいいとこだろうが! お前ら逆恨みも甚しいぞ!」
「何だと!? こんちくしょう! ぶっ殺すぞ!」
「あぁん? 出来るもんならやってみろオラァ!」
場の空気が殺伐とし、一触即発の事態へなったその時、壁の中から見覚えのある手が生えてきたかと思えば、そこからゆっくり零影が這い出てきたのである。
「全く騒がしいのぉ。これお主いつまで待たせる気じゃ? 儂になんぞ聞きたいことがあったんじゃないのか? 幾ら待てども来やせんからこっちからでむいてやったぞ。ん? なんじゃ? その鳩が豆鉄砲を食ったような顔は?」
「お前どっから入ってんだよ!」
「何処って見りゃわかるじゃろ。壁の中を移動してきたんじゃが?」
「おじいさん……ゲインを止めて」
「はぁ、仕方ないの。とっととこっちゃ来い!」
零影の右腕が俺の首を掴むと、そのまま俺とエルを壁の中へ引きずり込んだ。壁の中(?)は真っ暗でどうなっているのかさっぱりわからない。体感で4秒程経った頃、急に周りが明るくなったと思えば俺達はいつの間にか零影達の控室にいた。あまりのことにボーっとしていると、零影が喋り出した為俺は我に返る。
「さてと漸く話が出来るわい。で、儂がどうやって忍の者になったかじゃったな」
「その前に聞きたい。さっきのありゃなんだ?」
「お主達をここまで運んだ術か? あれは影移ノ術極という影においては影に潜み移動し、火においては火に潜み移動する。土においては土に、水においては水に、といった感じにの現象と半同化しつつ移動する技、これが儂の編み出した忍術よ」
「生み出した……技……ね」
正直、あまり驚きはしなかった。この可能性も0ではないと考えていたからだ。やはり、この世界はゲームなどではなく現実なのだと俺はこの時再び強く自覚した。
「話遮って悪かったな爺さん。本題に入ってくれ」
「うむ、我が里全域に伝うておる、ある人物についての伝記に忍の者となる方法が書かれておる。儂の故郷キョウゴクにとある青年がいたとされる。その青年はたいそう体が弱かったらしく、何かとすぐに怪我したり病気になったり散々だったらしい。ある日のこと青年がいつもの様に病気になり一ヶ月床につきずっと夢を見ておったらしい。巨大な魂の塊が人名を叫びながら、自分の中へ入っていくそんな奇っ怪な夢を。そしてある日、目覚めると今までがウソのように元気になり、そればかりか多種多様な忍びの術を会得していたそうじゃ。青年はこの奇妙な出来事と会得していた術全てを書に書き記した後、元の名を捨てその魂の叫びを自らの名とし初代零影となったのじゃ。初代零影が残した伝記を読み解き、解読していく過程そのものこそ忍者となる方法そのものじゃ。伝記を書き記した著者の名は――」
「不知火散華」
「お主!? 何故、初代零影の名を知っておる!?」
「ああ、知っているとも。昨日の事のように思い出せる」
シラヌイ・サンゲとはハガセンにおけるNPCの一体である。師事することで忍者系統のスキルを習得できる。中でもサンゲは最後まで師事する事で、MPの消費が半減する有能パッシブスキル【食い溜め】を習得することが出来る唯一の存在であるため忍者スキーや有能スキルが目当てのプレイヤーはこぞってサンゲの元へ通うのだ。
あと、最後まで師事した特典として白と黒が特徴的なカラーリングの忍装束が手に入る……らしい。
「教えてくれ! シラヌイは今も生きてるのか!?」
「何を馬鹿な! 初代零影が生きておったのは数千年も昔のことよ!」
「そう……か、クソ! 大賢者に聞かなきゃならんことが増えた」
「お主は一体……何を考えておるのだ?」
「さぁね、俺が聞きたい位だよ」
「おっとそうじゃ、我らは初代零影が遭遇したあの現象を御魂返みたまがえりり御魂返りと読んでおる。儂も御魂返りにより零影となった身よ。先代の零影が死ぬとどうやら勝手に選出されるらしい」
俺は零影の台詞に目が点になった。
「そんな重要な情報をサラッと言うな! じゃあ、爺さんが死ぬとまたどっかの誰かさんが御魂返りで零影になるっていうのか?」
「伝記にはそう書いてあったぞ。まぁ忍の者は我らキョウゴク出身者しかおらんからの探すのは容易じゃって」
「じゃあ……もし剣士や魔術師の類が御魂返りにあったら……」
「仮に探し当てるとするならかなりキツイじゃろうて」
「……」
「で、他に聞きたいことははあるかの?」
「いや、もう十分だ。色々ありがとな爺さん」
「いやいや、儂も久々に骨のある奴と戦えて楽しかったぞ。お主どうだ? 忍の者にならぬか? お主ならきっと良い忍の者になれるぞ? それとアヤメを嫁にどうじゃ?」
急に話を振られてアヤメと呼ばれたくのいちは驚いたようだ。ちなみにこのアヤメというくのいちはかなり背が小さい、小柄なエルよりもちいさいのでまだ子供なんじゃないかと思う。
「ちょ!? じっちゃん!? 藪から棒に何いってんの!?」
「い、いや遠慮しとくよ。聞くこと聞いたしお暇させてもらうよ。じゃあな爺さん」
「うむ、そうか。もし第三大陸の極東に来ることがあったら、我が故郷へ来るが良い。丁重にもてなしてやるぞ」
「ああ、覚えとくよ」
余談ではあるが、俺達が控室を出たあと待ち合わせ場所を決めていなかったせいで、アーサーを探す為に闘技場内を駆けずり回る羽目になるのだった。
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