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第37話 俺、ルギームのギルド長とお話しする

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 俺達はギルドの前まで来ていた。

「鬼と出るか蛇と出るか。入るぞ」
「うん」

 俺はギルドのドアノブを回し、中へと入っていく。まだ休憩時間のためか、ギルド内は閑散としていた。しかし冒険者がいない訳ではない。俺とエルを見ると目を反らし、パーティ内で俺達に対する噂話でもしているのか、ヒソヒソとなにやら会話をしている様だった。俺はシェイという名の見知った顔の受付嬢の前まで歩いていく。

「おや? おはようございます。お噂はかねがね。大変頑張っておられるようですね」

 シェイさんはかなり無表情な女性だ。怒ってるのか、笑ってるのか、悲しんでいるのか、表情で窺い知る事ができない。

「その噂っての聞いてみても?」
「勿論でございます。どんなに攻撃しようが罠をはろうが一切を無視し、ワッペンをむしり取っていく事から付いた二つ名は妖怪ワッペンむしり。エル様の二つ名は――」
「ちょっと待って。エルにも二つ名があるんですか?」
「左様にございます。エル様に付けられた二つ名は“死角なき魔術師“ですね」
「なんでエルはそんな格好いい二つ名で、俺は妖怪ワッペンむしりなんだ……」

 シェイさんが左手をゆっくり伸ばす

「左をご覧下さい。雑貨屋が見えますでしょうか?」
「え? うん、子供達がお菓子に群がってんな」
「では、その雑貨屋の隣をご覧下さい。何が見えます?」
「何だありゃ? 映画でもやってたのか?」

 雑貨屋の隣は大きなホールの様になっていて、巨大なスクリーンの様なものが見える。

「映画ではございません。あのスクリーンで、大会参加者の戦闘を見る事が出来るのです。参加者のワッペンの色をスクリーン横にある水晶に念れば、ワッペンと同じ色のチームの戦闘を見る事が可能なのです」
「ま、まさか……それじゃあ――」
「チームパープルの戦闘は大人子供垣根なく大人気の様でした。ゲイン様が鋼鉄のゴーレムを2体召喚した時は、流石の私も驚きました。ゲイン様に戦闘は子供に。エル様の戦闘は大人に人気がございましたね」

 俺の二つ名がどうやって広まったのか、嫌でも理解出来てしまった俺は脱力した。

「ソッスカ、コウエイデス。ホンダイニウツッテモラッテイイスカ?」
「そうですね。ギルド長がお呼びです。こちらから奥へとお進み下さい。私が案内させて頂きます」

 シェイさんがカウンター横へと移動し、小さな扉をロックを解除するとカウンター内へ入れる様になる。見るとカウンターの奥は、長い廊下へと繋がってる様だ。幾つもの扉が、左右均等に配置されているのがわかる。

「付いてきて下さい」

 俺とエルはシェイさんの後に続き、カウンターの中へ入り長い廊下を歩く。そして最奥にある扉へとたどり着く。

「こちらがギルド長の部屋となっております。では」

 俺達を残してシェイさんはカウンターへと戻っていくのだった。

 俺はドアに手を掛けるとゆっくりノブを回しドアを開ける。

「失礼します~。チームパープルのゲインですが呼び出しの件で来ました~」

 バサバサと何かが落ちる音がした。目の前は本がこれでもかというくらい、そこら中に積んである。そんな本だらけの室内から女性の声が響き渡る。

「ごめんなさい。今ちょっと手が話せないの。そこで待ってて?」

 言う通りに待つ事3分後、埃にまみれながら紫のローブにとんがり帽子を付けた青い髪の魔術師が姿を表した。

「ゲホゲホッ!! どうもこんにちは。ルギームのギルド長やってるキシルムよ。妖怪ワッペンむしりさんに、死角なき魔術師さんのお二人ね?」
「あ、ああ。できればその二つ名やめてくれ」
「せっかく子供達が付けてくれた二つ名よ? 光栄に思いなさいな。楽しんでいる証拠よ」
「話ってのは何だ? 俺達は失格か?」
「失格なんてとんでもない! 私は長い事ここでギルド長やってるけど、こんなに皆が楽んで大会を見物していると感じたのは久々だわ。私も大笑いさせて貰ったし。貴方がどんどん参加者のワッペンを強奪していくから、もうほぼ参加者居なくなっちゃったの。大会継続出来ないくらいにね。エルさんも凄いわ! OEWを完璧に使いこなすなんて!」

 リーメルの言う通りやり過ぎだった様だ。
 俺は素直に謝ることにした。

「申し訳ない。やり過ぎたようで」
「諦めるのも手のひとつよ。どうせ5年後また出れば良いだけの話だし。で、貴方達に今後についてなんだけど、次で決勝に挑んで貰うわ。チームブルー極東の国の出身者みたいね。どうやってか知らないけど貴方の魔の手から逃れつつ、ワッペンを集め続けた猛者チームよ」
「へぇ、いや待て。俺の魔の手からって何だ」
「決勝戦は2日後ルギームにある闘技場で行うわ。勝った方が大会連覇中の“ジェミニスターライト“に挑戦権が与えられもし、これにも勝つ事が出来たら、何でもひとつだけ願いが叶えられるわ。頑張ってね」
「あ、そう。わかったよ」
「話はこれで全部よ。何か聞きたい事ある?」
「長い事ギルド長やってるっていう割には若く見えるんだが、あんた歳幾つなんだ?」

 ギルド長の見た目はどう見ても20代後半のお姉さんにしか見えない。不自然な点と言えば、歳の割に少し化粧が濃い位だろうか?

「フフッ、乙女の秘密よ」
「あっ、……もういいわかった」
「そう、じゃゆっくり出ていってね。本が崩れるかもしれないから」

 俺達はゆっくりギルド長の部屋から退室した。
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