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第26話 俺、魔法大国ルギームの入国審査を受ける

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 魔法大国ルギームの入り口であろう大門には長蛇の列が出来ていた。入る為には簡単な審査が必要なのか、レッサーゴーレムが直立しており、魔法スキルが撃てない者、撃ててもレッサーゴーレムに傷が付けれない者はルギームに入居者入国出来ない様だ。今も魔法が撃てなかった為にローブを羽織ったパーティが門番に追い出されてしまった。不服だったのか抗議している様だ。

「アルテミス、あいつがどんな抗議しているのか知りたい。聴力を拡張してくれ」
「わかったわ。ちょっと待って頂戴」

 すぐさま、抗議している男と門番の声が耳に届く。

「クソ! 何だってんだ! 良いじゃねぇかたかが魔法が使えないだけで、何で入国しちゃいけねぇんだよ!」
「ここを何処だと思っている? 魔法大国ルギームだぞ? レッサーゴーレムにすら傷を付けられぬ愚か者を通すわけなかろうが。とっとと消え失せろ。まだまだ入国審査は続くのだ。貴様等の様なゴミが我が国に入る事は、大賢者様の顔に泥を塗る事に等しい。それに貴様は魔術師ではなかろうが! くずめ」
「とんでもねぇな、先頭のパーティが審査に落ちたみたいだが、門番にボロクソに言われてるぞ。審査は魔法スキルでレッサーゴーレムを傷つけるか破壊すればいいみたいだな。魔法が使えなければ即門前払いかよ」

 こんな人権侵害も甚だしい国が何故存続できているのか。俺は疑問に思った為、エルの方を見ると察してくれたのか、目が合い、エルが口を開く。

「ルギームにある……商店には、大賢者様がお広めになった、ありと……あらゆるスキル……のスクロール、その写しが売られてるの。だから、強力なスキルを求めて……ここには絶えず人が来る……の。ルギームでは、魔法こそ、命の次に大切……だから」
「強力なスキル覚えられるのが、ここしかないから横暴な態度でも許されるのか? とことん狂ってやがるな」

 アーサーが俺達の会話を聞き、顔面蒼白になっている。アーサーは魔法が使えるがどれも初期のものである為、このままでは置いてきぼりを食う事が自分でわかっているのだろう。ダラダラと冷や汗を流していた。

「ど……どどどどどうしましょうお師匠様! 僕レッサーゴーレムに傷を付けれる程威力のある魔法なんて一切持っていません!」

 俺には既に考えがあった為それを話そうとしたところ、ニヤニヤしながらアルテミスがアーサーへ語りかける。

「仕方がないわぁ、アーサーちゃんはお留守番ねぇ」

 みるみる、アーサーに目に涙が溜まっていく。

「やっぱりショタって最高ねぇ。食べちゃいたい」
「あのさぁ……俺の身体で気色悪い事言うのやめろって! それにアーサーが可哀そうだろ! 大丈夫だ! アーサー俺に任せろ。いい考えがある」
「ヤダァンもう! ちょっと、意地悪しただけじゃない! ごめんなさいネ? 機嫌直してアーサーちゃん」

 アーサーは目をこすり、いつもの様に元気良く答える。

「はい! 大丈夫です。アルテミスさん! お師匠、考えというのは?」
「俺とお前が初対面した時に、俺にぶちかました魔法があるだろ? 最悪それでいけ。絶対一緒に門潜らせてやるから」
「ファイヤーブラストの事ですか? い……いや、しかしあれは……」

 俺はアーサーの肩に手を置き、目線を合わせる。

「師匠を信じろ。任せておけ」
「ハイ!」

 そうこうしているうちにドンドン列は消化されていき、遂に俺達の順番となった。
 入ろうとした瞬間、俺達は門番であろう深々とローブを羽織る魔術師に呼び止められる。

「魔法大国ルギームへ何かようか? ここ最近、我が魔法大国ルギームに職業を偽り、不法に入国する輩が多いのだ。入国したければ簡単な審査を受けよ」

門番は舐め回す様に俺達3人をジロジロと見ると、俺の目の前で止まる。

「何だ? 貴様のその姿は? 貴様騎士ではないのか?」
「は? 俺のどこが騎士なんだ? どこからどう見ても魔術師だろう? それとも何か? お前は人を見た目で判断するのか?」
「鋼鉄に身を包む魔術師がいて溜まるか! よし、そこまで言うならまず貴様からだ! 今からレッサーゴーレムを出す! 1人ずつ魔法のみで傷を付けるか、もしくは破壊してみせよ! 出来たら入国する事を許可する! 使用するのは攻撃魔法のみだ! その他の動作をした瞬間に審査は不合格! パーティ全員だ! では、始め!」

俺は的であるレッサーゴーレムに手をかざし、詠唱を開始する。

「……偉大なる風の精霊ウィンダムよ。眼前の敵を排除せしめんがため、その力を我が手中へ集め、解き放て! ウィンダム・ボム!」

 小さな風の塊が俺の手から離れていき、レッサーゴーレムと接触すると、内部に圧縮されていた幾千万ものかまいたちがレッサーゴーレムを飲み込む。暫くして、納まるとゴーレムは跡形もなくなり、立っていた場所には、緑色の美しい妖精が浮いていた。背中に付いた4枚の羽はうっすらと虹色に輝いていて、パタパタと動かし、俺に近づき、顔にキスをするとクスクス笑いながら、妖精は消えていった。

「い……今のは?」
「で、どうなんだ? 破壊したぞ? 俺は合格か? 次は誰で行くんだ?」
「3人共い……行っていい。行っていいからさっきのあれは何なのだ! 教えてくれ!」

 俺に突っかかってきた魔術師が半狂乱になりながら、俺に請うてくる。

「お前等の敬愛する大賢者様に、教えて貰えばいいんじゃないか?」
「なッ……」

 俺は皆に見えない様に門番の胸ぐらを掴み、顔を近づける。

「おい? 良いか、よく聞け? 大賢者様だろうが何だろうが知らんが、人を見た目で判断するのだけはやめといた方が良いぞ? あと、魔法が使えないからって門前払いするのもやめろ。お前等のそういう態度こそ、大賢者様の顔に泥を塗ってるって事に気づけ」

 俺は胸ぐらを掴んでいた手を緩めると門番はへたり込んでしまった。

「じゃ、通らせてもらうぞ? 他の門番達にも言っとけよ!」


 こうしてようやく、俺達は魔法大国ルギームへと入国したのだった。

 余談だが、この後少しだけ入国審査が緩くなったらしい。
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