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第22話 アーサー、殺戮マシーンと化す

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 暗い洞窟内を永劫の探求者の面々をバックに俺とアーサーが先行し、29階層辺りまで来ている。

 通常別のパーティやギルドと組んでダンジョン攻略する場合、レベルやジョブの差異がある為、なるべく人数の多いパーティを先行させるのだが、俺にその必要は皆無だしアーサーのレベリングやスキルの使い心地などを確認したい為、独断専行させて貰っている。

 敵を倒すのは基本アーサーに任せるようと思っているので、俺はアーサーの少し後ろで歩いてる。

「あの、聞きたいことがあるんだけど良い?」

 後ろから呼ばれたので、俺がふり向くとパツキンストレートのニーピアと呼ばれていた女性が俺のすぐそばに来ていた。

「どうした? 何か問題でもあったか?」
「何故、貴方達はカンテラも光源魔法もなしに先行できるのです? 死にたいのですか?」

 ダンジョンによっては松明などが初めから一定間隔で設置されている事もある。だが、そういう場合は長い年月が経った所謂、高レベルダンジョンのみだ。高レベルのダンジョンには罠や松明が自動的に設置され、通常モンスターが突然変異を起こした亜種やユニークモンスターがリポップする様になる。
ハガセンでの高レベルダンジョンの概要には、ダンジョン内で死んだモンスターや冒険者達の魂や肉体を吸収し力と知識を蓄えた為に、通常では考えられない現象が起こると書かれている。

 このダンジョンに光源はおろか罠など一切ない為、出来たばかりの若いダンジョンである事がわかる。

 俺にはネメシスが、気を利かせて暗視機能を自動的に起動させているから光源など必要ないし、アーサーにも超感覚がある為、同じく不要だった。

「俺とアーサーは長い事このダンジョンで訓練をやってたからな。目が慣れてるんだよ」
 「そんなむちゃくちゃな! それによろしいのですか? お連れの方1人でどんどん先へ行ってしまている様ですが?」

 通常なら彼女の言う通りである。本来ならあり得ないことだろう。しかし、アーサーは俺との訓練という名のパワーレベリングにより既に40レベルは超えている筈だ。それにもまして、【魔剣キクリヒメの慟哭】のパッシブスキルによる体力回復と超感覚を併用する事によって彼は今、一種の殺戮マシーン化している。今も凄まじいスピードを持ってポップしているゴブリンを駆逐している。仮に矢が当たろうが傷が増えようが怯みもせず、一切の躊躇なく剣を振るうアーサー。敵にとっては悪夢以外の何者でもないだろう。

「大丈夫大丈夫ヘーキヘーキ。な! アーサー!」

 俺はアーサーに呼びかける。すると殺戮行為を絶えず繰り返していたアーサーが動きを一瞬止め、こちらへいつものニコニコ笑顔で走りながら近づいて来る。全身をゴブリンの血で汚し、魔剣の青と赤の入り混じった刀身が鈍い光を放ちつつ、鞘に付いている目がいつもより血走って見える。それを縦に振りまわしながら。見る人によってはホラー映画のワンシーンに見えるだろうなと俺は思った。

「お師匠様! 何でしょうか?」
「調子はどうだ?気になる所はあるか?」

 アーサーはニコニコしながら答える。

「いえ、全く問題ありません! このまま最下層まで先行するつもりです!」
「うん。良いぞ、その調子だ。どんどん敵を倒せ。倒せば倒すほど良いからな。剣を振り続けろ、そして、超感覚を発動し続けるんだ。で、何の話だっけ? 俺達が何故カンテラもなしに何故先行できるのかだったか」

 俺はニーピアへ話をふる。見るとアーサーを見て目を白黒とさせていた。今アーサーの姿はゴブリンの血で体中血だらけでなのだ。それが気になったのだろうと俺は思いアーサーの汚れを落とす為、クリーンを起動させる。クリーンは汚れを落とす為だけのどのジョブも使える簡単な魔法様なものだ。すると、ニーピアは口を開いた。

「い……いえ、もう良いです。気をつけて下さいよ!」
「はい! わざわざ、ありがとうございます!」

 アーサーは元気よくお礼を言うと、ニーピアは会釈しパーティへと戻っていった。

「このまま一気に最下層までイクゾー!」

 俺は気合いを入れるとアーサーは再び殺戮マシーンへと、戻り剣を振り回しダンジョンを駆けて行く、俺はそれを見ながら後ろに続くのだった。
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