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第149話 俺、アッシーに勤しむ
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今まで着装していた外格をキャストオフし、扉の横へいるように顎を軽くしゃくりあげる。
「ダーリンおきばりやす」
「おう、まー軽くな。んじゃあ始めっか。本当は色々と下準備が必要なんだが巻きでいく」
まず、インベントリからオレンジに輝く液体が入ったスプレーを取り出し、バラバラになったパーツに吹きかけていく。
『ちょ、ちょっと何この液体? すっごいネバネバするんだけど』
「まずはお前の機体にへばり付いた苔を全部落とす。スカベンジャースライムを液体状にしたもんだ」
『スカベンジャースライム!? それって魔物の排泄物食べて増殖するやつ!?』
「そうだ。こいつ等の殺菌作用と分解酵素は強力だぞ? ドラゴンの歯の周りにある人間の喰いカスを綺麗に分解しちまう位なんだ」
『へ、へぇそうなんだ……。これフレームとか大丈夫なの?』
「大丈夫だ、こいつらは掃除屋の名を持つスライムだぞ? 余計なものは食わん。どうしても取れない汚れがついた時によく使ってた」
俺は4回指を鳴らす。
「俺の精霊神達よ! 顕現しろ!」
赤、青、緑、茶色の光を放つ球体が1つずつ俺の周りに姿を表した。赤はヘルイフリート、青はウンディーネ、緑はウィズダム、そして茶色の球体からは水晶の王冠をかぶったイタチが現れる。こいつはガイアノーム。土を司る精霊神だ。
「よし、まずガイアノーム、作業台の作成。ウィズダムは空調操作。ウンディーネは空間の湿度を上げろ。ヘルイフリートは暫くしたらスカベンジャースライムの後処理な」
俺はインベントリからタバコを1本取り出す。俺の肩に乗る様にして現れたヘルイフリートが即座に火を着けてくれる。
「サンキュ」
息を吸い上げ、一気に口内に貯めた煙を吐き出す。煙はウィズダムの操作した気流で窓の外へと流れていく。
地面を足でタップし埃が舞い上がらないのを確認。
「ガイアノーム作業台を作成しろ」
彼が円を描く様に部屋の周りを走りだすと黄色い魔法陣が床に描かれ、俺の目の前に土でできた長い机が、魔法陣からゆっくりと現れた。
バラバラになったボディや頭、腕、脚なんかを台の上に載せていく。
「ヘルイフリート。スライムを燃やせ」
オレンジ色の粘着物質に火がつくと、ビーディのパーツにまんべんなくついたスライムが一気に固まり、それを引き剥がすと面白い様に汚れや塗装を巻き込み取れていく。例の苔の様な物体も綺麗に剥がれ落ち、今の彼はデフォルトの鋼鉄製のフレームが完全に顕となった
『うっわ何これすげぇ!』
「だから言ったろ? 強力だって?」
俺はしばらく同じ工程を繰り返し、全てのパーツのスライムを引き剥がしていく。
塗装を剥がしたのち、スライムをかき集め、精霊達の方へ放り投げる。ヘルイフリートとガイアノームがゴミと化したスライムをむしゃむしゃと食べ始めた。
「ま、まさか精霊神達をこんな使い方するとは……」
アルジャ・岩本が俺の隣へ来ていた。
「この環境を作るが為だけに俺は精霊術を覚えたんだぞ。そもそもデフォの仕様がクソ過ぎるのが悪いんだろうが」
「ユーザーインターフェースを担当したのは僕じゃないからね。僕に文句言われても困るよ。ねー、一体どこでなにやってたんだい」
「しつこいなお前……。あっそうだこれ成分分析してくれ」
俺は陽炎のボディに付着した雪を彼に手渡す。
「えっ? この雪をかい?」
「あぁ……どうやら雪の結晶の中に何やら入ってるらしい」
「いいよ。ところであのパーツ類どうするんだい?」
「仮組みして軽く調べたらカラーリング変更して、まぁあとはオーバーホールってところかな」
「……なんだい? その仮組みってのは?」
「ハァ? 仮組みってのはなぁ。説明すんのだるいわ。まぁ動作確認みたいなもんだ。おい、ビーディ。一度元に戻れ」
「じゃあ僕はこの雪を解析してみるよ」
そう言って彼は俺から離れて机に座り込んだ。
よし、雪の件はアルジャ・岩本に任せて俺は俺の仕事を続けよう。
パーツが宙に浮き、バラバラだったビーディのボディが元の姿に戻っていく。
『気のせいだろうけど、躰が軽くなった感じがする』
彼の周りを一周し違和感を覚えたところを指摘していく。
「各パーツのフレームの溝にゴミが付いてるし指の関節部分の動作遅延がちょっとなぁ」
『細かいなぁ。見た目とかどうでいいし銃使って血みたいからロボット選んだ訳だし。あっボディカラーなんだけど赤はやめてね。それ以外だったら好きにしてくれていいよ』
「お前ロボット選んだのにアセンに興味ないっておかしいだろ」
『いや、俺は銃で人撃ちたいからロボット選んだんだけど』
「ロボットは男の浪漫。ハガセンって顔以外は基本的にデザイン任意で変更とかできんけど、ロボットだけはアッセンブリーの楽しみがある唯一のジョブだぞお前。アッシーしてなんぼやぞ」
『いやどっちかというと俺はカエルの解剖とかの方が――』
「あーもうわかった。|ちょっと面貸せ面」
俺は彼から頭を外し、地面に横向けに置く。
『貸せって言った癖に自分から取っていくのか……』
「よし……。こんくらいか」
『え、何やるの? ま、まさか』
俺は角を真ん中より気持ち上辺りに足を置き、思いっきり全体重をかける。
彼の長ったらしい角の片割れを拾いあげ、作業台の上に置く。
『ちょっとーッ! 俺の角へし折ったッ!』
「いや、左右非対称のもの見ると何故かイラつくからつい。いいだろ綺麗に削ってきっちり左右対称にしてやるから」
『うわ~もう最悪だよ~』
「お前さっき見た目どうでもいいつっただろ」
『これは戦利品なの! こいつ着けてた忍者殺すのに半年掛かったのに! ぶっ壊すとかマジ最悪だよ~』
「ふーん。まぁいいじゃん。かっこよく仕上げてやるからさ。速攻終わらせるから絶対動くなよ。1フレームでも動いたら手元狂うから」
俺は彼に向かって手を翳す。
「タイムハイアクセラレーション!」
この魔法は効果範囲内に於ける、物理的要素および空間的要素の両方を加速させる魔法である。
全ての動作が超加速された俺は台に置かれた折れた角を手にし、折れた部分に人差し指をあてて削りに入る。この状態の俺の指は謂わば紙やすりと相違ない研磨力を持つ。指の摩擦と熱でおられた平坦になっている部分が見違える様に、程よいサイズの一角となっていく。
あとはフェイスアタッチメントのもう片方に折れた方の角を均等な位置に設置し、火の魔法を無詠唱で周りを溶接したら完成だ。
折れた角の調整を終えたら、次は顔面の挿げ替え作業だ。今現在、彼のヘッドパーツはデフォルトの顔面に発光パーツを丸く削り目にはめた非常に簡素なものだ。
俺はインベントリを開きロボットパーツの中から未使用のヘッドパーツを選択する。
白を基調とした髑髏の形をした物を選択。
発光パーツを目の空洞にはめ込むが、入りきらない為、このパーツの採用を取りやめ、代わりに微弱な衝撃や圧力を加えると発光する鉱石を使用。
次に、両手足の指を取り外し、俺の愛用しているダマスカス鋼を削って作った指をはめ込む。
これでグリップ力が大幅に増加し動作の遅延が少なくなる。
あとは今の歪なカラーリングを白に統一するべく、開かれたインベントリの別のタブを開き、全塗装で白を選んだら、関節部分を黒に塗り替えて一応の終了。
タイムハイアクセラレーションを解き、仕上がりを見る。
「よし、まぁ突貫工事だがこんなもんだろう」
『うっわ白! 顔面なんだこれ!?』
俺はインベントリから手鏡を取り出し、彼に手渡す。
「どうよ?」
『うっわ髑髏みたいなフェイスデザインは良いけど角がすっげぇ短くなってるよ……』
「般若のお面みたいでこっちの方がかっこいいだろうが」
『うーん……』
「あと指ダマスカス鋼に変えといたからな」
『あー、確かグリップ力が上がるだっけ? これは素直に嬉しい。加工難易度が高すぎて俺じゃこんな柔らかい粘土みたいな鉱石錬成できないんだよね。白かぁ。関節や首は黒なんだね。まぁ色はどうでもいいや。サンキュー』
「動作の遅延は確認しなくていいのか」
『銃構えてどうせ撃つだけだし別にいいよ』
「あっそ。あー終わった終わった。お前らご苦労。戻っていいぞ」
俺の周りが一斉に俺の目の前にからいなくなり、土塊の作業も形が崩れていき、大量の砂だけが残された。
俺はクリーンを起動し、後始末をしたら窓に向かいタバコを生成し一服煽った。
そういや猫どうしてるかな……。ブレインジャックするか。その為のエージェントだしな。
俺は目を閉じ、あいつの顔を思い出す。
すると、目の前に3匹の黒、白茶色の子猫、その後ろに二足歩行の三毛猫の姿が映った。三毛猫は茶色と黒と白の髪色だ。
狭苦しい鉄製の球体の様な空間に、寄り添う様に5匹が包まっているのがわかる。
「あんたもうコインがないニャン。どうするんだニャン?」
「だ、大丈夫だにゃプニル! 心配するにゃ! オレっちに任せとくにゃ!」
「とーちゃんお腹減ったにゃ~」
「ご飯まだにゃ~?」
「かーちゃんオシッコ~」
「任せるにゃ! オレっちは最強だにゃ! すぐに」
俺はブレインジャックを解き前を向いた。
「あ……あいつ妻子持ちだったのか……」
俺はタバコを窓に吐き捨て、エスカにこっちに来るように催促する。
「ハイお兄様。なんでしょうか?」
「お前剣の調子はどうなんだ?」
「いえ、まだ一度も抜いておりません」
「そうか。ちょっと一緒にハンティングに行くか」
「お兄様と一緒に……是非! 何処へだろうとお供いたします」
「よっしゃ決定~、じゃあ俺についてこい」
「はいお兄様」
俺は外へ行こうと窓から離れ、ドアへ近づくと後ろでもう一つの要件が頭をよぎった為、椅子に座った彼の方を向く。
「そうだ、アルジャ・岩本言い忘れた事があった」
「なんだい? まだ解析なら済んでないよ」
「外に行ってる時にⅩ式に出会ったぞ」
それを行った瞬間彼は椅子から立ち上がる。
「なん……だって? 咒式がここに?」
今まで見たことない表情をしながら、彼は俺の顔を凝視したままフリーズするのだった。
「ダーリンおきばりやす」
「おう、まー軽くな。んじゃあ始めっか。本当は色々と下準備が必要なんだが巻きでいく」
まず、インベントリからオレンジに輝く液体が入ったスプレーを取り出し、バラバラになったパーツに吹きかけていく。
『ちょ、ちょっと何この液体? すっごいネバネバするんだけど』
「まずはお前の機体にへばり付いた苔を全部落とす。スカベンジャースライムを液体状にしたもんだ」
『スカベンジャースライム!? それって魔物の排泄物食べて増殖するやつ!?』
「そうだ。こいつ等の殺菌作用と分解酵素は強力だぞ? ドラゴンの歯の周りにある人間の喰いカスを綺麗に分解しちまう位なんだ」
『へ、へぇそうなんだ……。これフレームとか大丈夫なの?』
「大丈夫だ、こいつらは掃除屋の名を持つスライムだぞ? 余計なものは食わん。どうしても取れない汚れがついた時によく使ってた」
俺は4回指を鳴らす。
「俺の精霊神達よ! 顕現しろ!」
赤、青、緑、茶色の光を放つ球体が1つずつ俺の周りに姿を表した。赤はヘルイフリート、青はウンディーネ、緑はウィズダム、そして茶色の球体からは水晶の王冠をかぶったイタチが現れる。こいつはガイアノーム。土を司る精霊神だ。
「よし、まずガイアノーム、作業台の作成。ウィズダムは空調操作。ウンディーネは空間の湿度を上げろ。ヘルイフリートは暫くしたらスカベンジャースライムの後処理な」
俺はインベントリからタバコを1本取り出す。俺の肩に乗る様にして現れたヘルイフリートが即座に火を着けてくれる。
「サンキュ」
息を吸い上げ、一気に口内に貯めた煙を吐き出す。煙はウィズダムの操作した気流で窓の外へと流れていく。
地面を足でタップし埃が舞い上がらないのを確認。
「ガイアノーム作業台を作成しろ」
彼が円を描く様に部屋の周りを走りだすと黄色い魔法陣が床に描かれ、俺の目の前に土でできた長い机が、魔法陣からゆっくりと現れた。
バラバラになったボディや頭、腕、脚なんかを台の上に載せていく。
「ヘルイフリート。スライムを燃やせ」
オレンジ色の粘着物質に火がつくと、ビーディのパーツにまんべんなくついたスライムが一気に固まり、それを引き剥がすと面白い様に汚れや塗装を巻き込み取れていく。例の苔の様な物体も綺麗に剥がれ落ち、今の彼はデフォルトの鋼鉄製のフレームが完全に顕となった
『うっわ何これすげぇ!』
「だから言ったろ? 強力だって?」
俺はしばらく同じ工程を繰り返し、全てのパーツのスライムを引き剥がしていく。
塗装を剥がしたのち、スライムをかき集め、精霊達の方へ放り投げる。ヘルイフリートとガイアノームがゴミと化したスライムをむしゃむしゃと食べ始めた。
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「この環境を作るが為だけに俺は精霊術を覚えたんだぞ。そもそもデフォの仕様がクソ過ぎるのが悪いんだろうが」
「ユーザーインターフェースを担当したのは僕じゃないからね。僕に文句言われても困るよ。ねー、一体どこでなにやってたんだい」
「しつこいなお前……。あっそうだこれ成分分析してくれ」
俺は陽炎のボディに付着した雪を彼に手渡す。
「えっ? この雪をかい?」
「あぁ……どうやら雪の結晶の中に何やら入ってるらしい」
「いいよ。ところであのパーツ類どうするんだい?」
「仮組みして軽く調べたらカラーリング変更して、まぁあとはオーバーホールってところかな」
「……なんだい? その仮組みってのは?」
「ハァ? 仮組みってのはなぁ。説明すんのだるいわ。まぁ動作確認みたいなもんだ。おい、ビーディ。一度元に戻れ」
「じゃあ僕はこの雪を解析してみるよ」
そう言って彼は俺から離れて机に座り込んだ。
よし、雪の件はアルジャ・岩本に任せて俺は俺の仕事を続けよう。
パーツが宙に浮き、バラバラだったビーディのボディが元の姿に戻っていく。
『気のせいだろうけど、躰が軽くなった感じがする』
彼の周りを一周し違和感を覚えたところを指摘していく。
「各パーツのフレームの溝にゴミが付いてるし指の関節部分の動作遅延がちょっとなぁ」
『細かいなぁ。見た目とかどうでいいし銃使って血みたいからロボット選んだ訳だし。あっボディカラーなんだけど赤はやめてね。それ以外だったら好きにしてくれていいよ』
「お前ロボット選んだのにアセンに興味ないっておかしいだろ」
『いや、俺は銃で人撃ちたいからロボット選んだんだけど』
「ロボットは男の浪漫。ハガセンって顔以外は基本的にデザイン任意で変更とかできんけど、ロボットだけはアッセンブリーの楽しみがある唯一のジョブだぞお前。アッシーしてなんぼやぞ」
『いやどっちかというと俺はカエルの解剖とかの方が――』
「あーもうわかった。|ちょっと面貸せ面」
俺は彼から頭を外し、地面に横向けに置く。
『貸せって言った癖に自分から取っていくのか……』
「よし……。こんくらいか」
『え、何やるの? ま、まさか』
俺は角を真ん中より気持ち上辺りに足を置き、思いっきり全体重をかける。
彼の長ったらしい角の片割れを拾いあげ、作業台の上に置く。
『ちょっとーッ! 俺の角へし折ったッ!』
「いや、左右非対称のもの見ると何故かイラつくからつい。いいだろ綺麗に削ってきっちり左右対称にしてやるから」
『うわ~もう最悪だよ~』
「お前さっき見た目どうでもいいつっただろ」
『これは戦利品なの! こいつ着けてた忍者殺すのに半年掛かったのに! ぶっ壊すとかマジ最悪だよ~』
「ふーん。まぁいいじゃん。かっこよく仕上げてやるからさ。速攻終わらせるから絶対動くなよ。1フレームでも動いたら手元狂うから」
俺は彼に向かって手を翳す。
「タイムハイアクセラレーション!」
この魔法は効果範囲内に於ける、物理的要素および空間的要素の両方を加速させる魔法である。
全ての動作が超加速された俺は台に置かれた折れた角を手にし、折れた部分に人差し指をあてて削りに入る。この状態の俺の指は謂わば紙やすりと相違ない研磨力を持つ。指の摩擦と熱でおられた平坦になっている部分が見違える様に、程よいサイズの一角となっていく。
あとはフェイスアタッチメントのもう片方に折れた方の角を均等な位置に設置し、火の魔法を無詠唱で周りを溶接したら完成だ。
折れた角の調整を終えたら、次は顔面の挿げ替え作業だ。今現在、彼のヘッドパーツはデフォルトの顔面に発光パーツを丸く削り目にはめた非常に簡素なものだ。
俺はインベントリを開きロボットパーツの中から未使用のヘッドパーツを選択する。
白を基調とした髑髏の形をした物を選択。
発光パーツを目の空洞にはめ込むが、入りきらない為、このパーツの採用を取りやめ、代わりに微弱な衝撃や圧力を加えると発光する鉱石を使用。
次に、両手足の指を取り外し、俺の愛用しているダマスカス鋼を削って作った指をはめ込む。
これでグリップ力が大幅に増加し動作の遅延が少なくなる。
あとは今の歪なカラーリングを白に統一するべく、開かれたインベントリの別のタブを開き、全塗装で白を選んだら、関節部分を黒に塗り替えて一応の終了。
タイムハイアクセラレーションを解き、仕上がりを見る。
「よし、まぁ突貫工事だがこんなもんだろう」
『うっわ白! 顔面なんだこれ!?』
俺はインベントリから手鏡を取り出し、彼に手渡す。
「どうよ?」
『うっわ髑髏みたいなフェイスデザインは良いけど角がすっげぇ短くなってるよ……』
「般若のお面みたいでこっちの方がかっこいいだろうが」
『うーん……』
「あと指ダマスカス鋼に変えといたからな」
『あー、確かグリップ力が上がるだっけ? これは素直に嬉しい。加工難易度が高すぎて俺じゃこんな柔らかい粘土みたいな鉱石錬成できないんだよね。白かぁ。関節や首は黒なんだね。まぁ色はどうでもいいや。サンキュー』
「動作の遅延は確認しなくていいのか」
『銃構えてどうせ撃つだけだし別にいいよ』
「あっそ。あー終わった終わった。お前らご苦労。戻っていいぞ」
俺の周りが一斉に俺の目の前にからいなくなり、土塊の作業も形が崩れていき、大量の砂だけが残された。
俺はクリーンを起動し、後始末をしたら窓に向かいタバコを生成し一服煽った。
そういや猫どうしてるかな……。ブレインジャックするか。その為のエージェントだしな。
俺は目を閉じ、あいつの顔を思い出す。
すると、目の前に3匹の黒、白茶色の子猫、その後ろに二足歩行の三毛猫の姿が映った。三毛猫は茶色と黒と白の髪色だ。
狭苦しい鉄製の球体の様な空間に、寄り添う様に5匹が包まっているのがわかる。
「あんたもうコインがないニャン。どうするんだニャン?」
「だ、大丈夫だにゃプニル! 心配するにゃ! オレっちに任せとくにゃ!」
「とーちゃんお腹減ったにゃ~」
「ご飯まだにゃ~?」
「かーちゃんオシッコ~」
「任せるにゃ! オレっちは最強だにゃ! すぐに」
俺はブレインジャックを解き前を向いた。
「あ……あいつ妻子持ちだったのか……」
俺はタバコを窓に吐き捨て、エスカにこっちに来るように催促する。
「ハイお兄様。なんでしょうか?」
「お前剣の調子はどうなんだ?」
「いえ、まだ一度も抜いておりません」
「そうか。ちょっと一緒にハンティングに行くか」
「お兄様と一緒に……是非! 何処へだろうとお供いたします」
「よっしゃ決定~、じゃあ俺についてこい」
「はいお兄様」
俺は外へ行こうと窓から離れ、ドアへ近づくと後ろでもう一つの要件が頭をよぎった為、椅子に座った彼の方を向く。
「そうだ、アルジャ・岩本言い忘れた事があった」
「なんだい? まだ解析なら済んでないよ」
「外に行ってる時にⅩ式に出会ったぞ」
それを行った瞬間彼は椅子から立ち上がる。
「なん……だって? 咒式がここに?」
今まで見たことない表情をしながら、彼は俺の顔を凝視したままフリーズするのだった。
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