アーマード勇者育成記 産業革命遺産チート! 世界観ガン無視完全無敵の俺が無双する件 剣と魔法?よろしいならばこちらは強化外骨格だ。

からくり8

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148話 俺、ビーディの隠された一面を垣間見る

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 俺は行き交う獣人達を無視しマップを起動させ、宿屋の位置を確認する。

「うん……。よし道なりへ真っ直ぐか。ビーディ俺についてこい」
『りょ』

 俺はエスカをお姫様だっこしたまま歩き出した。

『前見づらくない?』
「別に」
『ふーん。ねぇ、見抜き・・・した?』
「する訳ねーだろ。つーか……する必要がねぇし。どうせ夜になったら……」

 そうだ。エル達の前でするはめになるんじゃねこれ? まずい……これはまずい……。でもどうする事もできないんじゃないのか……? 発情したエスカを止める術がない。どうしたらいいのこれ……。

『ねぇ、聞いてる?』
「あ? あぁ、悪い。聞いてなかった」
『ねぇここってゲームじゃなくて現実の世界なんだよね? GMとかいないんだよね? 18禁行為オールオッケーなの?』
「あぁ……多分な」
『マ? パラダイスじゃん』
「お前なぁ……」

 ――刹那、俺達の横を通り過ぎようとしていた鴨の鳥人が、俺めがけて何かを投げつけてきた。

 いかん。一瞬反応が遅れた。
 俺は抱きかかえた彼女を守る為、背中を向ける。

『なになに急に。けんちゃん鴨に喧嘩売られてんの?』

 見ると長細い針の様な物をビーディが掴んでいた。

『なにこれ? 毒針?』
「チッ! 失敗か!」
『お前さ? 誰よ?』
「へっこの都市で女をのこのこ担いで歩いてる奴なんざいいカモよ!」
『いや鴨はお前だろ! やべー俺モンスターと喋ってるよ』
「お、俺はモンスターじゃ……!? なっなんだ!? か、躰がうごか……」
『見たことない武器だなぁ? その毒針で敵を殺すのか? 必殺仕○人かよ草』
「言うの忘れてたが、この都市は獣人だらけだ。おまけにあいつみたいに辻斬りみてぇな行為をしてもお咎めなしらしい」
『へぇ~っますます面白いなぁ』

 ビーディが動けなくなった鴨の羽根を開いたり閉じたりしている。

『羽根が針になってる。すっげぇなにこれ。興味あるけど動物愛護の精神持ってないんだよなぁ。獣人とか前世じゃ普通にぶっ殺してたしぃ。この針ぶっ刺すとどうなるのかなぁ』
「た……助け……助けて……コインあげます。だから……命だけは」
『コインって何?』
「まだ良くわからんが、この都市の内部にシークレットベースがあるんだ。コインはそこに入るのに使う」
『ふーん。そのコインってどこにあんの』
「こ……腰の……袋に……」

 ビーディは鴨の腰に付いたズタ袋を破き、コインを全て自らのインベントリヘ収めた。

「こ、これ……を解いて」
『おう、オッケー』

 ビーディが針を奴の顔面に突き刺した瞬間鴨の頭が弾け飛び、周りは血の海となった。

『ハァ、やっぱ最高だな。命の輝く瞬間を見るのは最高にたぎる。経絡秘孔をついた。お前の命はあと3秒――』
「汚ぇな! かかったらどうすんだよ! そういうのは頭破裂させる前にやれや!」
『大丈夫だよ。ちゃんとけんちゃんの付近には来ないように破裂させたんだから』

 周りの獣人達が呆けた表情から一変。叫び声を上げて逃げ出した。

『うるさいなぁ。なんだよ殺しは認められてるんだろぉ』
「いきなり鴨の顔面が破裂して血液スプリンクラーになったら、そらビビるわ」
『血液スプリンクラーとか草』
「『イエーイ』」

 俺とビーディはいつものハイタッチ。

「ここがどういう所かわかったか?」
『まぁね』
「よし、もう少し行ったところだ」

 しばらく歩き続け宿屋へと到達した。

 俺がドアの前に立つとひとりでにドアが煙となって消え去った。

 俺はホテルのカウンターヘ立つ。眼の前には例のナマケモノの店員が長い爪を実にスローリィな動作で机に当ててカタカタと音を立てていた。

「あの~2階に泊まってるもんなんだけど、新しい友達も良いかな」
「あ~、ブラックの~インセクトのお客さん~。新しい人って~そ~の~大きな~汚い人ですか~?」
「そう」
「了解~し~ま~し~た~。お夕食の~分は~如何致しますか~?」
「いやこいつの分はいらない。宿泊費だけ頼む」
「わか~りました~。お二階へ~どうぞ~」

 俺は階段を上り、木製のドアを開ける。

「やっと帰って来たぜ!」
「ゲイン君! 何で途中で通信切るんだよ! 一体どこで何やってたの!? もう皆引き止めるのむちゃくちゃ大変だったんだよ!?」
「いや悪い悪い。色々止むに止まれぬ事情つーの? いやもうほんと疲れた」
「お師匠様! よかった! 無事だったんですね! すごく心配したんです!」
「おぉ、相変わらず元気いっぱいだなぁ」

 俺はエスカをベットに寝かせようとベットに近づくと、先程までなんともなかった彼女の腕が俺の首へと周りガッチリロックされた。

「えぇ……起きてる? 起きてるよね? あの……ホテルに着いたんで……起きてるなら離して欲しいんだけど……」
「ね……眠っています!」
「紛う事なき混じりっけなしのレベルで起きてるよね。眠ってる人は眠ってるって言わないからね」
「あ……あと5分……。いや3分間だけでいいので、このままお願いします」

 俺はベットに腰かける。

 エルはというとマスクのキャニスターの中にチョコレートのかけらを入れ、とても小さな火を発生させ、チョコを液状にしてからキャニスターの蓋を閉め、ガスマスクに取り付け始めた。そして彼女ニコニコ笑顔のままマスクをつける。すると、マスクから白い蒸気が発生したかと思うと、チョコレートの匂いが部屋にたちこめる。

 なにやってんだあの子は……。

「あのぉ……お師匠様……」

 アーサーが俺の隣に来ていた。

「さっきから僕の方をずっと見てるあの人は誰ですか?」
「あぁ紹介するな。あれ俺のマブ親友のビーディ。おいパーティの皆に適当に挨拶しとけ」
『ビーディって言います! ハイヨロシクゥ!』

 彼はそう言うと各々に握手をした。

「君……ロボット?」
『そう言う貴方は……やはり天才プログラマーA!!』
「うん、そうだけど?」
『いや~一度でいいから貴方に会ってみたかったんですよ。貴方の大ファンなんです!』
「あぁ、そりゃあどうも」
『貴方の提唱した、人間の脳に及ぶ新たな領域とその優位性についてには大変感銘を受けました。そして何よりVRアイドルの音声シナプス伝達を利用してのネットワーク掌握! あれは惜しかったですねぇ』
「ゲイン君! この人むちゃくちゃ良い人じゃないか! ほんとに君の友人なのかい!?」
「ぶん殴られてぇのか」

 二人のサイコパスは熱い握手を交わして自己紹介を終えた。

 間髪入れず、アーサーがビーディの手を両手で握り勢いよく上下させている。

「お師匠様のご友人なんですね! 僕お師匠の弟子のアーサーって言います! よろしくお願いします!」
「……」

 ビーディはただ黙ってアーサーを見つめている。

 前世の記憶のままならアーサーが危ない!

「おっおい! ビーディ! 待て!」

 握手を終えた彼の肩にビーディは両手を徐に置いた。

 ヤバい!

『なんて……なんて華蓮なんだ! こんな可愛い娘初めて見た!』
「おい待てぇいビーディ! そいつは男だゾ!」
『ファッ!? この顔で!』
「あぁ」
『髪サラッサラだよ!? 両側のサイドセミロングだよ!? 整髪剤のネット広告並に髪ツヤツヤだよ!?』
「あぁ」
『まつ毛超長いよ!?』
「そうだな」
『声、完全に女の子だよ!?』
「それでもだ」
『マジか……』
「そうだ。ちゃんと聖剣を携えてるんだ。たとえ女に見えようがな」
『この見た目で……お得じゃん』
「はえっ!?」

 マブだと思っていた友人の新たな一面を俺は垣間見るはめになってしまった。思っていたのとは違うが、まぁいいか。いや、いいのか?

「僕……男です……」
「アーサー、恥じらう姿見せなくていいから! 逆効果だから!」
『結婚を前――』

 俺は壊れかけたヘッドパーツをビーディから無理やりもぎ取り、空いていた窓に向ってスローイン。

『マイボディーッ!』

 ビーディはヘッドパーツを追って窓に躰を乗り出す。

「早く取ってこいよ」

 エスカから離れ、俺は彼のケツを蹴り飛ばすとそのまま落ちていった。

「あの……いいですか……? あんなことして」
「いいの。あいつは頑丈・・だから。アーサーあいつに変な事されたら俺に絶対言えよ」
「ハ……ハイ」

 別の意味で危なくなってしまった……。

「お師匠様! ビーディさんの躰がバラバラに!」
「いいの! こいつは四肢が千切れようが元に戻るの! そういう種族だから!」
「そうなんですか!?」
「そうなんです!」
「わかりました!」

 死ぬほど素直でほんと助かるこの子。

 しばらくしてふわふわと浮遊し、バラバラになったままビーディが窓から戻ってきた。

『全く酷いよねぇ。友達を足蹴にするんだからさぁ』
「丁度いいやこのままオーバーホール始めっぞ!」

 俺は彼を徹底的に直すための準備に取り掛かるのだった。
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