アーマード勇者育成記 産業革命遺産チート! 世界観ガン無視完全無敵の俺が無双する件 剣と魔法?よろしいならばこちらは強化外骨格だ。

からくり8

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第126話 俺、認める

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「飯だ飯。丁度いい感じに腹減ってるところだ。食ったらアマテラス、陽炎カゲロウの外格を綺麗にしてやるからな」
「ほんまに? 嬉しおす。ダーリン直々にお色直ししてくれるなんて夢みたいやわ~」
「それだけ錆びてるとクリーンじゃ落とせないからな」
「なら、早う食べて。ほら早う」

 こいつの食べてってセクシーな声のせいで別の意味に聞こえる。見た目がスピーシー過ぎて丁重にお断りする事不可避だけど。

 ゴキゲンな様子のアマテラスないし陽炎がテーブルに近づき、バレエダンサーの様にクルッと一回転して片方ずつ持っていた銀色のトレイを置いた。

「さて、スチームパンクめいた料理がどんなもんか見せて貰おう」

 ホテルにある取っ手付きの例の蓋が開かれ、俺達の前に現れたのはボウルが1つ。2つの木製スプーンがどろりとした白濁液の上に浮いている。もう片方の蓋を開け中を確認したが、全く同じものだった。

「わぁ……何ていうかまるで精え――」
「おい、インド系スチームパンクマニア、それ以上先の事喋ったらこれ鼻から吸わせるぞ」
「僕はハーフだよ」
「うるさい。ちょっと黙れ」

 まじか、悪い冗談だろ。こんなの喰えってのか。
 顔を近づけにおいを嗅いでみたが、少なくともゲソっぽい感じはしない。何の臭いもしない。無臭だ。もしかしたらお粥である可能性が微レ存? いや、お米の臭いもしない。里芋的なでんぷんの塊かも知れない……。

「……いただき……まーす」

 俺が謎の白濁液Xをどう攻略しようか迷っている最中、まさかのエルが自爆特攻をしかけた。
 まずい、何がまずいって絵面がまずい。我がパーティ中見た目JSっぽさナンバーワンの彼女が白濁液をスプーンですくい口に運んで咀嚼そしゃくしている。とてつもなくまずい。どこぞのロリコン賢者が見たら泣いて喜びそうな光景ではある。

「ほ……んのちょっぴ……りお肉の味……」
「こマ!? ボウルいっぱいの精液じゃなかったんか!?」
「ゲイン……きたない……」
「ごめん、お姉さん許して」
「まぁ、多……少はね?」

 どう見てもあれだが、肉の味がするという。
 ええい、ままよ!

 勇気を出し、スプーンですくい口へと運ぶ。食感は見た目通りというか、溶かして冷えて固まったこんにゃくを肉の味にした様なものか。やはり何かしらのでんぷんか何かなのだろう。しかし、ご多分に漏れず味付けが極薄でほのかに肉っぽい味がするという感じだ。

「う~ん、味うっすいなぁ」
「ねぇねぇゲイン君」
「なんだ、スチームガイ」
「スチームガイって何さ。そんなことより、もう片方の蓋を観察してたんだけど、取っ手がスライドして内部に組み込まれたギアが動く様になってるよ。やってみるね」

 彼が蓋の取っ手をスライドさせると、カタカタと音を内部で立て蓋が震え出し、白い蒸気が小さく放出された。
 彼が取っ手を元の位置に戻した瞬間、蓋が煙の様になって消えると、白い皿の上には熟成された熱々の燻製肉が2枚に切り分けられ、丁寧に盛られていた。
 おまけにいつの間にかナイフとフォークまでトレイに置かれている。先程まで白濁液が限界まで入っていたでかいボウルは消え去っている。

「あぁ……スチームパンク万歳……」
「おい、冗談だろ」
「じゃあ、エスカさん! 僕たちは頂こうか!」
「あぁ……そうだな。そうしよう。できればお兄様と一緒に食べたかった……」
「ん? エスカ俺を呼んだ?」
「い、いえ! 何でもありません!」

 俺は自分の前にある皿に向き直り、エルと目を合わせる。

「エル取っ手をスライドさせるんだ」
「了解」

 彼女が取っ手をスライドさせ、全く同じ過程を経て眼前には熱々の熟成肉。
 匂いを嗅ぐととても美味そうな香りが鼻孔をくすぐる。

「おぉ~、すごい……美味しそう……」

 あのシュガージャンキーのエルが肉を前に美味そうだと。明日は隕石が降るかもしれんな。
 いや、しかしこの匂いと見た目は冗談抜きで美味そうだ。程よくミディアムレアに焼かれ、サイズは一切れ200グラムといったところか。

「じゃ、いただきます」

 うっま!
 なんだこの肉!?
 味付けは塩コショウ? ニンニク? よくわからんが死ぬほど美味い。おまけにすっと溶けて全くクドくない。

「お兄様! このお肉すっごく美味しいです!」
「わかるマン」
「ハー! 思わず立ち食いしちゃったよ! やっぱスチームパンクを……最高やな! ね、ゲイン君!」
「認めるマン」

 俺達は各々感想を言いながら異常なほど美味い肉を完食した。

 ――そして少し休憩をした後、俺はインベントリから錆落としのポーションを陽炎に満遍なくぶっかけ、細心の注意を心掛けながら研磨石を右手に持ち、錆ついた部分を優しめに擦ると赤銅色から血の様に赤い真紅のボディが現れた。

「ちょ、ちょっと! 大丈夫なんだよね! お腹と両方の腕と膝にある培養液がたっぷり入ったカプセル破ったりしないでよ! お願いだから!」
「横でべちゃくちゃ喋んな! 手元が狂う!」

 オレンジ色に鈍く光る拳ほどの大きさのカプセル、これこそこの外格がヤバイ元凶だ。こいつにはアヌンナキの威光というブラックボックス化されたスキルが付いており、発動条件が一切不明なのだが強制的に発動させる方法が1つだけあり、それがこの5つあるちょい硬めの膜をパキっと割る事だ。割れたら最後、誰にも止められない恐ろしいスキルが発動する。
 俺は今、言うなればニトログリセリンの海でタバコを吸いながらイカダの掃除してる様なもんだ。

 こんなに緊張してるのは初めて外格を着た時以来だ。



 ――やり遂げたぜ。
 なんということでしょう。3時間33分の格闘末、陽炎の錆びついていたボディは真紅の光沢が怪しく輝き、上腕辺りまで伸びた真っ白な冷却ファイバーはまるで風になびくサラサラヘアーの様に。

「おおきにー! ダーリン愛してる!」
「フッ……自分の才能が怖い」
「割とマジで偉業だよ。スピーシーボディはかなり柔らかくて、普通の外格を綺麗にするつもりで触ると速攻でパキッとイっちゃうからね」
「だるるぉ? やっぱ俺って最強だよな」
「何をもって最強と言っているのかよくわからないけど同意しとくよ」
「そういえば、今の今まで忘れてたんだが、隣室静か過ぎないか」
「そうだねぇ」

 ま、まさか……まずい! やはりあのバカ痴女2人をアーサーと一緒にするのは間違いだったか!

「外着!」

 俺の躰に陽炎が瞬時に着装され、俺は勢いそのまま扉を開け、隣室の扉に手をかけると扉が消え去り、室内には誰一人いないもぬけの殻だった。
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