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第125話 俺、武器屋のドワーフに仕事を頼む

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 代わり映えのしないオレンジ色の街灯に照らされた漆黒の配管ジャングルの中を、俺達は新しくなった地図を駆使し詰まる事なく武器屋へ着く。

 俺は扉の前に立つ。
 例によって例の如く、白い塗料で金槌かなずちの絵が描かれた扉が煙となって消え去るのを目視した俺とエスカは揃って店内へ。

 それなりに広く、見覚えない多種多様な形、色をした歯車が並んでいる。

 これらは全てあのスチームアイロンとかいう奴なんだろうか。
 気になるな。まぁ、ここにきた元々の用事を済ませてからで良いか。

 俺はカウンターに座り、見慣れない棒状の器具で七色に輝く鉱物を削って何やら作成中のドワーフの前に立つ。
 右目に銀色のモノクルをした彼は俺の存在に気付くと作業を取りやめ俺達双方に目を配った。

「いらっしゃい、入り用で? ダークエルフを連れたお客人」
「あぁ、錆落としのポーションと研磨石はあるか?」
「ごぜーますよ。おい! 誰かこのお客人に研磨石と錆落としを持ってきて差し上げろ!」
「え、いいよ。自分で取るから」
「いやいや、ダークエルフを連れて歩くお客人を無下にする訳にはいきませんで」

 周りのドワーフがせかせかと歩き、店の奥から茶色くにごった液体の入ったポーションと、鼠色のこぶし大の石を両手に持ちカウンターへと置いた。

「お待ちごぜーやす。しめて1300ローゼスになりやす」
「あぁ、うん。なぁさっき言ったダークエルフ云々うんぬんってのはどういう意味だ?」
「この都市にいるドワーフはエルフには足向けて寝れませんで。特にダークエルフにはね。スチームアームズの原材料であるオールドマテリアルはエルフの森に成ってる物質からあれを抽出できるのはエルフだけですからね」

 俺はカウンターに置かれた虹色に輝く鉱物に目をやる。

「これがそのオールドマテリアルなのか」
「えぇ、その核ですぜ。こいつを時間かけて歯車の形に加工していくんでさ。こいつはぁ奇妙な鉱物でしてね? 成した形によって特性がガラッと変わるんでさ。俺たちが研究に研究を重ねて作り出した特性が――」
「スチームアームズって訳か」
「えぇ、ご名答でさ。面白ぇ代物ですよこいつは」

 形によって特性を変えるか。
 使えるかも知れん。

「ちょっと聞きたいんだが、例えば何らかの原因により動かなくなったり、機能しなくなった物を再び修整する事もできるのか?」
「もちろん可能でさ。オールドマテリアルの形さえ判明すりゃあね」
「――そうか。クルーべゾルダⅢ式!」

 俺の躰に軽い衝撃を受け、目の前がエラーの文字で埋め尽くされた真っ赤な画面に変わる。

 見たことないエラーウインドウの数だ。忌々しいが、同時に面白くもある。

 俺は銀色の胸部の中心にある青いボタンを押すと外格が観音開きなり、俺が躍り出ると開いていた装甲が白い蒸気を全身から発しながら閉まっていく。

 周りのドワーフ達は鳩が豆鉄砲を食った様な顔をしている。

「こ、こいつは一体……何です?」
「いいか? ここをよーく見てくれ」

 俺はももの装甲の間に爪を挟む。すると、一部の装甲が剥がれ黒い人工筋肉取りこまれる様に3つの玉がめられている。

 本来であれば緑色に光っている筈が、鈍い緑色の玉になってやがる。
 なんとなく検討は付いていたが、どうやら確定だな。

「主人、お前を男と見込んで頼みがある。こいつを復活させる事はできるか? もしできるんだったら、こいつを好きにいじってくれて良いぞ」
「こ、これを俺たちの好きに!?」

 主人以外のドワーフがにわかに騒ぎ出した。やいのやいの何やら言い合っている。

「どうだ? ただ一つ条件をのんでくれ。こいつは今不具合があってな。うまく動く事ができない。原因究明をしてくれるか」
「見、見てみないと……何とも言えないが……。いやしかし……」
「オールドマテリアルの力でどうにかできないか?」
「俺たちでできるかどうか……。こんな時御大将が居てくれたら1発なんだが……」

 一概に皆驚いていはいるが、なんというか乗る気では無いように思える。まぁロストテクノロジーだし、難易度はむちゃくちゃ高いんだろうが。

「好きなだけ弄って良いから直してくれよな~。頼むよ~」
「ちょっと時間をくだせぇ。俺たちだけじゃ数が足りない」
「もちろん、俺はこの都市にしばらく滞在するから良いけど」
「お客人宿は?」
「あの~何だっけ、ナマケモノ獣人がいるホテルあるだろ? あそこに宿取ってる」
「ゴリデさんのホテルか。何かしらわかったら使いを寄こしやす」
「ところでちょっと聞きたいんだが」
「何でやしょう? お前がここの主人じゃないのか?」
「あぁ、御大将ってのはここにすんでるドワーフ全員のお上の事でさ。すげぇユニークスキルの持ち主でしてね? 何と物質の声を聞くことができるんでさ」
「えっそんなすげぇドワーフいんの!? どこに!?」
「わかりやせん……、いつからか俺たちの前から消えちまったんでさぁ」
「居所とかは……」
「皆目検討もつきやせん……。そもそもこの都市から出ていく事自体が命がけなんですぜ。生きてる可能性はねぇでしょう……」
「参考程度に聞くけど、どんな見た目なんだ?」
「大昔に地下闘技場でマンティコアと闘った時、顔面に大層な傷を作りやした。それが御大将のトレードマークでさ」
「ふぅーん。顔面に傷ねぇ……」

 何だ? なんか引っかかりがあるな。どこかでそれっぽいドワーフとあった様な……会わなかった様な。

「まぁ良いか。とりあえず頼んだぞ! はい、お金」

 インベントリから金の入った皮袋をカウンターに置く。

「おまかせくだせぇ! おっとそうだ! お近づきの印にこれ差し上げやしょう」

 主人はカウンターの下から金色に輝く歯車を俺に手渡してきた。

「良いのか?」
「えぇ、構いませんぜ。人によって出てくる武器は違うんで、試してみてくだせぇ」
「へぇ、有り難く頂戴しとくわ。サンキュー」


 俺達は店から出て来た道を戻り、ホテルへと到着した。
 煙の様に消え去ったドアをくぐり、ホテルの階段を上り、部屋のドアの前で何故か食器を両手持つバイオアーマー陽炎の姿。

「アマテラス、何持ってんの?」
「あ、お帰りやす~。食事やって。ナマケモノはんがわざわざ持ってきてくれたんや」
「ほーん。ちょうど昼時だし、食うか」
「ほな、お入り」

 俺は昼飯を取るために部屋へ入っていった。
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