アーマード勇者育成記 産業革命遺産チート! 世界観ガン無視完全無敵の俺が無双する件 剣と魔法?よろしいならばこちらは強化外骨格だ。

からくり8

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第122話 俺、エージェントを立てる

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「生きてるってどういう了見だ。この都市はダンジョンなのか?」
「違うにゃ、ダンジョンじゃないにゃ。生きてるんだにゃ。微妙~に動いたり揺れたりするんだにゃ」
「都市が動く? ひとりでに?」
「そうだにゃ」
「あっそう。まぁ、いいや。それよりホテルとか案内してくれ。一息つきたいから」
「もちろんだにゃ。このパルチに任せて欲しいにゃ!」

 そういうとパルチは先頭に立ち歩き出した為、俺達は彼の後を付いていく。

 空を仰ぐと白い霧や黒い雲に覆われ、太陽の光の一切を遮っている。
 道の左右には均等に街灯の様な物体が設置されておりオレンジ色の柔らかな光が鋼鉄で覆われた辺りを照らす。

 おかしい……。この街おかしすぎる。

「いやーやっぱ良いなぁ、この雰囲気たまんないよね~」
「俺はサイバーパンクの方が好きだわ」
「もー食わず嫌いは良くないよ? ほら見なよ。あのキリンさんの顔に着けている薄汚くて所々塗装が剥げてる用途不明ゴーグル!」
「なぁさっきから気になってる事があるんだが」
「ん? 何?」
「何でさっきから人に会わねぇんだ?」
「偶然じゃない?」
「偶然ね……」

 しばらく歩きつづけ、パルチはある鋼鉄製の看板の前で止まった。
 看板にはペンキの様な塗料でINNと雑に書かれている。

「ここが宿屋だにゃ」

 パルチが取っ手を引くと扉に仕掛けられた2つの歯車が回転し白い煙を吐くと扉が消えさった。

「おほー! か、かっこいいー!」

 興奮するアルジャ・岩本を無視し中へ入る。
 店内は閑散としている。
 店の奥ではバーの店員のナマケモノの獣人と客らしき比較的身なりの良いゴリラの獣人がおり、パルチがナマケモノに近づき耳打ちすると拭いていたガラスのコップをその場に放置し、超スローな動きで俺達の前に現れた。

「あ~~いらっしゃ~いませ~。何名~さ~ま~ですかぁ~?」
「7名だにゃ! オレっちは客じゃないにゃ!」
「は~い、4人部屋2つ開いて~ますがどう~しますか?」
「それでいいよ」
「は~い、ではぁ~、身分を~証明するもの~を見せて下さい~」
「身分を証明するもの? ギルドカードしかないけどそれで良いの?」
「あは~い、それ~で大丈夫です~」

 俺はインベントリから黒のギルドカードを取り出し、ナマケモノに手渡す。
 ナマケモノの店員は長く鋭い爪でカードを器用に挟み、マジマジと見つめ俺に返してきた。

「わぁ~すごぉい、真っ黒なギルドカードなんて初めて~見ました~。2階へどうぞ~ロイヤルルームですよ~」

 左の階段へ手を向け、右側にあるバーへ戻っていった。

「え、あのどの部屋とか聞いてないし料金体系とか……まぁ良いや。とりあえず行くか」

 階段を登り、目の前にある扉の取っ手を下ろすと煙を吐きながら扉はかき消えた。部屋を覗くと室内にはベッドが4つにテーブルと椅子が設置されている。

 隣室の扉を開け中を覗くと全く同じ間取りだった。

「どうやら双方とも誰も使っていない様だ。よし、ここをとりあえずの拠点とする! 皆入ってこい」

 あまり広くない部屋の中にゾロゾロと俺を含めた8人が入室し、俺はインベントリを開きルームキーを取り出し勢い良く回す。――がいつもの様に白い扉が出現しない。何度か手首を回すがうんともすんとも言わない。

「えっ……ハッ!? おいおい冗談だろ!?」
「お兄様どうなさったんですか?」
「い、いやとりあえず計画変更! この宿に泊まるぞ! 各自好きにしろ!」
「マジっすかー!? アーサーきゅん一緒の部屋に泊まろ?」
「寝言抜かしてんじゃねーよ! よだれ垂らしながらニヤついてる女とアー君一緒にさせる訳ねぇだろ!」
「僕は良いですよ!」
「私はお兄様と一緒の部屋が良いです!」
「んー私も……ゲインと一緒がいい」
「僕は誰とでも良いよ」
「ハイ決定! この部屋に泊まるのが俺、アルジャ・岩本、エル、エスカ! さっき覗いた隣室にその他!」
「アーサーきゅんと一緒に寝ていいスかぁ!? よっしゃああ!」
「んな訳ねぇだろ! マジでぶっ殺すぞてめぇ!」
「じゃ、女2人の世話は頼んだぞアーサー」

 俺がアーサーに肩ポンすると彼は強く頷く。
 4人部屋になるって聞いた時点でどうせアーサーの取り合いになる事わかってたからなぁ。セーフティかけとくか。

「わかりました! 任せて下さい! さぁセリーニア、リンさん行きましょう!」
「アーサーきゅん、あたしの事もリンって呼び捨てでいいんすよ! デヘヘ」
「アー君こんな変態に近づいちゃ駄目よ。アホが移から」
「アホって言ったほうがアホなんスよ!」

 ガキかあいつらは。

 アーサーは2人を引き連れて部屋から出ていった。

「じゃ、オレっちもそろそろ家に帰るにゃ! お嬢ちゃんあの時は済まなかったにゃ!」
「猫ちゃん……バイバイ」

 エルはパルチに近づき喉元を擦る。

「お、おふぅ、テクニシャン……」

 にんまりしたままゴロゴロと鳴きパルチはその場にへたり込んでしまった。

「かわいい……」
「つ、つい気持ちよすぎて……じゃあほんとに行くにゃ」

 俺はインベントリからズタ袋を選択し適当に金貨を入れ、それを取り出しパルチに手渡す。

「まぁ世話になったしこれやるわ。二度と強盗なんてすんなよ」
「い、いいのかにゃ?」
「俺の気が変わる前に行け」
「ありがとうだにゃ! もう強盗なんてしないにゃ!」

 パルチは立ち上がると俺に握手すると部屋から居なくなった。

「へぇー優しい所もあるんだね」
「おい」

 俺はアルジャ・岩本の方を向き右手の人差しを立て右側の下顎を擦る。
 アルジャ・岩本の顔が一瞬怪訝な表情を見せるも同じ動作をする。

『なんだい? シークレットチャットなんてさぁ』

 脳裏にアルジャ・岩本の声が響き渡る。

『お前に1つ教えておいてやろうと思ってな。オンゲをやる上で最も大切なのは情報を握ることだ。俺が何の疑いもなくただ道案内をしてくれた黒猫に金握らせて帰らせる訳ないだろ。この都市はおかしい』
『おかしいってまだ何もやってないじゃないか』
『あいつ――いや、この都市の獣人は俺知ってる獣人と違い過ぎる。それにまだまだ気になることがあり過ぎる。あいつには代理人エージェントになってもらう事にした。握手した時に付着したDNAを既にデータ化してある。暫く様子見するつもりだ。色々な意味でな』
『君ってさー友達いないでしょ』
『残念でした。友達位ちゃんといましたー』
『今はいない訳だねー』
『お前こそ友達いないだろ……』

 俺はシークレットチャットを一方的に切り上げた。

「よし、皆でちょっくら買い食いでも行く?」
「お兄様と買い物!? 是非!」
「行く……」
「1人だと心細いから僕もそうしゅるー」
「お前も行くのか……」
「友達だろ~! 無下にするなよ~」

 俺はテーブルの上に置いてある金の鍵を持つと部屋を出た。




 ★★★★★


 日も落ちた城の巨大な庭を護衛の騎士を引き連れて、王女サンティーヌは歩を進め庭の外れにある森へやってきた。森の奥には巨大な洞窟が口を開けている。

「王女様、もう日が暮れようとしています。大変危険で――」

 彼女の横にいた護衛の兵士はそのままぴくりとも動くなくなり、それを確認したサンティーヌは1人洞窟へと入っていく。
 金脈であるこの洞窟には大量の金埋まっている。その証拠に彼女の周りには黄金に輝く道とも言える程の金が周りにあるにも関わらず彼女は一切興味を示さず、洞窟の中をただ黙々と歩き続け、洞窟の行き止まりまでやってきたかと思うと跪き、手を合わせ小さく声を発した。すると彼女の前に金色に輝く光の球体が人の形を模倣した物体が姿を現す。

「あぁ、今日も来てくださったのですね!」
『当然です。私は貴女の為に存在しているのですから』
「最近は忙しくて中々見ることができませんでした! どうですか? ゲイン様の近状は?」
『原因不明のトラブルにより彼の愛用している外格ヤルダバオトⅧ式が着装不可になるも緊急時着装システムの緊急同調によりバイオアーマー陽炎の着装に成功。事なきを得た様です』
「そうですか、流石ゲイン様ですね。トラブルをすぐに解決して次の行動を起こす。私の未来の殿方は伊達ではありません。――そろそろ皆が心配するかも知れません、私は戻ります。またゲイン様の事を聞かせて下さいね」

 サンティーヌは踵を返し、洞窟を後にする。

『ワールドマスターサンティーヌの要請により対象Gを観察を随時継続』

 そういうと人間の形を象った物体の姿はかき消え、静寂だけが残った。
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