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数日後、私たちはアーガスという街にたどり着いた。この街は王都からそれほど離れておらず、比較的安全だと言われていた。私たちは宿屋に部屋を取り、今後の方針について話し合うことにした。
「エドワード殿下、これからどうなさるおつもりでしょうか?」
「まずは父上を殺害した叔父の足取りを掴もうと思う」
「しかし、どのようにして?」
「王都には私の忠実な臣下たちがいる。彼らと連絡を取り、協力して叔父を追い詰めるのだ」エドワードは決意に満ちた目で言った。
「だが、その前にこの街で準備を整える必要があるだろう」
「そうですね」リリアンが同意した。
私たちは宿屋を出て街の中心部へと向かった。そこには大きな市場があり、様々な商品が並んでいた。私たちは旅の必需品を買い揃えるために市場を見て回ることにしたのだ。
「ロザリンド、何か欲しいものはあるかい?」エドワードが尋ねた。
「いえ、特にありません」私は首を横に振った。
「遠慮しなくていいんだよ?」エドワードは優しく微笑んだ。
「欲しいものがあれば何でも言ってほしいな」
「はい、ありがとうございます……」私は少し考えてから答えた。
「では、本屋に行きたいです」
「本が好きなのかい?」
「はい、実は魔法書を買いたいと思っていまして……」
私が答えると、リリアンが口を開いた。
「それなら私の行きつけの店があるわ」
私たちはリリアンの案内で書店へと向かった。そこでは様々な種類の魔法書が所狭しと並んでいた。私は一冊の本を手に取り、中を開いてみた。そこには複雑な呪文や魔法陣が描かれている。
「すごい……」思わず声が出てしまった。
「これ一冊で一体どれくらいの価値になるんだろう?」
リリアンが答えた。「ロザリンドならすぐに使いこなせると思うわよ」
「私なんてまだまだですよ」私は謙遜して答えたが、内心では少し自信がついたような気がしたのだった。
「他に欲しい本はある?」エドワードが尋ねた。
「いえ、これだけで十分です」私は微笑んだ。
私たちは書店を出て、再び賑やかな市場へと戻った。夕暮れ時が近づき、人々の往来が徐々に増えてきていた。
「そろそろ宿に戻りましょうか」リリアンが提案した。
エドワードが頷いたその時、突然、騒がしい声が聞こえてきた。
「おい! あそこだ!」
振り返ると、鎧に身を包んだ数人の兵士たちが、こちらに向かって走ってくるのが見えた。
「まさか……」エドワードの顔が青ざめる。
「殿下、逃げましょう!」リリアンが叫んだ。
私たちは急いで人混みに紛れ込み、小道を抜けて逃げ始めた。追っ手の足音が背後で響く。
「こっちよ!」リリアンが先導し、私たちは狭い路地を駆け抜けた。
息を切らしながら、私は新しく買った魔法書を開いた。「何か使えそうな呪文は……」
ページをめくっていると、目に留まる呪文があった。
「フォッグミスト!」
私は立ち止まり、追っ手に向かって呪文を唱え始めた。すると、地面から霧のようなものが立ち昇り、瞬く間に辺りを包み込んだ。
「な、何も見えんぞ!」
追っ手は霧で何も見えないようだ。
「急いで!」リリアンに促され、私たちは再び走り出した。
霧の中、追っ手の声が混乱しているのが聞こえる。「どこだ? 見失ったぞ!」
しばらく走り続けると、ようやく人気のない場所にたどり着いた。三人とも息を荒げながら、壁に寄りかかった。
「ロザリンド、あれは見事だった」エドワードが笑顔で言った。
「ありがとうございます」
私たちは息を整えながら、周囲を警戒した。幸い、追っ手の気配はなくなっていた。
「これで一時的に安全になったわね」リリアンが安堵の表情を浮かべる。
エドワードは眉をひそめ、「しかし、この街にも叔父の手が伸びているということだ。我々の動きを予測されているのかもしれない」と呟いた。
「殿下、このままでは危険です。すぐにでもこの街を出るべきでしょう」リリアンが提案した。
エドワードは頷き、「そうだな。だが、今夜のうちに出発するのは逆に目立ってしまう。明日の朝一番で出発しよう」と決断を下した。
「では、宿に戻って準備をしましょう」私は提案した。
私たちは慎重に宿へと戻り、荷物をまとめ始めた。その間、エドワードは窓際に立ち、外の様子を伺っていた。
「ロザリンド」エドワードが私を呼んだ。
「はい?」
「君の魔法の力が、今日の危機を救ってくれた。本当にありがとう」
彼の言葉に、私は少し照れながらも嬉しさを感じた。「いえ、私にできることはまだわずかですが、これからもお二人のお役に立てるよう頑張ります」
リリアンが会話に加わった。「ロザリンド、あなたの才能は素晴らしいわ。これからの旅で、きっとその力はもっと成長するはずよ」
彼女の言葉に勇気づけられ、私は決意を新たにした。
夜が更けていく中、私たちは明日の旅路について話し合った。
「北の山岳地帯にある古城を目指そう」エドワードが地図を広げながら説明した。「そこなら一時的に身を隠すことができる」
「でも、山岳地帯は危険も多いのでは?」私は不安を覚えた。
「確かに危険はあるわ。でも、それは追っ手にとっても同じこと。むしろ私たちに有利に働くかもしれないわね」リリアンが冷静に分析した。
エドワードは頷き、「そうだ。それに、山岳地帯には古い魔法の痕跡が残っているという噂もある。ロザリンド、君の魔法の力を高めるチャンスになるかもしれないぞ」
「やってみようとは思いますが……」私は不安を拭い去れなかった。
「大丈夫だ、私たちがついている」エドワードの言葉が心強かった。
「さあ、今日はもう休もう。明日は早いぞ」エドワードが微笑んだ。
私たちはそれぞれ部屋に戻り、眠りについた。しかし、明日の旅立ちへの期待と緊張で、私の胸は高鳴っていた。
「エドワード殿下、これからどうなさるおつもりでしょうか?」
「まずは父上を殺害した叔父の足取りを掴もうと思う」
「しかし、どのようにして?」
「王都には私の忠実な臣下たちがいる。彼らと連絡を取り、協力して叔父を追い詰めるのだ」エドワードは決意に満ちた目で言った。
「だが、その前にこの街で準備を整える必要があるだろう」
「そうですね」リリアンが同意した。
私たちは宿屋を出て街の中心部へと向かった。そこには大きな市場があり、様々な商品が並んでいた。私たちは旅の必需品を買い揃えるために市場を見て回ることにしたのだ。
「ロザリンド、何か欲しいものはあるかい?」エドワードが尋ねた。
「いえ、特にありません」私は首を横に振った。
「遠慮しなくていいんだよ?」エドワードは優しく微笑んだ。
「欲しいものがあれば何でも言ってほしいな」
「はい、ありがとうございます……」私は少し考えてから答えた。
「では、本屋に行きたいです」
「本が好きなのかい?」
「はい、実は魔法書を買いたいと思っていまして……」
私が答えると、リリアンが口を開いた。
「それなら私の行きつけの店があるわ」
私たちはリリアンの案内で書店へと向かった。そこでは様々な種類の魔法書が所狭しと並んでいた。私は一冊の本を手に取り、中を開いてみた。そこには複雑な呪文や魔法陣が描かれている。
「すごい……」思わず声が出てしまった。
「これ一冊で一体どれくらいの価値になるんだろう?」
リリアンが答えた。「ロザリンドならすぐに使いこなせると思うわよ」
「私なんてまだまだですよ」私は謙遜して答えたが、内心では少し自信がついたような気がしたのだった。
「他に欲しい本はある?」エドワードが尋ねた。
「いえ、これだけで十分です」私は微笑んだ。
私たちは書店を出て、再び賑やかな市場へと戻った。夕暮れ時が近づき、人々の往来が徐々に増えてきていた。
「そろそろ宿に戻りましょうか」リリアンが提案した。
エドワードが頷いたその時、突然、騒がしい声が聞こえてきた。
「おい! あそこだ!」
振り返ると、鎧に身を包んだ数人の兵士たちが、こちらに向かって走ってくるのが見えた。
「まさか……」エドワードの顔が青ざめる。
「殿下、逃げましょう!」リリアンが叫んだ。
私たちは急いで人混みに紛れ込み、小道を抜けて逃げ始めた。追っ手の足音が背後で響く。
「こっちよ!」リリアンが先導し、私たちは狭い路地を駆け抜けた。
息を切らしながら、私は新しく買った魔法書を開いた。「何か使えそうな呪文は……」
ページをめくっていると、目に留まる呪文があった。
「フォッグミスト!」
私は立ち止まり、追っ手に向かって呪文を唱え始めた。すると、地面から霧のようなものが立ち昇り、瞬く間に辺りを包み込んだ。
「な、何も見えんぞ!」
追っ手は霧で何も見えないようだ。
「急いで!」リリアンに促され、私たちは再び走り出した。
霧の中、追っ手の声が混乱しているのが聞こえる。「どこだ? 見失ったぞ!」
しばらく走り続けると、ようやく人気のない場所にたどり着いた。三人とも息を荒げながら、壁に寄りかかった。
「ロザリンド、あれは見事だった」エドワードが笑顔で言った。
「ありがとうございます」
私たちは息を整えながら、周囲を警戒した。幸い、追っ手の気配はなくなっていた。
「これで一時的に安全になったわね」リリアンが安堵の表情を浮かべる。
エドワードは眉をひそめ、「しかし、この街にも叔父の手が伸びているということだ。我々の動きを予測されているのかもしれない」と呟いた。
「殿下、このままでは危険です。すぐにでもこの街を出るべきでしょう」リリアンが提案した。
エドワードは頷き、「そうだな。だが、今夜のうちに出発するのは逆に目立ってしまう。明日の朝一番で出発しよう」と決断を下した。
「では、宿に戻って準備をしましょう」私は提案した。
私たちは慎重に宿へと戻り、荷物をまとめ始めた。その間、エドワードは窓際に立ち、外の様子を伺っていた。
「ロザリンド」エドワードが私を呼んだ。
「はい?」
「君の魔法の力が、今日の危機を救ってくれた。本当にありがとう」
彼の言葉に、私は少し照れながらも嬉しさを感じた。「いえ、私にできることはまだわずかですが、これからもお二人のお役に立てるよう頑張ります」
リリアンが会話に加わった。「ロザリンド、あなたの才能は素晴らしいわ。これからの旅で、きっとその力はもっと成長するはずよ」
彼女の言葉に勇気づけられ、私は決意を新たにした。
夜が更けていく中、私たちは明日の旅路について話し合った。
「北の山岳地帯にある古城を目指そう」エドワードが地図を広げながら説明した。「そこなら一時的に身を隠すことができる」
「でも、山岳地帯は危険も多いのでは?」私は不安を覚えた。
「確かに危険はあるわ。でも、それは追っ手にとっても同じこと。むしろ私たちに有利に働くかもしれないわね」リリアンが冷静に分析した。
エドワードは頷き、「そうだ。それに、山岳地帯には古い魔法の痕跡が残っているという噂もある。ロザリンド、君の魔法の力を高めるチャンスになるかもしれないぞ」
「やってみようとは思いますが……」私は不安を拭い去れなかった。
「大丈夫だ、私たちがついている」エドワードの言葉が心強かった。
「さあ、今日はもう休もう。明日は早いぞ」エドワードが微笑んだ。
私たちはそれぞれ部屋に戻り、眠りについた。しかし、明日の旅立ちへの期待と緊張で、私の胸は高鳴っていた。
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