二度転生した最強賢者はスローライフを送りたい〜今世ではダラダラ生きたいので実力を隠したら追放されました〜

16

翌日、俺はいつも通り領主館で仕事をこなしていた。


「おかしい……俺はスローライフ生活を送るために追放されたのにどうしてこんなに働いているんだ？」


『そりゃあ、アベル様がお人よしだからですよ』


「え？ そうなの？」


『そうですよ！現に困っている人たちを放っておけないからこうやって働いてるじゃないですか！』


「うーん……まあそれもそうだな……」


俺は納得することにした。実際、困っている人を見ると放っておけない性分なのだ。それに俺が働いていることで皆が喜んでくれるのを見るのは嬉しいし……


「しかし仕事だけの人生も嫌だな……」


『じゃあ、アベル様は何をしたいんですか？』


「そうだな……趣味で畑を耕したり、釣りをしたりしてみたい」


『なるほど！ アベル様らしいですね！』


「まあね……」


そんな会話をしていると突然ドアがノックされた。誰だろうと思い返事をすると入ってきたのはアリサだった。彼女は部屋に入ってくるといきなり俺の横に立つと言った。


「あのっ！ 一緒に温泉に行きませんか？」


「温泉か……疲れを癒すには良さそうだな」


「本当ですか！？」


アリサの顔がパッと明るくなる。彼女は嬉しそうに笑った後、俺の手を引っ張ってきた。


「早く行きましょう！」


こうして俺はアリサと一緒に温泉に行くことになったのであった……


◇


俺たちはアーガスの西にある温泉宿に来ていた。周囲には誰もおらず貸切状態だ。早速服を脱ぐと温泉に入ることにする。湯加減も丁度良くとても気持ち良かった。空を見上げると星が輝いているのが見えた。


（たまにはこういうのも良いかもな……）


そう思いながらボーっとしているといつの間にか隣にアリサがいた。


「アベルさん、気持ちいいですね！」


彼女は満面の笑みを浮かべている。


「ああ、そうだな……」


「ふふっ……」


アリサは小さく笑うと、俺の腕にしがみついてきた。柔らかい感触が伝わってくる……


「どうした？」


「いえ……ただこうしたかっただけです」


そう言うと彼女は更に強く抱きついてくる。


「アベルさん……大好きです」


温泉から出ると、俺たちは温泉宿の名物料理を頂いた。山菜や川魚を使った料理はとても美味しく、ついつい食べ過ぎてしまった。その後、部屋に戻ると布団に入ることにしたのだが……


「あのっ！ 一緒に寝てもいいですか？」


アリサが上目遣いで聞いてくる。その表情はとても可愛らしく思わずドキッとしてしまった。


「別に構わないよ……」


俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに笑った後、俺の布団の中に入ってきた。そしてそのまま抱きついてくる。彼女の身体はとても柔らかく温かかった……


（これはまずいな……）


そう思いながらも俺は彼女を引き離すことができなかった……しばらくした後、彼女は寝息を立て始める。


「俺も寝るか……」


アリサの頭を撫でながら俺も眠りにつくことにした……