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翌日、俺たちはギルド長から呼び出しを受けた。


「失礼します」


俺たちはギルド長の部屋に入る。


「よく来たな、カイト」


「それで、話とは何ですか?」


俺が尋ねると、ギルド長は真剣な眼差しで俺を見る。


「実はな……お前の実力を見込んで頼みがある」


どうやらただ事ではないようだ。一体どんな内容なのだろう?


「実は最近、この王都に盗賊団が住み着いているという噂があってな……」


「盗賊団ですか?」


「そうだ、そいつらが悪事を働く前に何とかしたいのだが、我々にはその力がない……」


どうやらかなり深刻な状況のようだ。だが……


「でも、なぜ俺に? Sランクとはいえ、俺はまだ冒険者になったばかりですよ?」


俺は疑問を口にする。すると、ギルド長はニヤリと笑った。


「お前の実力は本物だ。それは私が保証する。だからこそ、お前に頼んでいるのだ」


「そうですか……」


俺は考える。確かに盗賊団を放置しておくのは危険だな……


「分かりました。その依頼、受けましょう」


俺は承諾した。すると、ギルド長は嬉しそうに笑う。


「そうか! 助かるぞ!」


こうして、俺は盗賊退治の依頼を引き受けることになったのだった。


「ここが盗賊団のアジトか……」


そこは街外れにある小さな小屋だった。辺りには誰もいない。どうやら留守のようだが……


「カイト様、どうするんですか?」


「とりあえず中に入ってみよう」


俺たちは中に入ることにした。扉を開けると、中には数人の男たちがいた。


「なんだお前ら? ここは俺たちのアジトだぞ!」


「お前たちを捕まえに来た」


俺は剣を構える。すると、男たちは笑い出した。


「おいおい、冗談だろ? たった二人で俺たちに勝てると思ってんのか?」


「ああそうだ。だからさっさと降参してくれ」


俺が言うと、男たちはさらに笑い出した。


「馬鹿じゃねえの? そんなのするわけねえだろ!」


男たちが襲いかかってくる。だが、その動きはあまりにも遅かった。俺は一瞬で間合いを詰めると、男たちを斬り伏せていく。あっという間に盗賊団は壊滅したのだった。


「よし、これで終わりだな」


俺が剣を鞘に収めると、フィーナが近づいてくる。


「さすがですね、カイト様」


「それほどでもないさ……」


俺は謙遜したが、内心では満足していた。やはり、自分の力で誰かを助けるのはいいものだ……


「では、報告に戻るとするか」


「はい!」


俺たちはギルド長の元に戻る。そして、盗賊団を退治したことを伝えた。


「おお! 本当にやってくれたのか!」


ギルド長は嬉しそうに笑う。俺は少し照れ臭かったが、なんとか平静を保ったまま答えた。


「ええ、もちろんです」


「本当に助かったよ。ありがとう」


「いえ、当然のことをしたまでです」


「報酬は弾むから安心してくれ」


「それは助かります」


俺は素直に感謝する。だが、ここで一つ疑問が浮かんだ。なぜ盗賊団のアジトが分かったのだろうか? そのことを尋ねると、ギルド長はあっさりと答えた。


「ああ、それか? 実はお前たちに依頼した後ですぐに騎士団に頼んで盗賊団のアジトを調べてもらったんだよ」


なるほどな……最初からそのつもりだったのか……さすがはギルド長だな……俺が感心しているとフィーナが話しかけてくる。


「カイト様、これで依頼達成ですね」


「ああ、そうだな……」


俺は少し残念な気持ちになる。もう少し盗賊団と一緒にいてもよかったかもな……


「カイト様?」


フィーナが不思議そうに首を傾げる。俺は慌てて誤魔化した。


「いや、なんでもないんだ」


こうして、俺の初仕事は無事に終わりを迎えたのであった。
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