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翌日、私はエミリーと登校していた。昨日は結局あの後、家に送ってもらって解散となったのだが、エミリーはずっと上機嫌で終始笑顔だったのだ。そして別れ際に言われた言葉を思い出すと顔が熱くなるのを感じた。


(うぅ……今日からどんな顔をして会えばいいんだろう……?)


そんなことを考えながら歩いているうちに学校へと到着する。教室に入ると先生がすでに来ていた。私は急いで自分の席へ向かうと腰を下ろしたのだが、その直後のことだった。突然後ろから肩を叩かれる。驚いて振り返るとそこには笑顔のエミリーが立っていたのだ。彼女はこちらをじっと見つめているだけで何も言わないため困惑していると、今度は耳元に顔を近づけてきて囁いたのだった……。


「おはよう、クロエちゃん……」


その声は普段よりも艶っぽく聞こえてしまいドキッとすると同時に顔が熱くなるのを感じた。


「お、おはよう……エミリー」


何とか平静を装って挨拶を返すことができたが心臓はまだ激しく鼓動していた。そんな私の様子に気づいた様子もなく彼女は続ける。


「ねぇクロエちゃん……今日一緒にお昼ご飯食べようよ?」


「……え? どうして急に……」


私が聞き返すと彼女は少し恥ずかしそうな顔をしながら答えた。


「えっとね……その……もっとクロエちゃんと仲良くなりたいって思ったからかな……?」


そう言われた瞬間心臓が大きく跳ね上がった気がした。顔が熱くなるのを感じると同時に胸の鼓動が激しくなるのを感じたのだ。


「う、うん……いいよ」


私はなんとか平静を装って答えたつもりだったのだが声が上ずってしまった気がする。そんな私を見てエミリーはクスッと笑った。そして嬉しそうに微笑むと手を振って自分の席に戻っていったのだった。


「今日は転校生を紹介します」


ホームルームが始まって担任の先生がそんなことを言い出した。私は興味なさそうに窓の外を眺めていたのだが、次の瞬間には思わず立ち上がっていたのだった。何故なら教卓の横に立っていた人物に見覚えがあったからである。それは『光と闇のエスカリオード』の攻略対象の一人である、闇の王子、リチャード・ルシフォールだったのだから……。


「……リチャードだ。お前らと馴れ合うつもりはないから話しかけないでくれ」


彼はそれだけ言うと不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。するとクラスメイトたちは一斉に騒ぎ始める。特に女子たちの反応は大きく、黄色い歓声を上げている子もいるほどだった。


「きゃーっ! かっこいい!!」


「はぁ……尊い……」


リチャードって女性人気ナンバー1キャラよね……。誰ともつるまない孤高の王子って設定だったけど、実際は主人公にだけ甘いんだよね……。まあそこが良いんだけどね……! そんなことを思いながら彼の姿を眺めていると不意に目が合った気がしたが気のせいだろうか? その後も特に変わった様子もなく淡々と自己紹介を終えて席に着く彼を見つめながら私は小さくため息をつくのだった。


「リチャード様は好きな人はいますか?」


休み時間になると案の定他の生徒たちに囲まれることになったのだが、リチャード本人は我関せずといった様子で読書に没頭している様子だった。そんな彼を遠巻きに眺めつつ私も自分の席に座って次の授業の準備をしていたのだが、ふと視線を感じて顔を上げるとリチャードがいた。


「お前……俺の女になれ」


彼は突然そんなことを言ってきたのだった。突然のことに頭が追いつかず固まっていると、リチャードは私の前までやってきて私の手を掴んだのだ。そしてそのまま強引に教室の外へと連れ出そうとする。私は慌てて抵抗しようとしたが全く歯が立たなかった。どうやら彼の力が強すぎるようだ……


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「いいから来い」


有無を言わせない雰囲気だったため仕方なくついていくことにしたのだが、着いた先は人気のない場所だった。そこで彼は私の手を離すとこちらを振り向いたのだ。その目は真剣そのもので思わずドキッとすると同時に嫌な予感を覚えたのだったが時すでに遅し……リチャードは私の両肩を掴むと壁に押し付けたのである!


「きゃっ!? 痛っ!?」


背中を強く打ち付けられて思わず悲鳴を上げてしまう。しかしリチャードは全く意に介さずに顔を近づけてきたかと思うと耳元で囁いてきたのだ……!


「お前は今日から俺の女だ」


その一言を聞いた瞬間背筋がゾクッとするのを感じたと同時に心臓が激しく脈打ち始めるのを感じたが、それでもなんとか冷静さを保って反論しようとしたのだが……突然唇を奪われてしまい何も言えなくなってしまったのである。しかもそれだけではなく舌まで入れられてしまったため完全に思考停止状態になってしまったのだった……。


「今日はこれくらいにしてやるよ」


そう言ってリチャードはどこかに行ってしまった。あまりの衝撃に私は棒立ちになり、我に帰るまで3時間はかかった。
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