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数日後、私はエドワードが主催するお茶会にやって来た。場所は私の住んでいる公爵家の屋敷だ。


「クロエ様、お待ちしておりました」


エドワードは私を見るとニッコリと笑った。相変わらず爽やかな笑顔である。それにしても、お茶会にしては人が少ないような……と思っていると、シルバが言った。


「本日は私の独断で開催されましたので、参加者は私とクロエ様を含めても5人だけです」


「え、そ、そうなの……?」


5人だけのお茶会か……。何だか寂しい気がするが、まあ、いいか。私はエドワードに促されて席についた。


「クロエ様は紅茶とコーヒーどちらがお好きですか?」


「えっと……紅茶でお願いしますわ」


私は少し考えてから答えた。前世ではコーヒーばかり飲んでいたのだが、この世界のコーヒーは私の口に合わない。なので、紅茶を飲んでいる。


「かしこまりました」


エドワードはそう言うと、従者に指示を出して紅茶を淹れるように指示した。


「それにしても、クロエ様は本当に美しいですね」


紅茶が運ばれてくるのを待っていると、エドワードは唐突にそんなことを言ってきた。私は動揺して引きつった笑みを浮かべた。


「そ、そうでしょうか……?」


「ええ!!」


エドワードは目を輝かせて私を見た。やめろ!! そんな目で見るな!! 私は心の中で叫んだ。


「それに、お淑やかで礼儀正しいですし……まさに理想の女性です」


「あ、ありがとうございます……」


私は引きつった笑みを浮かべた。褒めてくれるのは嬉しいが、男から言われると何とも複雑な気分だ。


「私は本当に幸運です」


エドワードはそう言って私を見て微笑んだ。その笑みはまるで天使のようで、思わず見惚れてしまう程美しかった。しかし、この笑顔に騙されてはいけない。こいつは腹黒なんだ……!!


「そろそろ紅茶が来る頃でしょうか?」


エドワードがそう言うと同時に従者が現れた。どうやら紅茶が届いたようだ。


「こちらでよろしいでしょうか?」


「はい!!」


エドワードは笑顔で答えた。何だかご機嫌な様子だ。従者は紅茶を淹れると、すぐに去っていった。


「それではいただきましょう」


エドワードがそう言うと同時にティーカップを持ち上げた。私もつられてティーカップを持ち上げる。そして、一口飲んだ。うん、美味しい……!! さすが公爵家の紅茶だ。私はすっかりこの味に魅了されてしまったのだった。


「そういえば、エドワード様はどうしてお茶会を開こうと思ったのですか?」


私は紅茶を飲みつつ尋ねた。すると、エドワードはティーカップを置いて言った。


「実は……クロエ様と一緒にお茶を飲みたかったからなんです」


「え……?」


私は思わず目を丸くした。まさかそんな理由だったとは……と驚いているとエドワードは慌てた様子で弁解した。


「あ、あの!! 変な意味ではなくてですね……!! お慕いしている方に自分のことを知ってもらいたいというか……」


「そ、そうですか……」


私は引きつった笑みを浮かべた。イケメンにこんな口説き文句みたいなことを言われるとは……はっきり言って怖い。これが乙女ゲームの世界か。恐ろしい世界である。


「クロエ様はお好きな方とかいらっしゃるのですか……?」


エドワードは私に顔を近づけて、キラキラした瞳で私を見た。私はあまりの近さに思わず体を硬直させた。


「す、好きな方……ですか? えっと……」


私は引きつった笑顔を浮かべながら考えた。そういえば、前世での私は乙女ゲームにハマっていたが恋愛には無頓着だった。なので、好きな男性なんていない。でも、ここでいないと答えると何だか負けなような気がしてならない。だから、いるということにしておこう。


「えっと……その……」


私があわあわしているとエドワードは心配そうな表情を浮かべた。


「も、申し訳ございません!! そんな質問失礼でしたよね!!」


「い、いえ……!! そんなことはありませんわ!!」


私は慌てて否定した。すると、エドワードの表情がパッと明るくなった。何だが犬みたいで可愛いなと思ったのは内緒だ。


「……好きな方はいらっしゃらないのですか?」


「そ、そうですわね……一応は」


私は引きつった笑みを浮かべながら言った。すると、エドワードは嬉しそうに目を輝かせた。


「そうですか!! どんな方なのですか?」


「え、えっと……優しい方です……」


私は引きつった笑みを浮かべて言った。何だか尋問されている気分だ。すると、エドワードは明るい声で言った。


「そうですか!! 是非お会いしたいものですね!!」


「そ、そうですわね……」


私は引きつった笑みを浮かべて言った。そうしているうちにお茶会も終わりに近づいていた。


「そろそろお開きの時間ですね」


エドワードは紅茶を飲み干して言った。私はティーカップの底に残った紅茶を見つめた。何だかこのまま帰るのは寂しいな……なんて考えていると、エドワードが言った。


「最後に一つお聞きしたいのですが……」


「何ですの……?」


私は首を傾げた。すると、エドワードは言った。


「クロエ様は私のことをどう思っていますでしょうか?」


「え……?」


私は思わず首を傾げた。質問の意図がよく分からなかったからだ。


「そうですね……まだお答えするのは難しいですわ……」


私がそう言うと、エドワードは頬を赤らめた。そして、少し顔を伏せながら言った。


「そうですか……」


何だか気まずい空気だ。いや、私にはそんな気持ちは微塵もないのだが。私が居心地の悪さを感じていると、エドワードは言った。


「それではまたお茶会をしましょうね」


「ええ……」


私は引きつった笑みを浮かべて言った。これはあれなのだろうか、いわゆる社交辞令という奴だろうか。よく分からないので私はそのままエドワードと別れたのだった。
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