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数日後、俺たちはフィーナの故郷であるオネストアークにやってきた。
「……」
フィーナは元々この国の王女であったがクーデターで国を追われてしまった
「家族に会えるといいな」
「……はい。ただ、もう居ない可能性のほうが……」
「そうなのか」
「でも、私は諦めません」
そう言ってフィーナは顔を上げた。その目には決意の光が宿っているように見える。俺はそんな彼女の姿を見ると自分も頑張らなければと思ったのだった。
「まずは情報を集めようと思うんですけど……」
フィーナの言葉に俺は頷いた。情報を手に入れることは重要だろう、俺たちは街を歩いている人々に話を聞いてみることにした。しかし有力な情報は得られないまま時間だけが過ぎていった……。
「うーん、どうしたものか」
俺が悩んでいると、喘息に苦しんでる一人のエルフを見つける。
「これを飲め」
ポーションを飲ませて、少し寝るようにすすめる。するとエルフの少女は眠ってしまった。俺たちは彼女を宿屋に連れて行くことにした……ベッドに寝かせてしばらく待つと、彼女は目を覚ました。
「体が……楽になってる……苦しくない……!」
少女は自分の身体を触りながら驚きの表情を浮かべた。彼女はこちらを振り返り、感謝の気持ちを伝えてきた。
「ありがとうございます!」
「いいってことさ」
俺は笑って答えると、彼女に尋ねた。
「この国で何が起きているのか知っているかい?」
すると彼女は少し考えてから答えた。
「実は今、国全体が危機に瀕しているんです」
「危機?」
「はい、深刻な公害が起きてるんです」
「公害だって?」
「国王が変わってから、この国に魔道具工場がたくさん建てられました。排水を垂れ流し、土壌を汚し……その結果、空気も、地面も、水も、全てが汚染されていきました」
「それで公害が起きているのか」
「はい。そのせいで病にかかったり、体調を崩したりする人が増えているんです。このままではこの国は滅んでしまうかもしれません……」
俺は彼女の言葉を聞きながら考えた……このまま放っておくわけにはいかない。
「君の住んでいる村に案内してくれないか?」
俺が頼むと、彼女は少し迷った後、頷いてくれた。
「分かりました……ついてきてください」
俺たちは彼女の案内で村へと向かうことにした。道中は魔物や盗賊に襲われることもなく順調だった……しかし村に近づくにつれて空気の汚染がひどくなっていくのを感じた。そしてついには目視できるほどの黒い霧が漂っている場所までやってきた。
「これはひどいな……」
俺は思わず呟いた。フィーナも苦しそうな表情を浮かべている……しかしここで引き返すわけにもいかないだろうと思い、そのまま進むことにした。
「ごほごほ……戻ったか!」
エルフの青年が俺たちを見てホッとしたように言った。しかし彼の顔色は悪く、元気がないように見える。
「ただいま戻りました……長老様」
「おお、戻ってきたか……よくぞ無事で……」
長老と呼ばれたエルフは嬉しそうに微笑んだ。
「この人たちは?」
長老は俺に視線を向けると尋ねた。
「私を助けてくれたんです」
フィーナが答えると、長老は俺を真っ直ぐに見つめた。そして深々と頭を下げた。
「ありがとうございます……おかげで娘を助けることができました」
「いえ、当然のことをしたまでですよ」
俺は笑顔で答えた。そしてこの村で起きている公害問題について話をした……すると長老は険しい顔をした。
「やはりそうですか……実は私の村も同じような状況です」
「それは本当ですか?」
「はい。このままではいずれ村全体が滅んでしまうかもしれません……」
「このポーションを使ってください」
俺はポーションを取り出して長老に渡した。彼は感謝の言葉を口にすると、そのまま飲み干した。すると彼の顔色が見る見るうちに良くなっていく。
「おお……これは凄い効き目だ!」
「他にも苦しんでいる人がいるなら使って欲しいです」
俺は他の村人達にもポーションを配った。彼らは涙を流しながら喜んでいた……
「我らをお救いくださり、誠に感謝申し上げる!」
長老を始めとするエルフの村人たちが俺に向かって頭を下げた。
「気にしないでください」
「しかしこのままでは恩を返せぬ! 何か私たちにできることがあればおっしゃってください!」
俺は少し考えてから口を開いた。
「では、この国を救うお手伝いをさせてくれませんか?」
「おお、それはありがたいことです!」
村を公害から救ったが、根本的な解決にはなっていない。この国を救うにはやっぱり工場を潰すしかないか。
「……」
フィーナは元々この国の王女であったがクーデターで国を追われてしまった
「家族に会えるといいな」
「……はい。ただ、もう居ない可能性のほうが……」
「そうなのか」
「でも、私は諦めません」
そう言ってフィーナは顔を上げた。その目には決意の光が宿っているように見える。俺はそんな彼女の姿を見ると自分も頑張らなければと思ったのだった。
「まずは情報を集めようと思うんですけど……」
フィーナの言葉に俺は頷いた。情報を手に入れることは重要だろう、俺たちは街を歩いている人々に話を聞いてみることにした。しかし有力な情報は得られないまま時間だけが過ぎていった……。
「うーん、どうしたものか」
俺が悩んでいると、喘息に苦しんでる一人のエルフを見つける。
「これを飲め」
ポーションを飲ませて、少し寝るようにすすめる。するとエルフの少女は眠ってしまった。俺たちは彼女を宿屋に連れて行くことにした……ベッドに寝かせてしばらく待つと、彼女は目を覚ました。
「体が……楽になってる……苦しくない……!」
少女は自分の身体を触りながら驚きの表情を浮かべた。彼女はこちらを振り返り、感謝の気持ちを伝えてきた。
「ありがとうございます!」
「いいってことさ」
俺は笑って答えると、彼女に尋ねた。
「この国で何が起きているのか知っているかい?」
すると彼女は少し考えてから答えた。
「実は今、国全体が危機に瀕しているんです」
「危機?」
「はい、深刻な公害が起きてるんです」
「公害だって?」
「国王が変わってから、この国に魔道具工場がたくさん建てられました。排水を垂れ流し、土壌を汚し……その結果、空気も、地面も、水も、全てが汚染されていきました」
「それで公害が起きているのか」
「はい。そのせいで病にかかったり、体調を崩したりする人が増えているんです。このままではこの国は滅んでしまうかもしれません……」
俺は彼女の言葉を聞きながら考えた……このまま放っておくわけにはいかない。
「君の住んでいる村に案内してくれないか?」
俺が頼むと、彼女は少し迷った後、頷いてくれた。
「分かりました……ついてきてください」
俺たちは彼女の案内で村へと向かうことにした。道中は魔物や盗賊に襲われることもなく順調だった……しかし村に近づくにつれて空気の汚染がひどくなっていくのを感じた。そしてついには目視できるほどの黒い霧が漂っている場所までやってきた。
「これはひどいな……」
俺は思わず呟いた。フィーナも苦しそうな表情を浮かべている……しかしここで引き返すわけにもいかないだろうと思い、そのまま進むことにした。
「ごほごほ……戻ったか!」
エルフの青年が俺たちを見てホッとしたように言った。しかし彼の顔色は悪く、元気がないように見える。
「ただいま戻りました……長老様」
「おお、戻ってきたか……よくぞ無事で……」
長老と呼ばれたエルフは嬉しそうに微笑んだ。
「この人たちは?」
長老は俺に視線を向けると尋ねた。
「私を助けてくれたんです」
フィーナが答えると、長老は俺を真っ直ぐに見つめた。そして深々と頭を下げた。
「ありがとうございます……おかげで娘を助けることができました」
「いえ、当然のことをしたまでですよ」
俺は笑顔で答えた。そしてこの村で起きている公害問題について話をした……すると長老は険しい顔をした。
「やはりそうですか……実は私の村も同じような状況です」
「それは本当ですか?」
「はい。このままではいずれ村全体が滅んでしまうかもしれません……」
「このポーションを使ってください」
俺はポーションを取り出して長老に渡した。彼は感謝の言葉を口にすると、そのまま飲み干した。すると彼の顔色が見る見るうちに良くなっていく。
「おお……これは凄い効き目だ!」
「他にも苦しんでいる人がいるなら使って欲しいです」
俺は他の村人達にもポーションを配った。彼らは涙を流しながら喜んでいた……
「我らをお救いくださり、誠に感謝申し上げる!」
長老を始めとするエルフの村人たちが俺に向かって頭を下げた。
「気にしないでください」
「しかしこのままでは恩を返せぬ! 何か私たちにできることがあればおっしゃってください!」
俺は少し考えてから口を開いた。
「では、この国を救うお手伝いをさせてくれませんか?」
「おお、それはありがたいことです!」
村を公害から救ったが、根本的な解決にはなっていない。この国を救うにはやっぱり工場を潰すしかないか。
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