上 下
16 / 20

16

しおりを挟む
数日後、俺たちはフィーナの故郷であるオネストアークにやってきた。


「……」


フィーナは元々この国の王女であったがクーデターで国を追われてしまった


「家族に会えるといいな」


「……はい。ただ、もう居ない可能性のほうが……」


「そうなのか」


「でも、私は諦めません」


そう言ってフィーナは顔を上げた。その目には決意の光が宿っているように見える。俺はそんな彼女の姿を見ると自分も頑張らなければと思ったのだった。


「まずは情報を集めようと思うんですけど……」


フィーナの言葉に俺は頷いた。情報を手に入れることは重要だろう、俺たちは街を歩いている人々に話を聞いてみることにした。しかし有力な情報は得られないまま時間だけが過ぎていった……。


「うーん、どうしたものか」


俺が悩んでいると、喘息に苦しんでる一人のエルフを見つける。


「これを飲め」


ポーションを飲ませて、少し寝るようにすすめる。するとエルフの少女は眠ってしまった。俺たちは彼女を宿屋に連れて行くことにした……ベッドに寝かせてしばらく待つと、彼女は目を覚ました。


「体が……楽になってる……苦しくない……!」


少女は自分の身体を触りながら驚きの表情を浮かべた。彼女はこちらを振り返り、感謝の気持ちを伝えてきた。


「ありがとうございます!」


「いいってことさ」


俺は笑って答えると、彼女に尋ねた。


「この国で何が起きているのか知っているかい?」


すると彼女は少し考えてから答えた。


「実は今、国全体が危機に瀕しているんです」


「危機?」


「はい、深刻な公害が起きてるんです」


「公害だって?」


「国王が変わってから、この国に魔道具工場がたくさん建てられました。排水を垂れ流し、土壌を汚し……その結果、空気も、地面も、水も、全てが汚染されていきました」


「それで公害が起きているのか」


「はい。そのせいで病にかかったり、体調を崩したりする人が増えているんです。このままではこの国は滅んでしまうかもしれません……」


俺は彼女の言葉を聞きながら考えた……このまま放っておくわけにはいかない。


「君の住んでいる村に案内してくれないか?」


俺が頼むと、彼女は少し迷った後、頷いてくれた。


「分かりました……ついてきてください」


俺たちは彼女の案内で村へと向かうことにした。道中は魔物や盗賊に襲われることもなく順調だった……しかし村に近づくにつれて空気の汚染がひどくなっていくのを感じた。そしてついには目視できるほどの黒い霧が漂っている場所までやってきた。


「これはひどいな……」


俺は思わず呟いた。フィーナも苦しそうな表情を浮かべている……しかしここで引き返すわけにもいかないだろうと思い、そのまま進むことにした。


「ごほごほ……戻ったか!」


エルフの青年が俺たちを見てホッとしたように言った。しかし彼の顔色は悪く、元気がないように見える。


「ただいま戻りました……長老様」


「おお、戻ってきたか……よくぞ無事で……」


長老と呼ばれたエルフは嬉しそうに微笑んだ。


「この人たちは?」


長老は俺に視線を向けると尋ねた。


「私を助けてくれたんです」


フィーナが答えると、長老は俺を真っ直ぐに見つめた。そして深々と頭を下げた。


「ありがとうございます……おかげで娘を助けることができました」


「いえ、当然のことをしたまでですよ」


俺は笑顔で答えた。そしてこの村で起きている公害問題について話をした……すると長老は険しい顔をした。


「やはりそうですか……実は私の村も同じような状況です」


「それは本当ですか?」


「はい。このままではいずれ村全体が滅んでしまうかもしれません……」


「このポーションを使ってください」


俺はポーションを取り出して長老に渡した。彼は感謝の言葉を口にすると、そのまま飲み干した。すると彼の顔色が見る見るうちに良くなっていく。


「おお……これは凄い効き目だ!」


「他にも苦しんでいる人がいるなら使って欲しいです」


俺は他の村人達にもポーションを配った。彼らは涙を流しながら喜んでいた……


「我らをお救いくださり、誠に感謝申し上げる!」


長老を始めとするエルフの村人たちが俺に向かって頭を下げた。


「気にしないでください」


「しかしこのままでは恩を返せぬ! 何か私たちにできることがあればおっしゃってください!」


俺は少し考えてから口を開いた。


「では、この国を救うお手伝いをさせてくれませんか?」


「おお、それはありがたいことです!」


村を公害から救ったが、根本的な解決にはなっていない。この国を救うにはやっぱり工場を潰すしかないか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

「武器屋があるからお前など必要ない」と追放された鍛冶師は伝説の武器を作り、無双する~今更俺の武器が必要だと土下座したところでもう遅い~

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属する鍛冶師のアークはパーティーに貢献してないという理由で追放される。 アークは王都を出て、自由に生きることを決意する。その道中、アークは自分の真の力に目覚め、伝説級の武器を作り出す鍛冶師として世界中に名を轟かせる。 一方、アークを追い出した【黄金の獅子王】のメンバーは、後になって知ることになる。アークが自分たちの武器をメンテしていたことでSランクになったのだと、アークを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになり、アークが関わった人たちは皆、彼の作る伝説の武器で、幸せになっていくのだった。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

魔力即時回復スキルでダンジョン攻略無双 〜規格外のスキルで爆速レベルアップ→超一流探索者も引くほど最強に〜

Josse.T
ファンタジー
悲運な貯金の溶かし方をした主人公・古谷浩二が100万円を溶かした代わりに手に入れたのは、ダンジョン内で魔力が無制限に即時回復するスキルだった。 せっかくなので、浩二はそれまで敬遠していたダンジョン探索で一攫千金を狙うことに。 その過程で浩二は、規格外のスキルで、世界トップレベルと言われていた探索者たちの度肝を抜くほど強くなっていく。

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

処理中です...