「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる～ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました～

4

翌日、俺たちはアーガスの市場を歩いていた。


「ひどいな……」


店で売られているポーションはどれも質の悪いものだった。これじゃ擦り傷を治すくらいが関の山だ。俺がラインハルトにこき使われている間に

錬金術の質が下がってしまったのだろうか。


「もっとまともなポーションはないのかよ」


俺はそうぼやくと市場を後にした。


「きゃっ！」


俺が市場から出ると、誰かがぶつかってきたのだ。


「おっと、大丈夫、お嬢ちゃん？」


「あ、うん……えと、ぶつかってごめんなさい……」


ぶつかったのは10歳くらいの女の子だった。彼女は俺の胸くらいまでしか身長がなく、とても可愛らしい子であった。


「怪我はないかい？」


「うん、大丈夫だよ！」


少女は元気よく答えた。彼女の体には傷一つなかった。よかった、どうやら怪我はなさそうだな……そう思ったのだが……


「ママのクッキーが……」


ぶつかった時に砕けたのか、彼女の周りには粉々になったクッキーが散らばっていた。


「ごめんね、俺がぶつかっちゃったせいで」


「ううん、大丈夫！ また買えばいいし！」


彼女は笑顔を見せた。その笑顔を見ると胸が痛くなってくる……


「お金を払うから新しいクッキーを買っておいで」


「え！？ いいの！？」


「もちろんだよ！」


俺は財布を取り出して、少女にクッキーを買ってあげた。


「お兄さん、錬金術師？」


「ああ、そうだけど」


俺は少女の質問に答えた。すると少女は目を輝かせながら言った。


「お母さんの病気を治して！」


少女の母親は重い病気を患っていた。しかもかなり深刻な状態だという。俺は少女から事情を聞きながら、彼女の家に向かった。


「ごほっ、ごほっ……あら、お客さん？」


「どうも」


俺は挨拶を返すと、彼女の様子を注意深く観察した。彼女は顔色が悪く、かなり痩せ細っていた。俺は早速彼女の治療に取りかかった。


「ごほっ、ごほっ……」


少女は心配そうな顔で母親を見つめていた。彼女の病気はかなり深刻だったようで、通常の解毒ポーションでは効果がないようだった。そこで俺はより高度なポーションを作り出すことにした。


「よし、これでいけるはずだ……」


俺が開発した薬は今までよりも高品質なものだった。これならきっと効くはずだ！


「これを飲んでください」


俺は母親に回復ポーションを飲ませた。すると徐々に顔色が良くなり、呼吸も落ち着いてきた。


「すごい！ ママの病気が治っていく！」


少女は嬉しそうに言った。俺も笑顔で返す。少女の母親は最初は不思議そうな顔をしていたが、薬を飲み終わった頃にはすっかり元気になっていた。


「ありがとうございます！ なんてお礼を言ったらいいか……」


「いえ、俺は当然のことをしたまでですよ」


俺がそう言うと、彼女は深々と頭を下げた。そして、俺に何度も感謝の言葉を口にしたのだった。


「ありがとう！ おにーちゃん！」


少女は満面の笑みを浮かべて言った。俺はそんな少女の頭を優しく撫でてやった。


「どういたしまして」


俺はそう言うと少女を抱き上げて、くるくると回ってあげた。少女はとても嬉しそうだった。


「本当にありがとうございました」


母親は深々と頭を下げたあと、お礼の言葉を述べた。そして俺に何か欲しいものはないかと尋ねてきた。


「いえ、お礼なんて必要ありませんよ！」


俺は慌ててそう答えたが、彼女はそれでは気が済まないといった様子だった。


「俺たちは旅をしているのですが、馬を安く購入できるところはありませんか？」


「それなら私の知り合いに馬屋をやっている方がおりますので、紹介させて頂けませんか？」


「ええ、ぜひお願いします！」


俺たちは少女の母親に馬屋を紹介してもらうことにした。彼女の案内でやってきたのは小さな小屋だった。中に入ってみるとそこには一人の老人がいた。どうやら彼がこの小屋の主らしい。


「ふむ……マリアの紹介だというのなら、安く売ってやろう」


老人はそう言うと馬屋の場所を教えてくれた。そして、俺は早速馬を売ってもらうことにした。


「どれもいい馬だぞ」


無数の馬の中から、白い馬を見つける。


「あの馬は？」


俺が尋ねると、老人は馬の方を見ながら答えた。


「ああ、そいつはヴァイスと言ってな、白いというだけで殺されそうになったところをわしが引き取った。じゃが、なかなか買い手がつかなくてな」


老人は悲しげな声で語った。ヴァイスはそんな主人を慰めるように、そっと寄り添っていた。


「この馬にします」


「いいのか？」


「ええ、この馬じゃなきゃダメなんです」


俺は力強く答えた。老人は少し驚いた様子だったが、やがて優しい笑みを浮かべて言った。


「そうか……なら、持っていってくれ」


「ありがとうございます」


俺はヴァイスを購入することにした。そして、リザと一緒に馬屋を後にした。