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俺はバーンズさんの店で奴隷を買った後、冒険者ギルドで薬草採取の依頼を受注した。


「さて、薬草採取に行くか」


俺はリザを連れて街の外へ出た。街の外は草原が広がっている。周囲には危険な魔物もいるが、俺一人でも十分に対処できるレベルだ。


「ご主人様、薬草はどこに生えているんですか?」


リザが尋ねてきた。俺は彼女に薬草の採取場所を教えた。


「この草原に生えてるよ。ほらあそこ」


俺はリザに指し示した。そこには小さな白い花が咲いていた。その花からは強い魔力を感じることができた。これがポーションの材料になるのだそうだ。


「この匂いを覚えるんだ」


「分かりました!」


リザは元気よく返事をすると、その花を採取し始めた。俺も彼女に続いて薬草の採取を始めた。しばらく二人で作業を続けると、たくさんの薬草が手に入った。


「これだけあれば十分だな」


「そうですね!」


俺たちは満足げな表情で街へ戻ろうとしたのだが、その時、リザが突然立ち止まった。彼女の顔は真っ青になっていた。


「どうしたんだ? 気分が悪いのか?」


俺が心配して尋ねると、彼女は震える声で呟いた。


「ヒュドラ……です」


彼女の視線の先には無数の頭を持つ大蛇の姿があった。傍には冒険者らしき女性が倒れている。


「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」


その巨大な蛇は俺たちを見つけると、大きな雄叫びを上げた。そして、ゆっくりとこちらに近づいてきた。


「ご主人様……逃げてください……」


リザは俺を逃がすために前に出ると、腰から短剣を抜いて構えた。俺は慌てて彼女の前に立つと、杖を構えた。


「グォオオッ!!」


ヒュドラが襲いかかってくると同時に俺は解毒ポーションを投げつけた。すると、ヒュドラを覆っていた毒液が浄化される。


「よし、これで大丈夫だ!」


ヒュドラの毒はポーションで浄化することができた。あとはこいつを倒すだけだ。俺は腰から杖を抜くと、それをヒュドラに向けて魔法を唱えた。


「凍てつけ! アイシクル・バレット!」


杖の先から氷の礫が放たれ、ヒュドラに命中すると同時に氷漬けにした。


「グォッ!?」


ヒュドラは驚きの声を上げると、慌ててその場から逃げ出そうとした。しかし、氷で身を固められたため、逃げることができなかった。


「これで終わりだ!」


俺は杖を振りかぶると、思いっきり振り下ろした。その瞬間、氷漬けになっていたヒュドラに亀裂が入り粉々に砕け散った。そして大量の素材が手に入るのだった。


「ふぅ……」


俺は額の汗をぬぐうと安堵のため息をついた。するとリザが俺の体に抱きついてきた。彼女は目に涙を浮かべながら俺に言った。


「ご主人様……ありがとうございます……ご主人様に出会えて本当によかった……」


彼女は涙を流しながら、何度も俺に感謝の言葉を述べた。そんな彼女の頭を俺は優しく撫でてやったのだった。


「これを飲めば助かります」


ヒュドラの毒にやられた冒険者に解毒ポーションを飲ませる。するとみるみるうちに肌の色が元通りとなった。


「……信じられない。ヒドラの毒を解毒するなんて……」


彼女は驚いている様子だった。俺は安心させるように微笑むと、彼女に尋ねた。


「もう大丈夫そうですか?」


「ええ、本当に助かったわ」


彼女は立ち上がると、深々と頭を下げた。そしてお礼を言うとその場を後にした。俺もリザと共に街に戻ったのだった。
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