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数時間後、馬車は強固な外壁に囲まれた街に到着した。
「あそこがアーガスの街だよ」
バーンズさんの言葉に従って、俺は馬車から降りると街の門をくぐった。するとそこには活気に溢れた光景が広がっていた。
「うわぁ……!」
思わず感嘆のため息が漏れた。今までずっと街の中にいたので、外の世界は初めてだった。街の外はこんなにすごい所だったのか……
「ここが私の店だ」
着いた先は奴隷商館だった。
「奴隷商館……ですか……?」
俺は戸惑いながらバーンズさんを見た。すると彼は俺の視線に気づいたように笑った。
「ああ、私は奴隷商もしているんだ」
奴隷の売買は違法ではないが、少し抵抗があった。しかし、俺はこの街に来てまだ間もないので、こういう店も必要なのかもしれない。
「助けてくれたお礼に奴隷を一人お譲りしましょう」
「いや、別に……」
俺は断ろうとしたが、バーンズさんによってそれは遮られた。
「まぁ、いいから見ていくといいさ」
バーンズさんに半ば強引に引っ張られながら、俺は店内に入った。そこに並べられていたのは様々な人種の奴隷たちであった。女性や男性はもちろんのこと、中には獣人の姿も見受けられた。皆一様に暗く沈んだ表情を浮かべていて、明らかに元気がなかった。まるで生きることを諦めているかのような様子だった。それは見ているこちらまで辛くなるような光景だった。
「どうですか? 気に入った子はおりますか?」
俺はバーンズさんが示した奴隷たちを見た。中には人体の一部が欠損している者もいたが、比較的きれいな顔をしている者たちが多かった。
「あの奴隷は……?」
俺は一番端っこに立っている女の子を指差した。その少女は他の奴隷たちと違い、目を輝かせていて元気いっぱいな様子だったのだ。
「あれは獣人ですよ」
「獣人……」
俺は思わず少女の姿を凝視する。すると少女は俺の視線に気づいたのか、こちらを振り返った。そして驚いたような表情を見せたあと、笑顔を浮かべた。その顔には希望の色が浮かんでいたのだった。
「あの子にします」
「かしこまりました。それでは手続きをしますので、しばらくお待ち下さい」
俺は店の奥で待機することになった。するとさっきの獣人の少女が俺に近づいてきた。
「私を買ってくれてありがとうございます!」
そう言って少女は頭を下げた。俺は慌てて彼女に頭を上げるように言った。少女の顔はとても美しかったが、その体には無数の傷跡があった。恐らく奴隷になった際につけられたものなのだろう。
「このポーションを使うといい」
俺は腰の鞄からポーションを取り出して少女に差し出した。
「これは……?」
少女は怪訝そうな顔でポーションを受け取った。その顔に困惑の色が浮かんでいるのは見てとれた。
「そのポーションは君の傷を癒すことができる」
俺がそう説明すると、少女は嬉しそうな表情を見せた。そして、早速自分が負った傷を治し始めた。すると彼女の体に刻まれた無数の傷がみるみるうちに消えていく。
「わ、私の傷が……消えていく!」
少女は驚愕の表情で自分の体を見つめていた。
「すごい! ご主人様、すごいです!」
「いやいや、それほどでもないよ」
俺は照れ笑いを浮かべた。すると少女は俺に向かって礼を言った。
「本当にありがとうございます! この御恩は絶対に忘れません!」
彼女の目からは涙が溢れ出ていた。よっぽど辛かったのだろうということが見て取れた。俺は思わず少女の体を抱きしめた。彼女の体は華奢で、今にも折れてしまいそうだった。
「俺はカイト。錬金術師のカイトだ。君の名前を教えてくれるかな?」
俺は少女に尋ねた。すると彼女は少し考えたあと、自分の名前を口にした。
「私の名前は……リザです」
「これからよろしくな、リザ」
俺はリザの頭を撫でた。すると彼女は気持ちよさそうに目を細めた。こうして俺はアーガスの街で初めての奴隷を所有することになった。
「あそこがアーガスの街だよ」
バーンズさんの言葉に従って、俺は馬車から降りると街の門をくぐった。するとそこには活気に溢れた光景が広がっていた。
「うわぁ……!」
思わず感嘆のため息が漏れた。今までずっと街の中にいたので、外の世界は初めてだった。街の外はこんなにすごい所だったのか……
「ここが私の店だ」
着いた先は奴隷商館だった。
「奴隷商館……ですか……?」
俺は戸惑いながらバーンズさんを見た。すると彼は俺の視線に気づいたように笑った。
「ああ、私は奴隷商もしているんだ」
奴隷の売買は違法ではないが、少し抵抗があった。しかし、俺はこの街に来てまだ間もないので、こういう店も必要なのかもしれない。
「助けてくれたお礼に奴隷を一人お譲りしましょう」
「いや、別に……」
俺は断ろうとしたが、バーンズさんによってそれは遮られた。
「まぁ、いいから見ていくといいさ」
バーンズさんに半ば強引に引っ張られながら、俺は店内に入った。そこに並べられていたのは様々な人種の奴隷たちであった。女性や男性はもちろんのこと、中には獣人の姿も見受けられた。皆一様に暗く沈んだ表情を浮かべていて、明らかに元気がなかった。まるで生きることを諦めているかのような様子だった。それは見ているこちらまで辛くなるような光景だった。
「どうですか? 気に入った子はおりますか?」
俺はバーンズさんが示した奴隷たちを見た。中には人体の一部が欠損している者もいたが、比較的きれいな顔をしている者たちが多かった。
「あの奴隷は……?」
俺は一番端っこに立っている女の子を指差した。その少女は他の奴隷たちと違い、目を輝かせていて元気いっぱいな様子だったのだ。
「あれは獣人ですよ」
「獣人……」
俺は思わず少女の姿を凝視する。すると少女は俺の視線に気づいたのか、こちらを振り返った。そして驚いたような表情を見せたあと、笑顔を浮かべた。その顔には希望の色が浮かんでいたのだった。
「あの子にします」
「かしこまりました。それでは手続きをしますので、しばらくお待ち下さい」
俺は店の奥で待機することになった。するとさっきの獣人の少女が俺に近づいてきた。
「私を買ってくれてありがとうございます!」
そう言って少女は頭を下げた。俺は慌てて彼女に頭を上げるように言った。少女の顔はとても美しかったが、その体には無数の傷跡があった。恐らく奴隷になった際につけられたものなのだろう。
「このポーションを使うといい」
俺は腰の鞄からポーションを取り出して少女に差し出した。
「これは……?」
少女は怪訝そうな顔でポーションを受け取った。その顔に困惑の色が浮かんでいるのは見てとれた。
「そのポーションは君の傷を癒すことができる」
俺がそう説明すると、少女は嬉しそうな表情を見せた。そして、早速自分が負った傷を治し始めた。すると彼女の体に刻まれた無数の傷がみるみるうちに消えていく。
「わ、私の傷が……消えていく!」
少女は驚愕の表情で自分の体を見つめていた。
「すごい! ご主人様、すごいです!」
「いやいや、それほどでもないよ」
俺は照れ笑いを浮かべた。すると少女は俺に向かって礼を言った。
「本当にありがとうございます! この御恩は絶対に忘れません!」
彼女の目からは涙が溢れ出ていた。よっぽど辛かったのだろうということが見て取れた。俺は思わず少女の体を抱きしめた。彼女の体は華奢で、今にも折れてしまいそうだった。
「俺はカイト。錬金術師のカイトだ。君の名前を教えてくれるかな?」
俺は少女に尋ねた。すると彼女は少し考えたあと、自分の名前を口にした。
「私の名前は……リザです」
「これからよろしくな、リザ」
俺はリザの頭を撫でた。すると彼女は気持ちよさそうに目を細めた。こうして俺はアーガスの街で初めての奴隷を所有することになった。
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