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ある日のこと、俺たちは馬車に乗ってギルド本部のある王都へと向かっていた。
「緊張するわ……ギルド本部長に会えるのはもごく一部の冒険者だけよ……」
「そうだな。俺たちも今回が初めてだ」
俺たちが緊張していると、セレナさんが話しかけてきた。
「そんなに固くなる必要はないわ。ただギルド本部の会議に出席するだけよ」
彼女はそう言って微笑んだ。しかし彼女の目の下にはうっすらと隈ができていることに気づく……きっと準備で忙しかったんだろう……するとエステルが、心配そうな表情で尋ねる。
「ねぇセレナちゃん……本当に大丈夫なの? もし何かあったら言ってね?」
「大丈夫よ。心配してくれてありがとう……」
セレナさんはそう言うと、優しくエステルの頭を撫でた。その微笑ましい光景を目にして、俺も思わず笑みを浮かべるのだった……
『主よ、向こうから血の匂いがする。魔物が一般人を襲っているようだ』
「なに!?」
俺は急いで馬車から降りると、血の匂いのする方向に向かって走り出した。するとそこには魔物に襲われている一人の男性の姿があった!
「風神刃(エアリアル・ブレイド)!」
俺は風の刃を飛ばして魔物を切り裂いた。男は驚いた顔で俺を見ている。
「大丈夫ですか?」
「はい……助けていただきありがとうございます」
男は背中に大きな傷があった。
「すぐに治療します!」
「そんな……我々のような一般人には、無料で治療魔法を使ってはくれないのに……」
男が感激した表情で言う。
「困っている人がいれば、誰であろうと助けるのが冒険者です」
俺は男に回復魔法をかけて傷を癒やした。
「見事だ。君は実力と人格、どちらも備えている。君のような冒険者なら、安心してSランクの称号を任せられる」
「どうして俺ががSランクだと知ってるのですか?」
「私はバーンズ。ギルド本部長を務めている者だ」
「あなたがギルド本部長……」
俺は驚いた。まさか目の前にトップがいるとは思わなかったからだ……
「そうとも知らずに無礼な真似をしてしまった……」
「なに、気にするな。普段通りで構わない」
「ありがとうございます」
俺が礼を言うと、バーンズさんは笑顔を浮かべる。
「ギルド本部まで案内してあげよう」
俺たちはバーンズさんについていくことにした。
◇
ギルド本部は、アーガスの街のギルドよりも何倍も立派な作りだった。その大きさに圧倒されてしまう。
「ここで待っていてくれ」
バーンズさんはそう言うと、建物の中に入っていった。俺はセレナさんと一緒に待つことにする。しばらくすると、バーンズさんが一人の女性を連れて戻ってきた。
「彼女は秘書のミレーヌ・ユーズリアだ」
美しい女性だった。長い金髪を後ろで結び、眼鏡をかけているのが特徴的だ……知的な感じのする美人である。年齢は30代後半くらいだろうか?
「ミレーヌです。よろしくお願い致します」
ミレーヌさんは丁寧にお辞儀をする。
「君の活躍は最高峰の冒険者にふさわしい物だった。これを受け取りたまえ」
バーンズさんは俺に一枚の書状を差し出した。
「任命書だ。これで【不滅の翼】は正式なSランクパーティーとして認められるだろう」
「ありがとうございます!」
俺は感謝の気持ちを込めて頭を下げる。ついに俺たちはSランク冒険者になったのだ。嬉しくて涙が出そうになる……
「それからもう一つ……カイト君。これはまだ打診の段階なのだが、【特S級】になるつもりはないか?」
「【特S級】?」
「Sランク冒険者の中でも、特に優れている者たちに与えられる称号だ」
「すごいわ! カイト君!」
「カイト様なら当然です」
仲間たちが祝福の言葉をかけてくれる。
「聞き捨てならないな」
聞き覚えのない男の声が聞こえてきた。
「誰だ?」
俺が振り向くと、そこには一人の青年が立っていた。金髪の髪を長く伸ばしており、整った顔立ちをしている。年齢は20代半ばくらいだろうか?
「私はリチャード。君と同じSランク冒険者だ」
「リチャード……もしかして【閃光のリチャード】か!?」
俺は目の前の男のことを知っている。Sランク冒険者にして、最強の剣士と称される男だ。俺がまだ冒険者になる前に、憧れていた存在でもある。
「私を差し置いてどうしてこの新参者が【特S級】に? 納得がいかないな」
リチャードは俺に対して鋭い視線を向けている。どうやら彼は俺のことを快く思っていないらしい……
「リチャード。それは君の目が節穴だからだよ」
バーンズさんは呆れたようにため息をつく。
「では君に決闘を挑む! もし私が勝てば【特S級】の称号は私に譲ってもらう」
「構いません」
俺たちは本部のコロシアムにて戦うことになった。
「始め!」
審判の合図と同時にリチャードが閃光のように動いた。目にも止まらぬ速度で切りかかってくる。
「遅い」
勝負は一瞬だった。俺がリチャードの剣を弾き飛ばすと、次の瞬間には喉元に剣を突きつけている。
「勝負あったな」
俺は剣を下ろす。するとリチャードはその場に膝をついた。まさか負けるとは思いもしなかったのだろう……彼の顔には驚きの表情が浮かんでいた。
「カイト君、おめでとう!」
「おめでとうございます!」
仲間たちが祝福の言葉をかけてくれる。俺はSランク冒険者として認められたことがとても嬉しかった……俺たちはギルド本部長にお礼を言った後、王都を観光してから街へと帰ることにした……
「緊張するわ……ギルド本部長に会えるのはもごく一部の冒険者だけよ……」
「そうだな。俺たちも今回が初めてだ」
俺たちが緊張していると、セレナさんが話しかけてきた。
「そんなに固くなる必要はないわ。ただギルド本部の会議に出席するだけよ」
彼女はそう言って微笑んだ。しかし彼女の目の下にはうっすらと隈ができていることに気づく……きっと準備で忙しかったんだろう……するとエステルが、心配そうな表情で尋ねる。
「ねぇセレナちゃん……本当に大丈夫なの? もし何かあったら言ってね?」
「大丈夫よ。心配してくれてありがとう……」
セレナさんはそう言うと、優しくエステルの頭を撫でた。その微笑ましい光景を目にして、俺も思わず笑みを浮かべるのだった……
『主よ、向こうから血の匂いがする。魔物が一般人を襲っているようだ』
「なに!?」
俺は急いで馬車から降りると、血の匂いのする方向に向かって走り出した。するとそこには魔物に襲われている一人の男性の姿があった!
「風神刃(エアリアル・ブレイド)!」
俺は風の刃を飛ばして魔物を切り裂いた。男は驚いた顔で俺を見ている。
「大丈夫ですか?」
「はい……助けていただきありがとうございます」
男は背中に大きな傷があった。
「すぐに治療します!」
「そんな……我々のような一般人には、無料で治療魔法を使ってはくれないのに……」
男が感激した表情で言う。
「困っている人がいれば、誰であろうと助けるのが冒険者です」
俺は男に回復魔法をかけて傷を癒やした。
「見事だ。君は実力と人格、どちらも備えている。君のような冒険者なら、安心してSランクの称号を任せられる」
「どうして俺ががSランクだと知ってるのですか?」
「私はバーンズ。ギルド本部長を務めている者だ」
「あなたがギルド本部長……」
俺は驚いた。まさか目の前にトップがいるとは思わなかったからだ……
「そうとも知らずに無礼な真似をしてしまった……」
「なに、気にするな。普段通りで構わない」
「ありがとうございます」
俺が礼を言うと、バーンズさんは笑顔を浮かべる。
「ギルド本部まで案内してあげよう」
俺たちはバーンズさんについていくことにした。
◇
ギルド本部は、アーガスの街のギルドよりも何倍も立派な作りだった。その大きさに圧倒されてしまう。
「ここで待っていてくれ」
バーンズさんはそう言うと、建物の中に入っていった。俺はセレナさんと一緒に待つことにする。しばらくすると、バーンズさんが一人の女性を連れて戻ってきた。
「彼女は秘書のミレーヌ・ユーズリアだ」
美しい女性だった。長い金髪を後ろで結び、眼鏡をかけているのが特徴的だ……知的な感じのする美人である。年齢は30代後半くらいだろうか?
「ミレーヌです。よろしくお願い致します」
ミレーヌさんは丁寧にお辞儀をする。
「君の活躍は最高峰の冒険者にふさわしい物だった。これを受け取りたまえ」
バーンズさんは俺に一枚の書状を差し出した。
「任命書だ。これで【不滅の翼】は正式なSランクパーティーとして認められるだろう」
「ありがとうございます!」
俺は感謝の気持ちを込めて頭を下げる。ついに俺たちはSランク冒険者になったのだ。嬉しくて涙が出そうになる……
「それからもう一つ……カイト君。これはまだ打診の段階なのだが、【特S級】になるつもりはないか?」
「【特S級】?」
「Sランク冒険者の中でも、特に優れている者たちに与えられる称号だ」
「すごいわ! カイト君!」
「カイト様なら当然です」
仲間たちが祝福の言葉をかけてくれる。
「聞き捨てならないな」
聞き覚えのない男の声が聞こえてきた。
「誰だ?」
俺が振り向くと、そこには一人の青年が立っていた。金髪の髪を長く伸ばしており、整った顔立ちをしている。年齢は20代半ばくらいだろうか?
「私はリチャード。君と同じSランク冒険者だ」
「リチャード……もしかして【閃光のリチャード】か!?」
俺は目の前の男のことを知っている。Sランク冒険者にして、最強の剣士と称される男だ。俺がまだ冒険者になる前に、憧れていた存在でもある。
「私を差し置いてどうしてこの新参者が【特S級】に? 納得がいかないな」
リチャードは俺に対して鋭い視線を向けている。どうやら彼は俺のことを快く思っていないらしい……
「リチャード。それは君の目が節穴だからだよ」
バーンズさんは呆れたようにため息をつく。
「では君に決闘を挑む! もし私が勝てば【特S級】の称号は私に譲ってもらう」
「構いません」
俺たちは本部のコロシアムにて戦うことになった。
「始め!」
審判の合図と同時にリチャードが閃光のように動いた。目にも止まらぬ速度で切りかかってくる。
「遅い」
勝負は一瞬だった。俺がリチャードの剣を弾き飛ばすと、次の瞬間には喉元に剣を突きつけている。
「勝負あったな」
俺は剣を下ろす。するとリチャードはその場に膝をついた。まさか負けるとは思いもしなかったのだろう……彼の顔には驚きの表情が浮かんでいた。
「カイト君、おめでとう!」
「おめでとうございます!」
仲間たちが祝福の言葉をかけてくれる。俺はSランク冒険者として認められたことがとても嬉しかった……俺たちはギルド本部長にお礼を言った後、王都を観光してから街へと帰ることにした……
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