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翌日、俺は王宮に潜入するために正門に向かっていた……正門には門番が数人立っており、出入りする人々をチェックしているようだった。俺はフードを被っているため顔は見られていないと思うが、念のためフードは深く被り直すことにした。


(さて、ここからは気を引き締めていかないとな……)


そう自分に言い聞かせると正門へ向かって歩き出す。一歩ずつ歩みを進めるたびに緊張感が増してくるのが分かった。

そしていよいよ正門に辿り着く……俺は深呼吸をすると門番に話しかけることにした。


「すまない、中に入りたいんだが……」


俺が言うと門番は怪訝な表情を浮かべる。


「お前は誰だ? 身分証明書を見せろ」


予想通りの反応だったので俺は懐からギルドカードを取り出すと門番に見せた。するとそれを見た門番の表情が変わる……どうやら本物だと分かったらしい。


(よし、ここまでは順調だな)


心の中で呟くとそのまま話を続けることにする。


「実は王国に観光に来たんだが、宿が取れなくて困っていたんだ……だからここを通りがかった時にちょうど良いと思って……」


俺はそう言うと門番の反応を見ることにした。すると彼は少し考えた後で口を開く。


「分かった、通っていいぞ」


彼はそう言うと道を開けてくれる……どうやら怪しまれずに済んだようだ。


「ありがとう」


俺は礼を言うと門を通って行った。王宮の中は広く、綺麗に整備されているようだった。天井からは豪華なシャンデリアが吊り下げられており、床一面には赤い絨毯が敷かれている……まさに宮殿と言った感じだ。


(さて、まずは情報を集めるか)


そう思った俺は情報収集を始めることにした……といっても具体的な方法はまだ思い付いていないのだが、とりあえず王宮の使用人に話を聞くのが良さそうだ。早速近くにいたメイドに話しかけてみることにする。


「すまないが、少し話を聞かせてくれないか?」


俺が言うと彼女はニッコリと笑った。


「はい、私で良ければ喜んで」


俺は頷くと口を開く。


「王女様について話を聞きたいんだが……」


俺が言うと彼女は頷いた後、話し始めた。


「分かりました、それではこちらへどうぞ」


彼女に案内されて進むと応接室のような場所に通される。そしてソファに座るよう促されたので素直に従うことにした。座ったところで早速質問をしてみることにする。


「早速なんだが、王女様のことについて教えてくれないか?」


俺が聞くと彼女は頷く。


「かしこまりました」


そして王女について話し始めた。どうやら王女の名前はエレナと言い年齢は17歳らしい。容姿端麗で才色兼備、その上誰にでも優しい性格の持ち主だということだった。


「なるほどな……」


俺が呟くと彼女は再び口を開く。


「それともう一つだけお伝えしておきたいことがあります」


そう言うと少しだけ声のトーンを落とした……どうやらここからが本題のようだ。俺も姿勢を正すと耳を傾けることにする。


「実は王女様は最近、体調を崩されているようなのです」


俺はそれを聞いて首を傾げた。体調が悪いというのはどういうことだろうか……?


「それは具体的にどんな症状なんだ?」


俺が聞くと彼女は真剣な表情で答えた。


「それが……王女様が突然倒れたり、幻覚を見るようになったりしているという噂を聞いたことがあります」


(なるほど、そういうことか……)


恐らく洗脳の影響が出ているのだろう。恐らく王国の人間は皆、操られているはずだ。一刻も早く王女を見つけ出し助け出さなければいけないな……俺は心の中でそう決意を固めるのだった。


「分かった、ありがとう」


俺が礼を言うと彼女は一礼して去って行った。その後ろ姿を見つめながら考える……王女が監禁されているとすれば恐らく地下牢だろう。まずはそちらに向かうことにしようと思う。

それから俺は王宮内を歩き回りながら情報を集めることにした……使用人や衛兵などに話を聞いてみたところ、エレナ王女は滅多に人前に姿を見せないらしい。そのため姿を見たことがある人間は限られているようだ。


(さて、どうするかな……)


そんなことを考えながら歩いていると目の前に扉が見えた。恐らくこの中が地下室への入り口だろう。俺は音を立てないように注意しながら扉を開けた……そして中に入っていくことにする。

地下牢へと続く階段は暗くジメッとした雰囲気だった。俺は警戒しながら降りて行くことにした。そして地下に辿り着くとそこには鉄格子の扉があった……間違いない、ここが王女を幽閉するための場所だろう。


(さて、どうやって侵入するかだな)


そう考えていると不意に声が聞こえてきた。


「そこにいるのは誰ですの?」


その声に驚いて顔を上げるとそこには一人の女性が立っていた。年齢は17歳くらいだろうか、長い銀髪に透き通るような青い瞳が特徴的である。そして何より目を引くのはその美貌だろう……思わず見惚れてしまうほどだった。


(これが王女か……)


心の中で呟くと俺はゆっくりと立ち上がった。


「初めまして、私は冒険者のアベルと申します」


俺が名乗ると彼女は驚いたように目を見開く。


「まぁ、貴方が例の……お会いできて光栄ですわ」


「ここから出して差し上げます、どうぞこちらへ……」


俺が言うと彼女は首を横に振った。


「いえ、それはできませんわ」


彼女はそう言うと悲しそうな表情を浮かべる。


「どうしてですか?」


俺が聞くと彼女は静かに話し始めた。


「実は私、この国の王女なのですが……最近、体調が悪いのです」


「それはどのような?」


俺が聞くと彼女は辛そうに顔を歪める。


「それが……突然目眩に襲われたり幻覚を見たりするようになって……」


(やはりそうか……)


俺は確信する。洗脳の効果が現れている証拠だ。このまま放っておくと彼女の命も危ないだろう。


「……分かりました、では私が治して差し上げましょう」


俺が言うと彼女は驚いたように目を見開いた後、嬉しそうな表情を浮かべる。


「本当ですか!?」


「はい、任せてください」


俺は力強く答えた。


「ありがとうございます……!」


彼女はそう言って頭を下げると俺の手を取った。そして牢屋の鍵を開けるように指示する。俺はそれに従って鍵を開けると王女の手を引いて外へ連れ出したのだった……
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