「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした～今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります～

22

2人の戦いが終わった翌日、俺は朝から自室で過ごしていた。ちなみにアリサとマリーナは館の中庭で修行をしているようだ。


（平和だな……）


俺は窓の外を眺めながらそう思う。昨日のような騒動が嘘のようだ……すると、誰かがドアをノックする音が聞こえてきた。


「はーい」


俺が返事をすると、ドアを開けて現れたのはアリスだった。彼女は微笑みながら言った。


「アベルさん、ちょっといいですか？」


「ああ、いいけど……」


（一体何の用だろう？）


俺が首を傾げているとアリスは部屋の中に入ってきた。そして俺の目の前まで来ると口を開く。


「実はですね……」


彼女は少し恥ずかしげに言った。


「私とデートして欲しいんです」


俺は驚いて目を見開く……まさか彼女から誘われるとは思わなかったのだ。アリスは頰を赤らめている。


「ダメでしょうか？」


（断る理由はないよな……）


俺は心の中で呟くと彼女に笑いかけた。


「もちろんいいよ」


それを聞いた瞬間、アリスの表情がパアッと明るくなる。そして俺の手を取ると、嬉しそうにブンブン振った。


「ありがとうございます！ 嬉しいです！」


「あはは……じゃあ準備してくるよ」


俺は苦笑いすると、着替えるために自室を出た。そして顔を洗ってから服を着替えると、アリスの元へ向かう。


「お待たせ」


俺が声をかけると彼女は振り向いた。


「あ、アベルさん！」


俺を見た途端、彼女の顔がさらに明るくなる……その笑顔を見ていると思わず見惚れてしまいそうだ。


（可愛いな……）


俺が心の中で呟いていると、彼女は俺の手を取って歩き始めた。俺たちは街の中心に向かって歩いていく……その間も俺はずっと彼女の横顔を見ていた。


（綺麗だ……）


改めてそう感じさせられる。しばらくして俺たちは大通りに着いた。街は賑わいを見せており、たくさんの人々が行き交っている。


（なんかデートっぽいな……）


俺はそんなことを考えながら歩いていると、アリスが話しかけてきた。


「どこに行くか決めてるんですか？」


「いや、特に……」


俺は苦笑いしながら答える。すると彼女は少し考え込んだ後、ニコッと笑った。


「じゃあ私がエスコートしますよ」


そう言うとアリスは俺の手を引いて歩き始めた。そして近くにあった洋服屋に入る。


「わぁ、これ可愛いですね！」


アリスは目を輝かせながら服を選んでいた。その姿はとても楽しそうで見ているこっちまで楽しくなってくる。


（なんかデートって感じだな……）


俺は心の中で呟くと彼女の様子を見守っていた。しばらくしてアリスは気に入った服が見つかったらしく、それを手に取り試着室へと向かった。そして数分後、着替え終わった彼女が姿を現す。


「どうですか？」


彼女は恥ずかしそうに聞いてきた。俺は素直な感想を述べることにする。


「似合っていると思うよ」


「本当ですか！？」


彼女は嬉しそうに言った。その姿はまるで天使のようでとても可愛らしい。


（これは抱きしめたくなるな……）


俺は衝動的に彼女を抱きしめようとしたが、なんとか思い留まった。さすがに公衆の面前でそんなことしたらまずいだろう……幸い周りに人はいなかったが、いつ誰が来るかわからないからな。


「じゃあそろそろ行こうか」


俺が言うとアリスは笑顔で頷いた。そして俺たちは店を後にしたのだった……それから数時間後、俺とアリスは街外れにある丘の上に立っていた。目の前に広がる景色を眺めながら俺は口を開く。


「綺麗だな……」


俺が呟くとアリスも同意して言った。


「はい、本当に綺麗ですね……」


俺たちはしばらくの間、無言のまま景色を眺めていた……その間、俺の手には温かい感触が伝わってくる。


（なんか緊張するな……）


俺は心の中で呟いた。チラッと隣を見るとアリスは頰を赤らめているのがわかる。おそらく俺と同じように緊張しているのだろう……だが、手を離そうとはしないようだ。そんな彼女を見ていると俺も胸が高鳴ってきた。


「アリス……」


俺が名前を呼ぶと彼女はビクッとして俺の方を振り向いた。そして俺の顔を見るなり頰を赤らめると俯く……その様子が可愛くて仕方がない。


（もっと近くに行きたい）


俺はそう思いながら彼女に近づいた。そして彼女を抱きしめると耳元で囁く。


「愛してるよ」


「私もです……」


彼女は消え入りそうな声で答えた。その声はとても甘く、俺の脳を刺激する……


（たまらないな……）


俺はアリスの顎に手を当てて上を向かせた。そして顔を近づけていく……彼女は静かに目を閉じた。


「んっ……」


唇を重ねる……その瞬間、俺は頭の中で何かが弾けるような感覚を覚えた。


（もう我慢できない……！）


俺は彼女を押し倒して馬乗りになった。彼女は驚いた表情を浮かべるがすぐに笑顔に変わる。そして俺の首に腕を回してきた。それが合図となり俺たちは激しく求め合う……しばらくした後、ようやく唇を離した時にはお互い息が上がっていた。


「はぁ……はぁ……」


呼吸を整えながら見つめ合う。アリスの瞳に俺が映っていた……それがとても幸せなことのように感じられた。


「ふふっ……」


彼女はクスッと笑うと俺に抱きついてくる。そして俺の胸に顔をうずめた。


「今日は本当に楽しかったです！」


「俺もだよ」


俺は微笑みながら答えた。アリスは嬉しそうに微笑むと言葉を続ける。


「また一緒に行きましょうね！」


「ああ、もちろんだ」


（次はどこに行こうかな？）


俺は頭の中で考える……まあ、それはその時決めればいいだろう。それよりも今は彼女と過ごす時間を大切にしようと思う。


「アリス、愛してるよ」


俺はそう言うともう一度キスをした……アリスは幸せそうな表情を浮かべて目を閉じる……俺はそんな彼女を愛おしそうに抱きしめた。いつまでもこうしていたい……心からそう思った瞬間だった。