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ある日のこと、俺は魔王アンリエッタに呼び出された。王宮に到着すると部屋に通される。そこには既に魔王アンリエッタがいた。彼女は俺に視線を向けると話しかけてくる。


「よく来たのじゃ」


「急に呼び出して一体どうしたんだ?」


俺が質問するとアンリエッタは真剣な表情を浮かべたまま口を開いた。


「実は最近、魔王領の各地でホーリーセイント教団という宗教団体が魔王領に攻撃を仕掛けておる」


「ホーリーセイント教団? 聞いたことないな……」


俺が首を傾げながら言うと、アンリエッタは説明を始めた。


「ホーリーセイント教団はアミルダ共和国に本部を置く宗教組織じゃ。その教義では、魔族や亜人族に対して差別的な思想を持っておるらしい……そして彼らは魔族狩りと称して魔族を殺して回っているのじゃ」


「つまり、魔王領の村を襲っているのもその教団ってことか?」


「恐らくはそうじゃろう……」


「それで、俺にどうしろと?」


俺が質問すると彼女は答えた。


「そなたにはその教団を壊滅してほしいのじゃ」


「具体的にどうするんだ?」


俺が聞き返すとアンリエッタは答えた。


「まずは教団の拠点を突き止めるのじゃ。その後、信者たちを一人残らず始末する……そして最後にリーダーを捕まえれば完璧じゃ」


「なるほど、だいだいわかった」


俺は頷くと早速出かける準備をする。するとアンリエッタが言った。


「頼んだぞ、我が夫よ……」


「ああ、任せろ」


俺は返事をすると、転移魔法でアミルダ共和国へ飛んだ。


(ここがアミルダ共和国か……)


初めて訪れた国だが活気溢れる良い街だと感じた。中心には大きな白い建物が目立つ。


「あれがホーリーセイント教団の本部か……」


俺はそう呟くと、建物に向かって歩き始めた。しばらく歩いていると目の前に数人の信者が立ち塞がってきた。


「おい! お前! 何者だ!」


「ホーリーセイント教団を潰しに来た者だ」


「なに!?」


俺の言葉に信者は狼狽える。するとそこに他の信者たちも集まってきた。全部で20人ほどいるだろうか……全員武器を持っており、敵意を剥き出しにしている。


「お前らの信じるものは俺が潰す」


俺は拳を構えると、奴らに言い放った。


「異教徒に死を!」


信者たちは一斉に襲いかかってくる。しかし俺はそれを軽々と避けていき、一人ずつ確実に倒していった。


「何だコイツは!?」


「強すぎる!」


信者たちが慌てふためく中、俺は一瞬で距離を詰めると次々に殴り倒していった。彼らは地面に倒れると気絶したようだ……残った信者たちも恐怖で震えている。


「さて、最後はお前か……」


俺は男に向かって歩き出した。男は恐怖で震えているが、なんとか声を絞り出すようにして言った。


「お、お願いだ……殺さないでくれ!」


「じゃあ教祖の元へ案内してもらおうか」


「わ、わかった……」


男は素直に従うと案内を始めた。俺はその後に続く。そして男の後をついていくと一際大きな建物が見えてきた。中に入ると広い空間が広がっている。そこには信者と思われる人たちが祈りを捧げていた。


「教祖様は奥の部屋にいる」


俺は信者を気絶させると、言われた通り奥の部屋へと向かう。


「ここは教祖様以外立ち入り禁止です!」


信者たちが立ち塞がってきた。しかし俺はそれを軽く蹴散らすと奥へ進んでいく……すると大きな扉が現れた。中に入るとそこには一人の人物が立っていた。その男は長身瘦軀で白いローブを羽織っていた。年齢は30代くらいだろうか……鋭い目つきをしており、口元には笑みを浮かべていた。そして手には杖を持っていることから魔法使いだと推測できる。


「ようこそ、我が教団へ……」


男は落ち着いた口調で話しかけてきた。


「お前が教祖だな?」


「ええ、私がホーリーセイント教団の教祖、ハーフィズと申します」


「アベルだ……単刀直入に言うが、今すぐ魔王領から手を引くんだ」


「それはできませんね……」


ハーフィズは即答した。そして続けて言った。


「我々は魔族を殲滅するという崇高な目的を掲げているのです。それを止めるということはすなわち神の望みの妨げになるということ……そのような愚行を犯すわけにはいきません」


「そうか、なら仕方ないな……」


俺は拳を構えると、ハーフィズに向かって走り出した。そして強烈な一撃を叩き込む……しかしそれは彼の杖によって防がれてしまった。


「ふむ……なかなか良いパンチだ」


彼は余裕の表情で笑う。俺は一旦距離を取ると再び攻撃を仕掛けた。今度は蹴りを放つもそれも避けられてしまう。その後も様々な攻撃を繰り出すが全て防がれるか避けられるばかりだ……


「その程度ですか?」


ハーフィズは挑発的な言葉を投げかけてくる。俺は一旦呼吸を整えると再び攻撃を仕掛けた。しかしそれも難なく受け止められてしまう……その後も何度も攻撃を繰り出すが全て防がれてしまった。


「もう終わりですか?」


ハーフィズは再度挑発的に笑った。


「……面白い」


まるでゲームを楽しむかのように余裕を見せるハーフィズの態度が、逆に俺の闘志を燃え上がらせる。


「お前がそこまで強いとは思わなかった。だが、俺の本気を見たことがないな」


「ほう? 本気とは……?」


その瞬間、俺の体から強烈なオーラが放たれ、部屋全体が揺れた。信者たちは恐怖のあまりその場に崩れ落ち、壁に飾られた装飾品がガラガラと音を立てて落ちていく。


「見せてやるよ、俺の力を」


俺は集中し、全身の力を解放した。地面が割れ、空気が重くなる。その場にいる誰もが息を飲んだ。ハーフィズですら、その圧倒的な力に一瞬たじろいだ。


「これは……!」


俺の拳は光の速さでハーフィズに向かって飛んでいった。彼は一瞬で防御の魔法を唱えたが、俺の拳はその防御を粉砕し、ハーフィズの体を宙に浮かせた。衝撃で彼は壁に叩きつけられ、床に倒れ込んだ。


「お前の信念は立派だが、それが間違った方向に向かうなら俺が止める」


ハーフィズは痛みに呻きながらも、再び立ち上がろうとした。その瞬間、俺は彼の前に瞬間移動し、手を彼の喉元に突きつけた。


「これで終わりだ。魔王領から手を引くか、それともここで終わりにするか、選べ」


ハーフィズは息を整え、俺を見上げた。そして、彼の目にある決意が揺らいでいることに気づいた。


「……分かった。我々は手を引こう」


俺はゆっくりと手を引いた。ハーフィズは深く息を吐き、周囲に倒れている信者たちに向けて命じた。


「皆、退却だ。魔王領への攻撃は中止する。」


その言葉を聞き、信者たちは驚きながらも命令に従い始めた。俺は静かにその光景を見守った。


「覚えておけ、ハーフィズ。もし再び魔王領に手を出すようなことがあれば、その時は容赦しない」


ハーフィズは苦笑しながら頷いた。


「……理解した」


俺はその場を立ち去り、アミルダ共和国を後にした。魔王アンリエッタに報告をするために転移魔法を使って王宮に戻ると、彼女は俺の姿を見て微笑んだ。


「ご苦労だったな、我が夫よ」


「全て解決した。もうホーリーセイント教団は魔王領に手を出さない」


「そうか……さすがじゃ。やはりそなたは最強の存在じゃ」


俺は彼女の言葉に微笑み返し、これからも彼女と共に魔王領を守り抜くことを心に誓った。
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