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ある日のこと、俺たちはアーガスの郊外にある古びた屋敷を訪れていた。目的はこの屋敷に住む吸血鬼の討伐だ。
「ここが吸血鬼の住処か……」
『アベルさん、気を付けてください。吸血鬼は強力な相手です!』
「ああ、分かってるさ」
屋敷の扉を開けると埃っぽい空気が漂ってきた……部屋の中は薄暗く不気味な雰囲気を放っている。
「ギギィ!」
天井から巨大な蜘蛛が落ちてきた。それは鋭い牙をむき出しにして襲い掛かってくるが、俺は軽くあしらって蹴り飛ばした。そしてそのまま屋敷の中を探索していく……
『アベルさん、こっちに何かあります!』
フィーネに誘われるままついて行くと、そこには地下へと続く階段があった。階段を下りていくと広い部屋に出た……そこには多くの書物や実験器具などが散乱しており、不気味な雰囲気が漂っている。そして部屋の中央に置かれた椅子には一人の女性が座っていた……その女性は長い金髪で赤い瞳をしていた。彼女はこちらに気づくとゆっくりと立ち上がり、妖艶な笑みを浮かべた。
「ようこそ我が屋敷へ……」
「お前が吸血鬼か?」
「ええそうよ……私はこの屋敷の主であるレティシア・ヴァン・アーカードよ。何の用で来たのかしら?」
「お前を討伐しに来た」
「へぇー、面白いことを言うのね。人間が私に勝てるとでも思っているのかしら?」
「もちろんそのつもりだ」
俺がそう答えると、彼女は妖しい笑みを浮かべた。そしてゆっくりと近づいてくる……
『アベルさん! 気を付けてください!』
フィーネの忠告通り、レティシアは鋭い爪で切り裂いてきた。しかし俺はそれを難なく避けると反撃に出た。拳を振りかざして彼女の顔面を狙うも寸前のところで避けられてしまう……
「あら、なかなかやるじゃない」
レティシアは再び間合いを取ると今度は魔法を放った。無数の血の槍が飛んでくるが全て避けきる……そして俺は一気に距離を詰めると彼女に拳を振るった。しかしそれは血の盾によって受け止められてしまう。
「ちっ……」
俺は舌打ちをして後ろに下がった。
『アベルさん、大丈夫ですか?』
「ああ、問題ない」
フィーネの声に答えながらも油断なく身構える……するとレティシアは再び間合いを詰めてきた。そして鋭い爪を振りかざしてくるがそれを躱すと、俺は彼女の腕を掴み投げ飛ばした。だがレティシアもすぐに体勢を立て直して立ち上がる……そして再び攻撃を仕掛けてきた。しかし今度は俺も反撃に出た。拳を振るい彼女を吹き飛ばすとさらに追撃をかける。
「これで終わりだ!」
俺は飛び上がると渾身の蹴りを放った。しかしその一撃はレティシアに受け止められてしまう……彼女は不敵な笑みを浮かべると俺の足を強く握りしめた。骨が軋む音が聞こえてくる。激痛が走ると同時に力が抜けていった。そしてそのまま地面に叩きつけられてしまう……
『アベルさん!』
フィーネの心配そうな声が聞こえる中、俺はゆっくりと立ち上がった。
「なかなかやるじゃないか……」
「あなたもね」
俺たちは互いに笑みを浮かべていた……次の一撃で勝負が決すると確信したからだ。
「行くぞ!」
俺が叫ぶと同時にレティシアが攻撃を仕掛けてきた。目にも止まらぬ速さで繰り出される斬撃を躱し、受け流す……そして隙を見て拳を突き出した。しかしそれは避けられてしまう。次に蹴りを放つもこれも避けらてしまう……しばらく激しい攻防が続いた後、ついに決着の瞬間がやってきた。
「これで終わりだ!」
俺は渾身の力で拳を振り抜いた。その一撃は見事に命中して彼女を吹き飛ばした。壁に激突した彼女は力なく崩れ落ちる……
「やったのか?」
俺が呟くと同時にレティシアが起き上がった。彼女は口から血を流しながらも不敵な笑みを浮かべていた……
「まさかここまでやるとは思わなかったわ……」
「まだやるのか?」
「いいえ、もう満足したわ」
そう言うと彼女はその場に座り込んだ。そして俺に向かって話しかけてきた。
「ねえ、あなた名前はなんていうの?」
「アベルだ」
「そう、いい名前ね。また会える日を楽しみにしているわ」
レティシアは背中から蝙蝠のような翼を生やすと飛び去った……
『アベルさん、大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫だ」
俺はフィーネに答えると屋敷を出て行った。そしてそのまま帰路につくことにした……
「ここが吸血鬼の住処か……」
『アベルさん、気を付けてください。吸血鬼は強力な相手です!』
「ああ、分かってるさ」
屋敷の扉を開けると埃っぽい空気が漂ってきた……部屋の中は薄暗く不気味な雰囲気を放っている。
「ギギィ!」
天井から巨大な蜘蛛が落ちてきた。それは鋭い牙をむき出しにして襲い掛かってくるが、俺は軽くあしらって蹴り飛ばした。そしてそのまま屋敷の中を探索していく……
『アベルさん、こっちに何かあります!』
フィーネに誘われるままついて行くと、そこには地下へと続く階段があった。階段を下りていくと広い部屋に出た……そこには多くの書物や実験器具などが散乱しており、不気味な雰囲気が漂っている。そして部屋の中央に置かれた椅子には一人の女性が座っていた……その女性は長い金髪で赤い瞳をしていた。彼女はこちらに気づくとゆっくりと立ち上がり、妖艶な笑みを浮かべた。
「ようこそ我が屋敷へ……」
「お前が吸血鬼か?」
「ええそうよ……私はこの屋敷の主であるレティシア・ヴァン・アーカードよ。何の用で来たのかしら?」
「お前を討伐しに来た」
「へぇー、面白いことを言うのね。人間が私に勝てるとでも思っているのかしら?」
「もちろんそのつもりだ」
俺がそう答えると、彼女は妖しい笑みを浮かべた。そしてゆっくりと近づいてくる……
『アベルさん! 気を付けてください!』
フィーネの忠告通り、レティシアは鋭い爪で切り裂いてきた。しかし俺はそれを難なく避けると反撃に出た。拳を振りかざして彼女の顔面を狙うも寸前のところで避けられてしまう……
「あら、なかなかやるじゃない」
レティシアは再び間合いを取ると今度は魔法を放った。無数の血の槍が飛んでくるが全て避けきる……そして俺は一気に距離を詰めると彼女に拳を振るった。しかしそれは血の盾によって受け止められてしまう。
「ちっ……」
俺は舌打ちをして後ろに下がった。
『アベルさん、大丈夫ですか?』
「ああ、問題ない」
フィーネの声に答えながらも油断なく身構える……するとレティシアは再び間合いを詰めてきた。そして鋭い爪を振りかざしてくるがそれを躱すと、俺は彼女の腕を掴み投げ飛ばした。だがレティシアもすぐに体勢を立て直して立ち上がる……そして再び攻撃を仕掛けてきた。しかし今度は俺も反撃に出た。拳を振るい彼女を吹き飛ばすとさらに追撃をかける。
「これで終わりだ!」
俺は飛び上がると渾身の蹴りを放った。しかしその一撃はレティシアに受け止められてしまう……彼女は不敵な笑みを浮かべると俺の足を強く握りしめた。骨が軋む音が聞こえてくる。激痛が走ると同時に力が抜けていった。そしてそのまま地面に叩きつけられてしまう……
『アベルさん!』
フィーネの心配そうな声が聞こえる中、俺はゆっくりと立ち上がった。
「なかなかやるじゃないか……」
「あなたもね」
俺たちは互いに笑みを浮かべていた……次の一撃で勝負が決すると確信したからだ。
「行くぞ!」
俺が叫ぶと同時にレティシアが攻撃を仕掛けてきた。目にも止まらぬ速さで繰り出される斬撃を躱し、受け流す……そして隙を見て拳を突き出した。しかしそれは避けられてしまう。次に蹴りを放つもこれも避けらてしまう……しばらく激しい攻防が続いた後、ついに決着の瞬間がやってきた。
「これで終わりだ!」
俺は渾身の力で拳を振り抜いた。その一撃は見事に命中して彼女を吹き飛ばした。壁に激突した彼女は力なく崩れ落ちる……
「やったのか?」
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「まだやるのか?」
「いいえ、もう満足したわ」
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「ねえ、あなた名前はなんていうの?」
「アベルだ」
「そう、いい名前ね。また会える日を楽しみにしているわ」
レティシアは背中から蝙蝠のような翼を生やすと飛び去った……
『アベルさん、大丈夫ですか?』
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俺はフィーネに答えると屋敷を出て行った。そしてそのまま帰路につくことにした……
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