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翌日、俺はいつも通り領主館で仕事をこなしていた。


「おかしい……俺はスローライフ生活を送るために追放されたのにどうしてこんなに働いているんだ?」


『そりゃあ、アベル様がお人よしだからですよ』


「え? そうなの?」


『そうですよ!現に困っている人たちを放っておけないからこうやって働いてるじゃないですか!』


「うーん……まあそれもそうだな……」


俺は納得することにした。実際、困っている人を見ると放っておけない性分なのだ。それに俺が働いていることで皆が喜んでくれるのを見るのは嬉しいし……


「しかし仕事だけの人生も嫌だな……」


『じゃあ、アベル様は何をしたいんですか?』


「そうだな……趣味で畑を耕したり、釣りをしたりしてみたい」


『オヤジ臭いですね……』


「ほっとけ!」


『まあ、アベル様らしいですけどね』


「まあな……」


そんな会話をしていると突然ドアがノックされた。誰だろうと思い返事をすると入ってきたのはアリサだった。彼女は部屋に入ってくるといきなり俺の横に立つと言った。


「あのっ! 一緒に温泉に行きませんか?」


「温泉?」


「はいっ! アーガスの西にある温泉宿です!」


「温泉か……疲れを癒すには良さそうだな」


「本当ですか!?」


アリサの顔がパッと明るくなる。彼女は嬉しそうに笑った後、俺の手を引っ張ってきた。


「早く行きましょう!」


こうして俺はアリサと一緒に温泉に行くことになったのであった……





俺たちはアーガスの西にある温泉宿に来ていた。周囲には誰もおらず貸切状態だ。早速服を脱ぐと温泉に入ることにする。湯加減も丁度良くとても気持ち良かった。空を見上げると星が輝いているのが見えた。


(たまにはこういうのも良いかもな……)


そう思いながらボーっとしているといつの間にか隣にアリサがいた。


「アベルさん、気持ちいいですね!」


彼女は満面の笑みを浮かべている。


「ああ、そうだな……ってここは男湯だぞ!?」


「ふふっ、ここは混浴なんですよ」


アリサは小さく笑うと、俺の腕にしがみついてきた。柔らかい感触が伝わってくる……


「どうした?」


「いえ……ただこうしたかっただけです」


そう言うと彼女は更に強く抱きついてくる。


「アベルさん……大好きです」


次の瞬間、エミリーが勢いよくドアを開けて入ってきた。


「アベルさん! 私も一緒に入ります!」


「エミリー!? どうしてここに!?」


「私も温泉に来たんです! それよりもアリサさん、離れてください!」


エミリーが叫ぶと、アリサも負けじと言い返す。


「嫌です! アベルさんは私のものなんですから!」


「いいえ! 私のものです!」


二人は睨み合うとそのまま取っ組み合いを始めてしまった。俺は慌てて止めに入るが、なかなか収まらない……


「やれやれ……」


温泉から出ると、俺たちは温泉宿の名物料理を頂いた。山菜や川魚を使った料理はとても美味しく、ついつい食べ過ぎてしまった。


「アベル様、あーんしてください」


「いや、自分で食べられるから……」


「いいから早く!」


アリサは強引にスプーンを近づけてくる。俺は仕方なく口を開けた。するとそこに料理が運ばれる。


「美味しいですか?」


「ああ、美味いぞ」


俺が頷くと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。そして再び料理を食べさせてくれる。その様子を見ていたエミリーが羨ましそうな声を上げた。


「私もアベル様にあーんします!」


「駄目です! これは私がやるんです!」


アリサがそう言うと、エミリーは頬を膨らませた。そんな二人のやりとりを見て苦笑するしかない俺であった……


「やれやれ……」


その後、部屋に戻ると布団に入ることにしたのだが……


「アベル様と寝るのは私です!」


「いいえ! 私ですよ!」


エミリーとアリサはどちらが俺と一緒に寝るかで揉めていた。正直言ってとても面倒くさい……そう思った俺はある提案をした。


「なら三人で寝よう」


俺の言葉に二人は顔を真っ赤にする。そしてお互いに顔を見合わせると、小さな声で話し合いを始めたようだ。しばらくして結論が出たのか二人が同時にこちらを見ると言った。


「アベル様がそう言うなら……」


「仕方ないですね……」


どうやら納得してくれたようだ。俺はホッと胸を撫で下ろすと布団に入った……


「アリサさん、アベル様にくっつきすぎです!」


「エミリーさんこそ、アベルさんに近すぎませんか?」


「私はアベル様の婚約者ですから当然です!」


「私だってアベルさんの事が好きなんです!」


この二人の争いは終わることはなさそうだ……俺は小さくため息をつくと眠りについた……
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