1 / 30
1
しおりを挟む
「アベルよ。今日を持って貴様を我がコーネリア家から除名し、アーガスへと追放する!」
「あー、そうですか」
俺の反応に父上は顔をしかめる。
「貴様! この私を馬鹿にしているのか!」
父上は俺の態度に激昂するが、俺としてはどうでもいい。
「別に馬鹿になんてしてませんよ。この間の成人の儀式で俺に何のスキルもないから追放するんでしょ?」
この間の成人の儀式で俺は自分のスキルを鑑定したのだが、俺のスキル欄には『なし』と書いてあったのだ。
その途端、俺に対する期待は失望へと変わり、今まで俺をちやほやしてきた奴の態度が急変した。
「何のとりえもない貴様でも、せめてスキルだけは期待していたのだが……こうなれば仕方がない。さっさと荷物を纏めて出ていくがよい」
「分かりました。今までお世話になりました」
俺は頭を下げると荷物をまとめ、コーネリア家から出て行った。
◇
「はぁ、やっと自由になれたな……」
俺は馬車の荷台に腰かけて息を吐く。
成人して早々追放されたことで貴族でなくなったため、当然身分証も剥奪されてしまった。
そのため、これから俺が向かう場所は辺境の土地【アーガス】だ。追放だと角が立つから、俺を田舎の領主に任命する形で追放するそうだ。
『アベル様、これでいいんですか?』
俺の肩に乗ってる一羽の白い鳥が話しかけてくる。
「いいんだよ、これで」
この鳥は俺の使い魔だ。名を【フィーネ】といい、俺が幼い時からずっと一緒にいる。
『ですが……アベル様は何も悪いことしてないのに追放されるなんて間違ってます!』
「いいんだよ。父上はコーネリア家の面目を考えて俺を辺境に飛ばしたんだ。それに……」
俺は目の前に広がる光景に目を移す。目の前に広がるのは見渡す限りの草原だ。
「こんな素晴らしい場所を辺境呼ばわりするのは間違ってるだろ?」
『アベル様……』
俺はフィーネに笑いかけると、再び視線を景色に向ける。
「ここなら俺の念願の夢であるスローライフを送ることが出来そうだ」
俺ことアベルは転生者だ。一度目の人生はあらゆる剣技を収めし剣神と呼ばれ、二度目の人生は賢者として様々な魔法を編み出した。
『そんなアベル様がどうしてスローライフを送りたいと?』
「そりゃ働きたくないからだよ。剣聖にしろ賢者にしろ下手に力を持てば、色々な面倒ごとに巻込まれるからな」
『た、大変だったんすね……!』
「だから俺はスローライフを楽しみたいんだよ。幸い、アーガスは広大な領地だ。開拓すればいくらでも仕事があるはずだ」
『でもアベル様なら冒険者として魔物討伐の依頼とか受けれそうですけど』
「馬鹿野郎! そんな面倒なことしなくても領主になれば一生楽できるだろ!!」
『アベル様って……本当に自分の欲望に忠実ですね……』
「当たり前だろ。俺は前世から働かない人生のために生きてるからな」
俺がそう言い放つと、フィーネは呆れたようにため息をつくのであった。
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!」
突然、馬車の前に10メートルはありそうな巨大な熊が出現する。
「ギガントベアーか」
『え、Sランクのモンスターですよ!? アベル様、逃げてください!』
「おいおい、何言ってるんだよ。こんな雑魚相手に逃げるわけないだろ」
俺はギガントベアーへと向けて、指を向ける。
「バンッ」
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」
次の瞬間、ギガントベアーの体は消し飛んだ。
『え、今のは一体……?』
「ん? ああ、ただの火属性魔法だよ」
『ま、まさか……最上級魔法を使ったんですか?』
「はぁ? こんな奴に最上位魔法なんて使うかよ。ただの【ファイア】だよ」
『そ、そんな威力のファイアなんて聞いたことないです!』
「別にいいだろ? それよりもさっさとアーガスに向かうぞ」
『は、はい!!』
俺は困惑するフィーネをよそにアーガスに向かって馬車を進めるのだった。
「あー、そうですか」
俺の反応に父上は顔をしかめる。
「貴様! この私を馬鹿にしているのか!」
父上は俺の態度に激昂するが、俺としてはどうでもいい。
「別に馬鹿になんてしてませんよ。この間の成人の儀式で俺に何のスキルもないから追放するんでしょ?」
この間の成人の儀式で俺は自分のスキルを鑑定したのだが、俺のスキル欄には『なし』と書いてあったのだ。
その途端、俺に対する期待は失望へと変わり、今まで俺をちやほやしてきた奴の態度が急変した。
「何のとりえもない貴様でも、せめてスキルだけは期待していたのだが……こうなれば仕方がない。さっさと荷物を纏めて出ていくがよい」
「分かりました。今までお世話になりました」
俺は頭を下げると荷物をまとめ、コーネリア家から出て行った。
◇
「はぁ、やっと自由になれたな……」
俺は馬車の荷台に腰かけて息を吐く。
成人して早々追放されたことで貴族でなくなったため、当然身分証も剥奪されてしまった。
そのため、これから俺が向かう場所は辺境の土地【アーガス】だ。追放だと角が立つから、俺を田舎の領主に任命する形で追放するそうだ。
『アベル様、これでいいんですか?』
俺の肩に乗ってる一羽の白い鳥が話しかけてくる。
「いいんだよ、これで」
この鳥は俺の使い魔だ。名を【フィーネ】といい、俺が幼い時からずっと一緒にいる。
『ですが……アベル様は何も悪いことしてないのに追放されるなんて間違ってます!』
「いいんだよ。父上はコーネリア家の面目を考えて俺を辺境に飛ばしたんだ。それに……」
俺は目の前に広がる光景に目を移す。目の前に広がるのは見渡す限りの草原だ。
「こんな素晴らしい場所を辺境呼ばわりするのは間違ってるだろ?」
『アベル様……』
俺はフィーネに笑いかけると、再び視線を景色に向ける。
「ここなら俺の念願の夢であるスローライフを送ることが出来そうだ」
俺ことアベルは転生者だ。一度目の人生はあらゆる剣技を収めし剣神と呼ばれ、二度目の人生は賢者として様々な魔法を編み出した。
『そんなアベル様がどうしてスローライフを送りたいと?』
「そりゃ働きたくないからだよ。剣聖にしろ賢者にしろ下手に力を持てば、色々な面倒ごとに巻込まれるからな」
『た、大変だったんすね……!』
「だから俺はスローライフを楽しみたいんだよ。幸い、アーガスは広大な領地だ。開拓すればいくらでも仕事があるはずだ」
『でもアベル様なら冒険者として魔物討伐の依頼とか受けれそうですけど』
「馬鹿野郎! そんな面倒なことしなくても領主になれば一生楽できるだろ!!」
『アベル様って……本当に自分の欲望に忠実ですね……』
「当たり前だろ。俺は前世から働かない人生のために生きてるからな」
俺がそう言い放つと、フィーネは呆れたようにため息をつくのであった。
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!」
突然、馬車の前に10メートルはありそうな巨大な熊が出現する。
「ギガントベアーか」
『え、Sランクのモンスターですよ!? アベル様、逃げてください!』
「おいおい、何言ってるんだよ。こんな雑魚相手に逃げるわけないだろ」
俺はギガントベアーへと向けて、指を向ける。
「バンッ」
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」
次の瞬間、ギガントベアーの体は消し飛んだ。
『え、今のは一体……?』
「ん? ああ、ただの火属性魔法だよ」
『ま、まさか……最上級魔法を使ったんですか?』
「はぁ? こんな奴に最上位魔法なんて使うかよ。ただの【ファイア】だよ」
『そ、そんな威力のファイアなんて聞いたことないです!』
「別にいいだろ? それよりもさっさとアーガスに向かうぞ」
『は、はい!!』
俺は困惑するフィーネをよそにアーガスに向かって馬車を進めるのだった。
1,063
お気に入りに追加
1,024
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる