悪役令嬢の兄に転生したので、妹を聖女に生まれ変わらせます

8

数日後、俺とクロエとアリアはアルカディア王国に到着した。首都であるアルスに到着するとすぐに、王宮へと案内された。王宮に入ると、そこには美しいドレスに身を包んだリーベの姿があった。彼女は俺たちを見ると嬉しそうに微笑んだ。


「お待ちしておりましたわ、カイト様。そして、お連れの皆様もようこそおいでくださいました」


その言葉に、俺だけでなくクロエとアリアも恭しく一礼した。そして、リーベに案内されて奥の部屋へと通された。そこは応接室のような場所で、中央には大きなテーブルが置かれていた。俺たちは椅子に腰掛けた。すると、一人の男性が部屋に入ってきた。年齢は40歳前後だろうか？ がっしりとした体格で、鋭い眼光を放っている。その男性は俺たちに軽く会釈をした。


「私はアルカディア王国の将軍を務めているアルスと申します」


俺たちも名乗った後、リーベがアルスに尋ねた。


「それで、帝国の様子はどうかしら？」


「はい、奴らは国境線付近に集結しています。いつでも攻め込む準備をしているようです」


その言葉に俺は思わず立ち上がった。そして、アルスに向かって言った。


「今すぐに出発しましょう！ 一刻も早く戦争を終わらせなければ！」


しかし、リーベは首を横に振った。そして、静かに語り始めた。


「いいえ、まだ準備が整っておりませんわ。もう少し待ってから行きましょう」


その言葉に、俺は苛立ちを隠せなかった。


「しかし、こうしている間にも被害が出るかもしれないのですよ！ 一刻も早く行動を起こすべきです！」


俺の強い口調に、リーベは冷静に答えた。


「確かにあなたの仰る通りかもしれません。でも、今は準備をする時なのです」


その言葉に、俺は少し冷静さを取り戻した。そして、静かに腰を下ろした。その様子を見たアルスは安心したように微笑んだ。


「さすがカイト殿だ。冷静沈着で頼もしい限りですな」


俺はアルスに軽く会釈をした。すると、今度はリーベが口を開いた。


「カイト様、あなたは本当に素晴らしいお方です。あなたのような方と婚約できて光栄ですわ」


その言葉に、俺は苦笑いするしかなかった。


「いえ、こちらこそ光栄です……」


そんな会話を交わしながら、俺たちは出発の時を待ったのだった……


「それでは、出発しましょうか」


アルスの言葉に、俺たちは頷いた。そして、馬車に乗り込み出発したのだった。道中は特に何事もなく進んだ。しかし、国境に近づくにつれて緊張感が増してきた。そして、ついに帝国との国境線に到着したのだ。そこには既に多くの兵士たちが集結していた。


「カイト殿！ お待ちしておりました！」


一人の将軍らしき男が駆け寄ってきた。彼は俺に向かって敬礼をした。俺もそれに倣い、敬礼を返す。


「ご苦労様です。状況はどうですか？」


俺の言葉に、将軍は少し表情を曇らせた。


「それが……あまり芳しくありません……」


俺は眉をひそめた。一体どういうことだ？ すると、リーベが口を開いた。


「実は、帝国の将軍はかなりの強敵なのです。彼は非常に狡猾で、常にこちらの裏をかくような行動をとってくるのです」


その言葉に俺は納得したように頷いた。確かに一筋縄ではいかない相手らしい。しかし、ここで諦めるわけにはいかないのだ。俺は改めて決意を固めた。


「分かりました。それでは作戦を立てましょう！」


俺の言葉に、その場にいた全員が頷いた。そして、作戦会議が始まった。


「まず、我々がどう戦うべきかを考えましょう」


俺の言葉にアルスが大きく手を挙げた。


「まずは敵の戦力を把握する必要があるかと……」


その言葉に俺は頷いた。しかし、どうやってそれを知ればいいのだろうか？ すると、リーベが口を開いた。


「それならば、私が偵察に行ってきますわ」


その言葉に俺たちは驚いた表情を浮かべた。しかし、リーベは自信満々な様子で続けた。


「私なら大丈夫ですわ！ すぐに帰ってきますから」


その言葉に俺たちは渋々了承した。そして、リーベは森の中へと消えていった。残された俺たちの間には、何とも言えない緊張感が漂っていた。そんな中、アルスが口を開いた。


「それでは我々は予定通りここで待機しましょう」


俺は頷きながらも、心の中では不安を感じていた。果たして無事に戻ってくることができるだろうか？ そんな俺の気持ちを察したのか、クロエとアリアも心配そうに俺の顔を見つめていた。その時だった。突然大きな音が鳴り響いたのだ！ その音に驚いた兵士たちが慌てふためく中、一人の兵士が声を上げた。


「あれは……帝国軍です！」


その言葉に、その場にいた全員が息を呑んだ。とうとう敵が攻め込んできたのだ！


「俺が行きます！ 皆さんはここで待機していてください！」


俺は立ち上がり、外へ飛び出した。そして、帝国軍の姿を捉えると一気に加速した。瞬く間に敵との距離を縮めていく。すると、一人の兵士が俺に気づいたらしく、こちらに向かってきた。俺は剣を抜き放ち、その兵士に向かって振り下ろす。しかし、相手も素早く反応し俺の剣を受け止めた。そのまま激しい攻防が繰り広げられた。


「お前、なかなかやるな！」


俺は余裕の笑みを浮かべながら言った。すると、相手もニヤリと笑みを浮かべた。


「貴様こそ見事な剣捌きだ」


その言葉を皮切りに激しい攻防が続く中、突然相手の動きが止まった。何事かと思っていると、別の兵士が声をかけてきたのだ。


「カイト殿！ ここは我々が引き受けます！ どうか先へ進んでください！」


その言葉に俺は一瞬躊躇したが、すぐに決意を固めた。ここで時間を無駄にするわけにはいかないのだ。俺は再び加速して帝国兵の間をすり抜けていった。