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ある日のこと、俺たちがギルドで依頼を探していると一人の冒険者に声をかけられる。
「お前がカイトだな?」
金髪のイケメンでいかにもナルシストといった感じの男だ。
「そうだが……お前は誰だ?」
「俺はエドワード、Aランク冒険者だ」
「それで何の用だ?」
「お前に決闘を申し込む! 俺と戦え!」
「決闘だと?」
突然そんなことを言われても困るだけだ。俺は戦うつもりなどなかったからだ。しかし相手はやる気のようで引き下がろうとしない。
「断るようならお前は戦いから逃げた臆病者としてアーガス中の笑いものになるぞ?」
正直戦いたくなかったが、断れば色々面倒なことになりそうなので受けることにする。
「いいだろう、受けて立つ」
その言葉を聞くとエドワードはニヤリと笑みを浮かべた。そしてそのまま闘技場へと向かって歩き出す。俺もそれに続くことにしたのだった……
「それじゃあ始めようか!」
勝負は一瞬でついた。俺の圧勝である。
「くそっ……こんなはずじゃ……!」
エドワードが悔しそうに歯噛みしている。しかし勝負は着いたのだ。これ以上続ける意味は無いだろう。
「これで満足したか?」
俺が問いかけると彼はこちらを睨みつけてきた。そしてそのまま去っていくのだった……
「今日で50人目じゃな」
最近になって決闘を挑む奴らが増えてきた。どれも弱い奴らばかりなので一瞬で倒せてしまうのだが、それでも面倒であることに変わりはない。
「はぁ……」
ため息をつく俺を見てアリアが心配そうな表情を見せる。
「どうしたんですか?」
「いや、ここの所決闘ばかりで疲れてしまってな……」
「大変ですね……あっ、じゃあ私が癒しますよ!」
そう言って両手を広げる彼女。そんな彼女を抱きしめると柔らかい感触が伝わってきた。思わずドキッとするが平静を装って話しかけることにする。
「ありがとな」
お礼を言うと彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。そんな彼女を見ていると自然と笑みが溢れてくるのだった……
「カイトだな? 俺と勝負しろ!」
俺は振り返りもせず猛ダッシュでギルドを出た。
◇
「そろそろアーガスを出ようと思う」
「どうしてですか?」
彼女は不思議そうな顔をしているが無理もないことだろう。今までこの街で冒険者として活動してきたのだから当然だと言えるだろう。
「最近決闘ばかりやらされてうんざりしているんだ」
「なるほど……でもどこにいくんですか? どこか行く当てとかあるんですか?」
確かにそうだ、どこに行くかまだ決めていなかったな……
「それならアルヴヘイムはどうじゃ?」
「アルヴヘイム?」
「エルフや妖精の住む国じゃ。強い魔物がたくさんいるから相手に不足はないぞ?」
そんな場所があるのか……それなら行ってみてもいいな。アリアの方を見やると、彼女も賛成してくれているようだ。
「じゃあそこに行ってみるか!」
アーガスを旅立つ前にお世話になった人たちに挨拶することにした。まずは【烈風の隼】のメンバーのところへ向かうことにした。
「そうか……寂しくなるな」
リーダーのリチャードさんは悲しげな表情を浮かべている。他のメンバーも同じような様子だったが、それでも最後には笑顔で送り出してくれた。
「またどこかで会えることを祈ってるよ!」
「ありがとうございます」
それから商人のバーンズさんや食堂のお姉さんに別れの挨拶をして回ったのだが、みんな別れを惜しんでくれて泣きそうになった。最後に挨拶するのは受付嬢のセレナさんだ。
「今日はどの依頼を受けるんですか?」
「実はこの街を離れることにしたので挨拶に来たんです」
「そうなんですか……寂しくなりますね」
彼女は少し寂しそうな表情を見せた。しかしすぐに笑顔に戻ると俺の手を握ってくる。そして真っ直ぐにこちらを見つめてきた。
「どうかお気をつけてくださいね!」
彼女らしい優しい言葉に思わず嬉しくなると同時に、離れがたい気持ちに襲われる……だがいつまでもここにいるわけにはいかないので思い切って手を離そうとしたのだが、セレナさんは離してくれなかった。それどころかさらに強く握りしめてくる始末だ。困惑していると彼女は恥ずかしそうにモジモジし始めた。どうやら何か言いたいことがあるらしい。
「えっと……」
言いづらいことなのか中々言葉が出てこない様子だ。しかし意を決したのか口を開くとようやく話し始めた。
「あの……またいつかアーガスに戻ってきてくださいね!」
「はい、必ず戻ってきます」
そう答えると彼女は嬉しそうに微笑んでくれたのだった……。
「じゃあ、行くか!」
「はい! 行きましょう!」
「楽しみじゃな」
こうして俺たちは新たな冒険に向けて旅立つのだった……
「お前がカイトだな?」
金髪のイケメンでいかにもナルシストといった感じの男だ。
「そうだが……お前は誰だ?」
「俺はエドワード、Aランク冒険者だ」
「それで何の用だ?」
「お前に決闘を申し込む! 俺と戦え!」
「決闘だと?」
突然そんなことを言われても困るだけだ。俺は戦うつもりなどなかったからだ。しかし相手はやる気のようで引き下がろうとしない。
「断るようならお前は戦いから逃げた臆病者としてアーガス中の笑いものになるぞ?」
正直戦いたくなかったが、断れば色々面倒なことになりそうなので受けることにする。
「いいだろう、受けて立つ」
その言葉を聞くとエドワードはニヤリと笑みを浮かべた。そしてそのまま闘技場へと向かって歩き出す。俺もそれに続くことにしたのだった……
「それじゃあ始めようか!」
勝負は一瞬でついた。俺の圧勝である。
「くそっ……こんなはずじゃ……!」
エドワードが悔しそうに歯噛みしている。しかし勝負は着いたのだ。これ以上続ける意味は無いだろう。
「これで満足したか?」
俺が問いかけると彼はこちらを睨みつけてきた。そしてそのまま去っていくのだった……
「今日で50人目じゃな」
最近になって決闘を挑む奴らが増えてきた。どれも弱い奴らばかりなので一瞬で倒せてしまうのだが、それでも面倒であることに変わりはない。
「はぁ……」
ため息をつく俺を見てアリアが心配そうな表情を見せる。
「どうしたんですか?」
「いや、ここの所決闘ばかりで疲れてしまってな……」
「大変ですね……あっ、じゃあ私が癒しますよ!」
そう言って両手を広げる彼女。そんな彼女を抱きしめると柔らかい感触が伝わってきた。思わずドキッとするが平静を装って話しかけることにする。
「ありがとな」
お礼を言うと彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。そんな彼女を見ていると自然と笑みが溢れてくるのだった……
「カイトだな? 俺と勝負しろ!」
俺は振り返りもせず猛ダッシュでギルドを出た。
◇
「そろそろアーガスを出ようと思う」
「どうしてですか?」
彼女は不思議そうな顔をしているが無理もないことだろう。今までこの街で冒険者として活動してきたのだから当然だと言えるだろう。
「最近決闘ばかりやらされてうんざりしているんだ」
「なるほど……でもどこにいくんですか? どこか行く当てとかあるんですか?」
確かにそうだ、どこに行くかまだ決めていなかったな……
「それならアルヴヘイムはどうじゃ?」
「アルヴヘイム?」
「エルフや妖精の住む国じゃ。強い魔物がたくさんいるから相手に不足はないぞ?」
そんな場所があるのか……それなら行ってみてもいいな。アリアの方を見やると、彼女も賛成してくれているようだ。
「じゃあそこに行ってみるか!」
アーガスを旅立つ前にお世話になった人たちに挨拶することにした。まずは【烈風の隼】のメンバーのところへ向かうことにした。
「そうか……寂しくなるな」
リーダーのリチャードさんは悲しげな表情を浮かべている。他のメンバーも同じような様子だったが、それでも最後には笑顔で送り出してくれた。
「またどこかで会えることを祈ってるよ!」
「ありがとうございます」
それから商人のバーンズさんや食堂のお姉さんに別れの挨拶をして回ったのだが、みんな別れを惜しんでくれて泣きそうになった。最後に挨拶するのは受付嬢のセレナさんだ。
「今日はどの依頼を受けるんですか?」
「実はこの街を離れることにしたので挨拶に来たんです」
「そうなんですか……寂しくなりますね」
彼女は少し寂しそうな表情を見せた。しかしすぐに笑顔に戻ると俺の手を握ってくる。そして真っ直ぐにこちらを見つめてきた。
「どうかお気をつけてくださいね!」
彼女らしい優しい言葉に思わず嬉しくなると同時に、離れがたい気持ちに襲われる……だがいつまでもここにいるわけにはいかないので思い切って手を離そうとしたのだが、セレナさんは離してくれなかった。それどころかさらに強く握りしめてくる始末だ。困惑していると彼女は恥ずかしそうにモジモジし始めた。どうやら何か言いたいことがあるらしい。
「えっと……」
言いづらいことなのか中々言葉が出てこない様子だ。しかし意を決したのか口を開くとようやく話し始めた。
「あの……またいつかアーガスに戻ってきてくださいね!」
「はい、必ず戻ってきます」
そう答えると彼女は嬉しそうに微笑んでくれたのだった……。
「じゃあ、行くか!」
「はい! 行きましょう!」
「楽しみじゃな」
こうして俺たちは新たな冒険に向けて旅立つのだった……
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