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ある日のこと、俺たちはグラスウルフ討伐の依頼を受けることにした。


「今回はアリア一人だけで討伐しろ」


そう告げると、彼女は少し心配そうな表情を見せたがすぐに笑顔に戻る。そして元気よく返事をしてくれた。


「はい! 頑張ります!」


こうして俺たちは森へと向かったのだった。道中は特に問題もなく進むことができたため、予定より早く目的地に到着することができたのだ。そこで一度休憩を取ることにする。


「ふぅ……」


俺が腰を下ろすと、隣に座った彼女が声をかけてきた。


「大丈夫ですか?」


心配そうに見つめてくる彼女に対して俺は答える。すると彼女は安心したように微笑んだ。


「はい、大丈夫です」


それからしばらく休憩した後、俺たちは再び歩き始めたのだった……その後は特に問題もなく進んでいき、ついに目的地に到着した。そこには数匹のグラスウルフの群れがいる。どうやらこちらにはまだ気づいていないようだ。


「練習通りにやってみろ」


「はい!」


アリアは元気よく返事をすると、剣を抜いて構えた。そしてそのまま勢いよく走り出す。グラスウルフたちも彼女の接近に気付いたようで、一斉に襲いかかってきた。しかし彼女は冷静に対処し、一匹ずつ確実に仕留めていく。やがて最後の一匹を倒したところで一息ついたようだ。俺は彼女に声をかけることにした。


「よくやったな」


すると彼女は嬉しそうな表情を浮かべる。それからこちらに駆け寄ってきたかと思うと抱きついてきたのだった。


「えへへ、褒められちゃいました!」


そんな彼女の頭を優しく撫でてやると気持ちよさそうな声を出す。そんな様子がとても可愛らしく思えたのだった……


「グォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」


突然、巨大な魔物が姿を現した。そいつは二つの頭を持った虎であり、鋭い爪と牙を持っている。俺は即座に戦闘態勢に入った。


「アリア! 下がれ!」


「いいえ! この魔物は私が倒します!」


彼女は剣を構えながら叫ぶ。しかし俺は首を横に振った。


「ダメだ! 今のお前では勝てない!」


「それでも……!」


彼女は一歩前に進み出ようとするが、俺はそれを止める。そして彼女を庇うように立ち塞がった。


「危なくなったらすぐ助けるからな」


「はい!」


アリアは剣を抜き放ち構える。そして目の前の巨大な虎に向かって走り出したのだった……


「グォオオッ!!」


巨大な虎は咆哮を上げると、こちらに向かって飛びかかってきた。アリアはそれを紙一重で回避する。すると、奴はすぐさま方向転換して再び襲いかかってきたのだ。鋭い爪を振り下ろしてくるが間一髪のところで避けることに成功する。


しかし、体勢を崩してしまったところに尻尾による追撃を受けてしまった。


「きゃあっ!!」


吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。幸いにも大きな怪我はないようだが、それでもかなりのダメージを受けているようだ。


「大丈夫か!?」


慌てて駆け寄ろうとするが、彼女は手で静止してきた。


「大丈夫です……これくらい平気ですから……」


アリアはヨロヨロと立ち上がると再び剣を構えた。


「でも……」


「私を信じてください」


彼女の真剣な眼差しを見て、俺は止めることを諦めることにした。その代わり全力でサポートすることに決める。まずは回復魔法を唱えて体力を回復させた。それから次に防御強化の魔法を使うことにする。これでしばらくの間は攻撃を受けても耐えられるはずだ。

そして最後に攻撃力強化の魔法をかけたところで準備が整う。あとは彼女次第だ……


(頑張れよ)


そんな思いを込めながら見守ることしかできない自分が情けなかった……だがそれでも彼女は諦めずに立ち向かっている。その姿勢に胸を打たれた俺は自然と拳を握りしめていたのだった。


「グォオオッ!!」


虎は雄叫びを上げながら襲いかかってくる。それに対してアリアはゆっくりと前に踏み出すと剣を構えた。そして振り下ろされた爪を受け止めるとそのまま押し返していく。相手の力を利用しながら体勢を崩した隙を狙って攻撃を仕掛けていったのだ。その動きはまるで舞のように美しくもあり、とても力強いものだった。その姿に見惚れてしまうほどである。


「すごいな……」


思わず呟いてしまうほどだったが、それも仕方のないことだと思う。それほどまでに彼女の動きは洗練されていたのだ。


「はぁああっ!!」


気合いの入った声と共に放たれた一撃が、虎の頭を叩き割ったのだった。それと同時に奴の動きが止まり、その場に倒れ込んでしまう。どうやら絶命したようだ。


「やったな!」


俺は思わず叫んでしまった。すると彼女は嬉しそうに微笑むと駆け寄ってくる。そしてそのまま抱きついてきたのだった。


「えへへ、やりましたぁ」


そんな無邪気な笑顔を見せられてドキッとしたが、なんとか平静を装って頭を撫でる。すると彼女は気持ち良さそうに目を細めた。


「お前はもう一人前の冒険者だよ」


俺は心からそう思った。だからこそ素直に褒めることができたのだ。そしてそれは彼女も感じていたようで、とても嬉しそうな表情を浮かべていたのだった……


「えへへ……嬉しいです……」


そう言って笑う彼女の顔はとても可愛らしく思えた。そんなアリアの頭を撫で続けているうちにだんだん眠くなってきたようだ。ウトウトとし始めている彼女に声をかけることにした。


「帰るぞ、歩けるか?」


すると彼女は首を横に振る。どうやら歩けないらしい。仕方がないのでおんぶして運ぶことにすると、背中に柔らかい感触が伝わってきた。その感触を意識しないようにしながらアーガスへと戻っていったのだった。
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