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翌日、俺たちは朝早くから冒険者ギルドを訪れ、依頼が貼られている掲示板を物色していた。


「……どれもこの剣を試すのには役不足な依頼ばかりだな」


ガインの剣でなくとも、大抵の魔物を倒せると思うのだが……やはりここは難易度の高い依頼をこなしたい。


「でしたら……これはどうでしょうか?」


フィーナが指差すのは、『ゴーレム討伐』の依頼。ゴーレムとは、岩や泥で造られた魔物だ。体は鋼鉄よりも硬く、並の攻撃では傷をつけることもできない。


「なるほど、ゴーレムか……確かに今の俺たちにはちょうどいい相手かもしれないな」


ゴーレムは動きが遅いし、的も大きい。これならガインの剣の性能を試すことができるだろう。


「でも私たちで本当に大丈夫なのか心配ですが……」


「心配するな、俺がフィーナを守ってやる」


「カイト様……♡」


フィーナは頰を赤らめ、キラキラした目で俺を見つめていた。


「確かにその通りですね! 今の私たちならゴーレムごとき敵じゃありません!」


さっきの調子とは一転し、フィーナは自信に満ちた表情になる。コロコロと機嫌が変わるな……まあ、そんなところも可愛いのだが。


「よし、ゴーレム討伐の依頼を受けるとしよう」


俺たちは掲示板から依頼書を剥がし、受付嬢に持っていった。


「ゴーレム討伐ですね! 頑張ってください!」


こうして俺たちはゴーレムの討伐に向かうのだった。


◇ 


俺たちは街の外れにある森の中に来ていた。この森の奥には古代遺跡があり、ゴーレムはその遺跡を根城にしているらしい。


「へー、面白い場所だねー!」


アイシャは古代遺跡を見て目を輝かせていた。


「そんなに珍しいのか?」


「私ずっと精霊の森で暮らしてたからさ、他の場所って行ったことないんだよね~」


「そうなのか」


精霊の森か……きっと美しい場所なんだろうな。いつか行ってみたいものだ。


「じゃあ俺がゴーレムの注意を引きつけるから、フィーナは魔法で援護してくれ」


「はい!」


俺は近くにいるゴーレムに小石を投げた。ゴーレムはギシギシと動き出し、俺の方へと歩いてくる。


「さてと……試しに剣を振ってみるか」


俺は剣を構えた。そして、一気に踏み込んで斬りかかる! するとゴーレムの体はバターのようにスパッと斬れてしまった。


「すごい切れ味だ……!」


刃に触れた瞬間、豆腐のように柔らかく感じた。俺はそのまま何度も剣を振り、ゴーレムを切り刻んでいく!


「カイト様、お見事です!」


ガインに作ってもらった武器は、俺の想像以上の性能だった。これならどんな敵も容易く倒すことができるだろう。


「カイト様、あれを見てください!」


フィーナが指差す方向には、たくさんのゴーレムが集まっていた。ざっと30体はいるだろうか。


「あの数を相手にするのは大変かもしれないな……」


俺は魔力を剣に込める。するとその刀身はさらに輝きを増した。これなら一撃で倒せそうだ。俺はゴーレムの群れに突っ込んでいき、剣を振るった!


ズバァアアンッ!!


凄まじい威力だ! たったの一振りでゴーレムたちは粉々に砕け散ってしまった。


「流石はカイト様です! とてもお強い!」


フィーナは目を輝かせながら俺を褒めちぎる。なんだか照れ臭いな……。その時、足元が崩れ、俺とフィーナは穴の中へと落ちてしまった。どうやら罠が仕掛けられていたようだ。俺は急いで縄を上り、穴から脱出した。すると突然目の前にゴーレムが現れる!


「こいつもゴーレムか……!」


今までのゴーレムとは違い、その体はミスリルでできていた。かなり硬いようだ。俺は剣を構え、ゴーレムと対峙する。


「カイト様、ここは私にお任せください!」


フィーナは魔法杖を構えると、呪文を唱え始める。彼女の周りにいくつもの魔法陣が展開されていった。その数は20は超えているだろう。


「凍てつく氷雪! 舞い散りて敵を穿て!」


魔法陣から氷の槍が放たれる。それらは全てゴーレムに突き刺さっていった! だが、ゴーレムの体に傷一つつけることができない!


「そんな……!?」


「フィーナ、危ない!」


俺は慌ててフィーナを抱き抱え、その場から飛び退いた。その直後、ゴーレムが腕を振り下ろす!


ドゴォオオオンッ!!


地面が大きく陥没してしまった……!


「大丈夫か、フィーナ?」


「は、はい……ありがとうございます」


彼女は頰を赤らめながら答える。よかった、無事のようだ。


「それにしてもあのゴーレムの硬さは異常ですね……」


確かに今まで戦ってきたゴーレムとは比べ物にならないほど硬いようだ。まさかミスリルでできているとはな……どうしたものか。俺は剣を構えながら思考を巡らせる。するとアイシャが声をかけてきた。


「ねえ! おにーさん、その剣であのゴーレム斬ってみてよ!」


「この剣をか? どうしてだ?」


「その剣の凄さはなんとなく分かるんだけど、もっと凄い力を秘めてそうな気がしたんだよね! だから試しにやってみてよ!」


「……分かった」


俺はアイシャの提案を了承すると、ミスリルゴーレムに向かって走りだした。そして剣を振り下ろす!


ガギィイインッ!!


やはり斬れないか……だが、剣が触れた瞬間に変化が起きた! 刃から眩しい光が放たれ、ゴーレムの体を包み込んでいく……!


「グォオオオオッ!?」


ミスリルゴーレムは苦しみだし、やがて消滅した。周囲にあったものは全て消え去っている。これは一体どういうことだ?


「すごい! やっぱり思った通りだったよ!」


アイシャが興奮した様子で叫ぶ。どうやらこの剣には何か秘密があるらしいな……後で詳しく聞いてみよう。俺はフィーナの元に戻る。


「怪我はないか?」


「はい、大丈夫です。カイト様こそお怪我はありませんか?」


「ああ、俺は平気だ」


「良かったです!」


彼女は嬉しそうに笑う。本当に可愛らしいな……思わず見惚れてしまった。


「おにーさんとお姉さん、仲良しだね!」


アイシャは俺たちを見てニヤニヤしている。フィーナは頰を赤らめると、俺から目を逸らしてしまった。


「そ、そんなことよりも……この剣についてもっと詳しく教えてもらおうか」


俺は話題を変えようと、アイシャに話しかける。すると彼女は少し不満そうな表情を浮かべたが、すぐに説明を始めてくれた。


「その剣の名前は『ルシフェル』だよ! かなり特殊な剣でね、魔力を込めて斬ると相手の魔力を喰らい尽くすの!」


「魔力を喰らうのか……?」


「うん! だからどんなに硬い相手でも簡単に斬れるし、逆に相手を魔力で染め上げちゃうんだよー!」


「なるほどな……すごい剣だ」


俺はルシフェルを眺めながら言った。この剣があれば、どんな敵も倒すことができそうだ。俺はルシフェルを鞘に収めると、アイシャに向き直る。


「ありがとう、教えてくれて」


「どういたしまして!」


アイシャは満面の笑みを浮かべた。本当に可愛らしい子だな……。


「さてと、ギルドに戻って依頼を完了させよう」


「はい、そうしましょう」


俺たちはゴーレムの破片をアイテムボックスに収納すると、古代遺跡を後にするのであった。
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