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「冒険者試験合格、おめでとうございます」
受付嬢から金属製のプレートを渡される。
「このプレートは身分を証明するためのものです。失くさないように気をつけてください」
「わかりました」
「依頼はあちらの掲示板に張られていますので、そちらから依頼を受けてください」
「わかりました」
「それではSランク冒険者目指して頑張ってください!」
早速、掲示板で依頼を探す。Eランク冒険者が受けられる依頼は限られているようだ。
「んー、薬草の採取か……これならいいか」
俺は掲示板から薬草の採取の依頼を取って、受付に向かった。
「これを受けたいんだけど」
「はい、かしこまりました。制限時間は5時間ですのでお気をつけください」
こうして俺は初仕事として薬草の採取依頼を受けたのだった。
◇
アーガスを出た俺たちは、薬草が自生する東の森へと向かった。たくさんの木々が生える森林の中を歩いていると、さっそく薬草を見つけた。
「ピギィ!」
その時、足元からウサギ型の魔物が飛び出してきた。ホーンラビット——一匹だと大したことがないが、群れになるとちょっと厄介だ。
「邪魔だ」
俺は飛びかかってきたホーンラビットの動きを正確に見切り、ボールを蹴るかのように蹴り上げた。ホーンラビットは空中で回転しながら、木に叩きつけられた。
「ピギィッ!?」
ホーンラビットは地面に落下した後、ピクピクと痙攣していた。どうやら生きてはいるようだが、戦闘不能だろう。
「キュウゥ……」
他にも複数の魔物が俺を狙っていたようだが、俺が一瞬でホーンラビットを倒したのを見て、そそくさと逃げていった。
「こんなもんかな」
目標数の薬草を回収し終えた。ギルドに戻ろうと森を出ようとするが——
「た、助けて!!」
女性の悲鳴が聞こえてきた。悲鳴の聞こえた方をよく見ると、そこには一人の少女が、狼型の魔物の群れに襲われていた。
「グルルルッ……」
グラスウルフか。縄張りに踏み込みさえしなければ、積極的に人を襲うことはないが、一度縄張りに入ると、執念深くどこまでも追いかけてくる厄介な魔物だ。
「た、助けて……」
少女は泣きそうな声で助けを求めてくる。グラスウルフは今にも少女に襲い掛かりそうな雰囲気だ。
「グルルッ!」
グラスウルフは少女に向かって一斉に襲いかかってきた。俺はすかさず『速度強化』の付与魔法を発動し、少女の元へと駆け出した。
「え……」
少女は俺の姿を見て驚いた表情を浮かべている。俺はグラスウルフの攻撃を避けながら、次々と斬り倒していった。やがて最後の一匹が倒れ、辺りは静寂に包まれた。
「……大丈夫だったか?」
「あ……はい……」
少女は少しぼーっとした様子だが、どうやら怪我はないようだ。俺はホッと胸を撫で下ろした。
「あ、あの……危ないところを助けてくれて……ありがとうございました!」
少女はサラサラのロングヘアーの金髪で透き通るような白い肌をしており、整った容姿をしている。年齢は俺と同じくらいだろうか。
「どういたしまして。そんなに大したことじゃないけどな」
「あ、あれが大したことないなんて……もしかしてかなりSランク冒険者の方ですか……?」
「いや、冒険者登録したばかりの新人だよ」
「え、Sランク冒険者でもないのに……凄いです!」
「俺の話ひとまず置いといて、そもそもなんでグラスウルフの縄張りになんか入ったんだ?」
「……私、Sランク冒険者になりたいんです」
「Sランク冒険者に?」
「はい。私が小さい頃住んでいた村が魔物に襲われて、もうダメだと思ったその時……Sランク冒険者が魔物を討伐してくれて……私はその冒険者に憧れたんです」
「そうか……」
俺から言わせればSランク冒険者なんて、ただの化け物だ。あいつらは人間を辞めている。あの領域に至ることができるのは一握りの人間だけだ。
「夢を壊すようで悪いが……Sランク冒険者になるのは難しいぞ?」
「それはわかってます……でも私はどうしてもなりたいんです! あの付与魔術師のカイト様みたいに!」
「え……?」
いきなり俺の名前が出たものだから、俺は戸惑ってしまった。
「私はカイト様を愛してます! カイト様に相応しい女になるために、Sランク冒険者を目指してます!」
「……なんでそこまで会ったこともない奴を好きになれるんだ?」
「私を助けてくれた時のカイト様の笑顔、素敵でした……それだけで十分です」
「あの時は、ついでだから助けただけだよ」
「……ひょっとしてあなたがカイト様ですか?」
「ま、まあな……」
「……信じられません! ずっと会いたかった人が目の前にいるなんて!」
「あ、あの……少し離れてくれると助かるんだけど……」
「そ、そうでした! すみません!」
そう言うと彼女は俺から離れてくれた。
「あれ? でもそれだとおかしいですね……。どうしてSランク冒険者のカイト様がこんな辺境で活動しているのですか?」
俺は彼女にこれまでの経緯を話した。
「なるほど……カイト様がそんな大変なことになっていたんですね……。カイト様を追放するなんて見る目のないパーティーです!」
彼女は俺が追放されたことに対し、憤りを感じていた。
「良ければ俺とパーティーを組まないか?」
彼女はまだ力不足であるが、きちんと育てればSランク級になるであろう。元よりソロで活動するのは限界があるため、仲間が欲しかったところだ。
「喜んで! このフィーナ、カイト様のためならどんなことでも致します!」
こうして俺に憧れる冒険者少女、フィーナが仲間に加わったのであった。
受付嬢から金属製のプレートを渡される。
「このプレートは身分を証明するためのものです。失くさないように気をつけてください」
「わかりました」
「依頼はあちらの掲示板に張られていますので、そちらから依頼を受けてください」
「わかりました」
「それではSランク冒険者目指して頑張ってください!」
早速、掲示板で依頼を探す。Eランク冒険者が受けられる依頼は限られているようだ。
「んー、薬草の採取か……これならいいか」
俺は掲示板から薬草の採取の依頼を取って、受付に向かった。
「これを受けたいんだけど」
「はい、かしこまりました。制限時間は5時間ですのでお気をつけください」
こうして俺は初仕事として薬草の採取依頼を受けたのだった。
◇
アーガスを出た俺たちは、薬草が自生する東の森へと向かった。たくさんの木々が生える森林の中を歩いていると、さっそく薬草を見つけた。
「ピギィ!」
その時、足元からウサギ型の魔物が飛び出してきた。ホーンラビット——一匹だと大したことがないが、群れになるとちょっと厄介だ。
「邪魔だ」
俺は飛びかかってきたホーンラビットの動きを正確に見切り、ボールを蹴るかのように蹴り上げた。ホーンラビットは空中で回転しながら、木に叩きつけられた。
「ピギィッ!?」
ホーンラビットは地面に落下した後、ピクピクと痙攣していた。どうやら生きてはいるようだが、戦闘不能だろう。
「キュウゥ……」
他にも複数の魔物が俺を狙っていたようだが、俺が一瞬でホーンラビットを倒したのを見て、そそくさと逃げていった。
「こんなもんかな」
目標数の薬草を回収し終えた。ギルドに戻ろうと森を出ようとするが——
「た、助けて!!」
女性の悲鳴が聞こえてきた。悲鳴の聞こえた方をよく見ると、そこには一人の少女が、狼型の魔物の群れに襲われていた。
「グルルルッ……」
グラスウルフか。縄張りに踏み込みさえしなければ、積極的に人を襲うことはないが、一度縄張りに入ると、執念深くどこまでも追いかけてくる厄介な魔物だ。
「た、助けて……」
少女は泣きそうな声で助けを求めてくる。グラスウルフは今にも少女に襲い掛かりそうな雰囲気だ。
「グルルッ!」
グラスウルフは少女に向かって一斉に襲いかかってきた。俺はすかさず『速度強化』の付与魔法を発動し、少女の元へと駆け出した。
「え……」
少女は俺の姿を見て驚いた表情を浮かべている。俺はグラスウルフの攻撃を避けながら、次々と斬り倒していった。やがて最後の一匹が倒れ、辺りは静寂に包まれた。
「……大丈夫だったか?」
「あ……はい……」
少女は少しぼーっとした様子だが、どうやら怪我はないようだ。俺はホッと胸を撫で下ろした。
「あ、あの……危ないところを助けてくれて……ありがとうございました!」
少女はサラサラのロングヘアーの金髪で透き通るような白い肌をしており、整った容姿をしている。年齢は俺と同じくらいだろうか。
「どういたしまして。そんなに大したことじゃないけどな」
「あ、あれが大したことないなんて……もしかしてかなりSランク冒険者の方ですか……?」
「いや、冒険者登録したばかりの新人だよ」
「え、Sランク冒険者でもないのに……凄いです!」
「俺の話ひとまず置いといて、そもそもなんでグラスウルフの縄張りになんか入ったんだ?」
「……私、Sランク冒険者になりたいんです」
「Sランク冒険者に?」
「はい。私が小さい頃住んでいた村が魔物に襲われて、もうダメだと思ったその時……Sランク冒険者が魔物を討伐してくれて……私はその冒険者に憧れたんです」
「そうか……」
俺から言わせればSランク冒険者なんて、ただの化け物だ。あいつらは人間を辞めている。あの領域に至ることができるのは一握りの人間だけだ。
「夢を壊すようで悪いが……Sランク冒険者になるのは難しいぞ?」
「それはわかってます……でも私はどうしてもなりたいんです! あの付与魔術師のカイト様みたいに!」
「え……?」
いきなり俺の名前が出たものだから、俺は戸惑ってしまった。
「私はカイト様を愛してます! カイト様に相応しい女になるために、Sランク冒険者を目指してます!」
「……なんでそこまで会ったこともない奴を好きになれるんだ?」
「私を助けてくれた時のカイト様の笑顔、素敵でした……それだけで十分です」
「あの時は、ついでだから助けただけだよ」
「……ひょっとしてあなたがカイト様ですか?」
「ま、まあな……」
「……信じられません! ずっと会いたかった人が目の前にいるなんて!」
「あ、あの……少し離れてくれると助かるんだけど……」
「そ、そうでした! すみません!」
そう言うと彼女は俺から離れてくれた。
「あれ? でもそれだとおかしいですね……。どうしてSランク冒険者のカイト様がこんな辺境で活動しているのですか?」
俺は彼女にこれまでの経緯を話した。
「なるほど……カイト様がそんな大変なことになっていたんですね……。カイト様を追放するなんて見る目のないパーティーです!」
彼女は俺が追放されたことに対し、憤りを感じていた。
「良ければ俺とパーティーを組まないか?」
彼女はまだ力不足であるが、きちんと育てればSランク級になるであろう。元よりソロで活動するのは限界があるため、仲間が欲しかったところだ。
「喜んで! このフィーナ、カイト様のためならどんなことでも致します!」
こうして俺に憧れる冒険者少女、フィーナが仲間に加わったのであった。
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