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翌朝、ベッドから起き上がると私は大きく伸びをした。窓から外を見ると青空が広がっている。


「おはようございます! ノエルさん」


エレナちゃんの声だ。私は急いで声のした方に向かった。


「エレナちゃん、おはようございます!」


そこには笑顔で挨拶をするエレナちゃんの姿があった。昨日までと違うのは服装で、新しい服に身を包んだ彼女はとても可愛らしかった。


「よく眠れましたか?」


私が尋ねると、エレナちゃんは照れくさそうに微笑んだ。昨日は色々あったし疲れていたのか心配だったが杞憂だったようだ。元気そうで何よりである。


「今日はポーションを作ってもらいます」


私はエレナちゃんに説明を始めた。ポーションは薬の一種で、傷や病気を癒す効果がある。その作り方は非常に複雑で奥深いものだ。


「材料はこちらに用意していますので、まずは薬草をすり潰してください」


私はそう言うと小さな麻袋を渡した。中には緑色の葉っぱが入っているが、これを乾燥させて粉末状にして使うのだ。エレナちゃんは緊張した面持ちで受け取ると真剣な表情で作業を始めた。


(頑張って!)


私は心の中で応援しながら彼女の様子を見守ったのだった……。


「できた……!」


エレナちゃんの声に私はハッとした。手元を見ると、綺麗な緑色の液体が完成している。それを見ただけで彼女がどれほど真剣に取り組んでいたかが伝わってきた。


「お疲れ様! とっても上手でしたよ!」


私が褒めるとエレナちゃんは嬉しそうな表情を浮かべた。それから彼女は出来上がったポーションを大事そうに鞄の中にしまう。


「あとはこれを瓶に詰めて完成です」


私はそう言うと、瓶と蓋を取り出した。ポーションの瓶には様々な種類があるけれど、今回は一般的なものを用意したつもりだ。中にはポーションを入れ、コルクで蓋をする。これで完成だ。


「これで完成です! よく頑張りました!」


私が褒めるとエレナちゃんは頬を赤く染めながら照れ笑いを浮かべた。そして嬉しそうにポーションを眺めると大事そうに鞄の中へとしまった。


「あとはお客さんに渡して使ってもらえば大丈夫です」


私はそう言って微笑むと、エレナちゃんに向かって手を差し出した。すると彼女もはにかみながら私の手を握り返してくる。その手は小さくて温かかった……。


「よろしくお願いします!」


エレナちゃんの元気な声が響く。彼女は今、初めてお客さんの前に立ったところだ。ドキドキしているのが手に取るように分かるが、その表情には強い決意が込められていた。


(頑張って……!)


心の中で応援しながら、私は彼女の姿を見守った。エレナちゃんがお客さんにポーションを渡し終えると、彼女は晴れやかな笑顔を浮かべて私の元へ戻ってきた。


「すごく喜んでもらえました! ありがとうございます!」


エレナちゃんは興奮気味に話すと、私に抱きついた。よほど嬉しかったのだろう。私は彼女を優しく受け止めた。


「それは良かったです! これからも頑張ってくださいね!」


私がそう言うと、エレナちゃんは元気よく返事をしたのだった……。
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