4 / 30
4
しおりを挟む
翌日、私はカイトを連れて王都の大通りにある商店街へと向かった。目的は彼の服を買うためである。
「ほら、行きますよ」
私が手を引くと彼は面倒くさそうにしながらもついてきた。だが一向に歩く気配がないので私が強引に連れていくことにする。そして一軒の洋服店に入ると、店主らしき女性が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませお嬢様! お探しの品はございますか?」
「この人の服を一式見繕ってください!」
私はそう言ってカイトを前に押し出す。すると彼は不機嫌そうな顔をしながらも私を見て言った。
「服なんていらねぇぞ」
「あなた自分の格好を見てから言ってください。ボロボロじゃないですか」
私が指摘すると、彼は舌打ちをしながらそっぽを向く。
「お客様はどのようなお召し物がよろしいですか?」
「動きやすくて丈夫なもんなら何でもいい」
ぶっきらぼうに答える彼に私は呆れながらも答えた。
「とりあえずサイズを測ってもらってください。その後、試着室でご自身に合った服を選んでください」
それから数分後、彼はサイズのあった服を試着室の中で着ていた。そして私のところに来て一言告げる。
「……動きやすいな」
どうやら気に入ったらしい。店主は彼の身体に合わせて何点かの服を選んでくれたので、それを購入すると次は武器屋へと向かった。
「いらっしゃい」
扉を開けると体格の良い男性店主が出迎えてくれる。店内に入ると私はガイルに問いかけた。
「何か使ってみたい武器とかあります?」
「……何でもいい」
ぶっきらぼうに答える彼に私は頭を悩ませた。そしてしばらく考えた後、とある武器を勧めてみることにした。
「じゃあこれなんてどうです?」
私が差し出したのは小型のナイフだった。刃渡り20センチほどのナイフは、殺傷能力こそ低いものの携帯性と切れ味に関しては折り紙付きだ。
「しょぼい武器だな」
「でも護身用には最適ですよ?」
そう言って私は店主にナイフの代金を支払うと、そのまま彼に渡した。
「持ってみてください。案外使いやすいかもしれませんよ」
彼は私からナイフを受け取ると、それを何度か振ってみる。そして満足げな表情をしたかと思うと私に返してきた。
「悪くないな」
どうやらお気に召したらしい。
「じゃあこれも買いましょう」
そう言って私は彼の装備一式を買い揃えることにした。一通り買い終えると、レストランで食事をとることにする。
「さぁ、好きなものを頼んでください」
私がメニュー表を渡すと、彼はじっくりと吟味して注文を決めた。そして料理が運ばれてくるまでの間、雑談に花を咲かせることにした。
「カイトはどうして奴隷になったんですか?」
私が何気なく聞いてみると、彼は苦々しい顔をして答えた。
「親父と母親が借金をしてな。それで俺が売られたんだ」
「ご両親は今どうしているのですか?」
私がそう聞くと、彼は首を横に振った。
「知らねぇ」
どうやら死んでしまったようだ。私はそれ以上聞くのをやめると、話題を変えることにした。そして料理が運ばれてきたので食べ始めると、彼も渋々といった様子で口に運ぶ。どうやら味はお気に召したらしい。次々と皿を空にしていく姿を見て少し嬉しくなった。
(なんだか弟ができたみたい)
そんなことを考えているうちに食事を終えてしまった私達は、家に帰ることにした。
「明日からバリバリ働いてもらいますよ」
「めんどくせぇ」
「働かざる者食うべからずですよ!」
私がそう言うと、彼は面倒くさそうにしながらも受け入れてくれた。そんな様子に思わず微笑んでしまう。
(これから楽しくなりそう)
私はそんなことを思いながら家路につくのだった。
「ほら、行きますよ」
私が手を引くと彼は面倒くさそうにしながらもついてきた。だが一向に歩く気配がないので私が強引に連れていくことにする。そして一軒の洋服店に入ると、店主らしき女性が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませお嬢様! お探しの品はございますか?」
「この人の服を一式見繕ってください!」
私はそう言ってカイトを前に押し出す。すると彼は不機嫌そうな顔をしながらも私を見て言った。
「服なんていらねぇぞ」
「あなた自分の格好を見てから言ってください。ボロボロじゃないですか」
私が指摘すると、彼は舌打ちをしながらそっぽを向く。
「お客様はどのようなお召し物がよろしいですか?」
「動きやすくて丈夫なもんなら何でもいい」
ぶっきらぼうに答える彼に私は呆れながらも答えた。
「とりあえずサイズを測ってもらってください。その後、試着室でご自身に合った服を選んでください」
それから数分後、彼はサイズのあった服を試着室の中で着ていた。そして私のところに来て一言告げる。
「……動きやすいな」
どうやら気に入ったらしい。店主は彼の身体に合わせて何点かの服を選んでくれたので、それを購入すると次は武器屋へと向かった。
「いらっしゃい」
扉を開けると体格の良い男性店主が出迎えてくれる。店内に入ると私はガイルに問いかけた。
「何か使ってみたい武器とかあります?」
「……何でもいい」
ぶっきらぼうに答える彼に私は頭を悩ませた。そしてしばらく考えた後、とある武器を勧めてみることにした。
「じゃあこれなんてどうです?」
私が差し出したのは小型のナイフだった。刃渡り20センチほどのナイフは、殺傷能力こそ低いものの携帯性と切れ味に関しては折り紙付きだ。
「しょぼい武器だな」
「でも護身用には最適ですよ?」
そう言って私は店主にナイフの代金を支払うと、そのまま彼に渡した。
「持ってみてください。案外使いやすいかもしれませんよ」
彼は私からナイフを受け取ると、それを何度か振ってみる。そして満足げな表情をしたかと思うと私に返してきた。
「悪くないな」
どうやらお気に召したらしい。
「じゃあこれも買いましょう」
そう言って私は彼の装備一式を買い揃えることにした。一通り買い終えると、レストランで食事をとることにする。
「さぁ、好きなものを頼んでください」
私がメニュー表を渡すと、彼はじっくりと吟味して注文を決めた。そして料理が運ばれてくるまでの間、雑談に花を咲かせることにした。
「カイトはどうして奴隷になったんですか?」
私が何気なく聞いてみると、彼は苦々しい顔をして答えた。
「親父と母親が借金をしてな。それで俺が売られたんだ」
「ご両親は今どうしているのですか?」
私がそう聞くと、彼は首を横に振った。
「知らねぇ」
どうやら死んでしまったようだ。私はそれ以上聞くのをやめると、話題を変えることにした。そして料理が運ばれてきたので食べ始めると、彼も渋々といった様子で口に運ぶ。どうやら味はお気に召したらしい。次々と皿を空にしていく姿を見て少し嬉しくなった。
(なんだか弟ができたみたい)
そんなことを考えているうちに食事を終えてしまった私達は、家に帰ることにした。
「明日からバリバリ働いてもらいますよ」
「めんどくせぇ」
「働かざる者食うべからずですよ!」
私がそう言うと、彼は面倒くさそうにしながらも受け入れてくれた。そんな様子に思わず微笑んでしまう。
(これから楽しくなりそう)
私はそんなことを思いながら家路につくのだった。
0
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~
インバーターエアコン
恋愛
王宮で働く少女ナナ。王様の誕生日パーティーに普段通りに給仕をしていた彼女だったが、突然第一王子の暗殺未遂事件が起きる。
ナナは最初、それを他人事のように見ていたが……。
「この女よ! 王子を殺そうと毒を盛ったのは!」
「はい?」
叫んだのは第二王子の婚約者であるビリアだった。
王位を巡る争いに巻き込まれ、王子暗殺未遂の罪を着せられるナナだったが、相手が貴族でも、彼女はやられたままで終わる女ではなかった。
(私をドロドロした内争に巻き込んだ罪は贖ってもらいますので……)
得意の転移魔法でその場を離脱し反撃を始める。
相手が悪かったことに、ビリアは間もなく気付くこととなる。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~
キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。
事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。
イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる
どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。
当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。
どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。
そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。
報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。
こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。
【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇
愚者 (フール)
恋愛
プリムローズは、筆頭公爵の末娘。
上の姉と兄とは歳が離れていて、両親は上の子供達が手がかからなくなる。
すると父は仕事で母は社交に忙しく、末娘を放置。
そんな末娘に変化が起きる。
ある時、王宮で王妃様の第2子懐妊を祝うパーティーが行われる。
領地で隠居していた、祖父母が出席のためにやって来た。
パーティー後に悲劇が、プリムローズのたった一言で運命が変わる。
彼女は5年後に父からの催促で戻るが、家族との関係はどうなるのか?
かなり普通のご令嬢とは違う育て方をされ、ズレた感覚の持ち主に。
個性的な周りの人物と出会いつつ、笑いありシリアスありの物語。
ゆっくり進行ですが、まったり読んで下さい。
★初めての投稿小説になります。
お読み頂けたら、嬉しく思います。
全91話 完結作品
【完結】悪女扱いした上に婚約破棄したいですって?
冬月光輝
恋愛
私ことアレクトロン皇国の公爵令嬢、グレイス=アルティメシアは婚約者であるグラインシュバイツ皇太子殿下に呼び出され、平民の中で【聖女】と呼ばれているクラリスという女性との「真実の愛」について長々と聞かされた挙句、婚約破棄を迫られました。
この国では有責側から婚約破棄することが出来ないと理性的に話をしましたが、頭がお花畑の皇太子は激高し、私を悪女扱いして制裁を加えると宣い、あげく暴力を奮ってきたのです。
この瞬間、私は決意しました。必ずや強い女になり、この男にどちらが制裁を受ける側なのか教えようということを――。
一人娘の私は今まで自由に生きたいという感情を殺して家のために、良い縁談を得る為にひたすら努力をして生きていました。
それが無駄に終わった今日からは自分の為に戦いましょう。どちらかが灰になるまで――。
しかし、頭の悪い皇太子はともかく誰からも愛され、都合の良い展開に持っていく、まるで【物語のヒロイン】のような体質をもったクラリスは思った以上の強敵だったのです。
悪役令嬢のお姉様が、今日追放されます。ざまぁ――え? 追放されるのは、あたし?
柚木ゆず
恋愛
猫かぶり姉さんの悪事がバレて、ついに追放されることになりました。
これでやっと――え。レビン王太子が姉さんを気に入って、あたしに罪を擦り付けた!?
突然、追放される羽目になったあたし。だけどその時、仮面をつけた男の人が颯爽と助けてくれたの。
優しく助けてくれた、素敵な人。この方は、一体誰なんだろう――え。
仮面の人は……。恋をしちゃった相手は、あたしが苦手なユリオス先輩!?
※4月17日 本編完結いたしました。明日より、番外編を数話投稿いたします。
婚約破棄を要求されましたが、俺に婚約者はいませんよ?
紅葉ももな(くれはももな)
恋愛
長い外国留学から帰ってきたラオウは、突然婚約破棄を要求されました。
はい?俺に婚約者はいませんけど?
そんな彼が幸せになるまでのお話。
錬金術師の成り上がり!? 家族と絶縁したら、天才伯爵令息に溺愛されました
悠十
恋愛
旧題:『ハーレム主人公』とサヨナラしました
家族にとって『どうでも良い子』。それが、レナだった。
いつしか家族からの愛情を諦めたレナの心の支えは、幼馴染の男の子だった。しかし、彼の周りには女の子が侍るようになった。
そして彼は言った。
「みんな好きだよ」
特別が欲しいレナは、彼から離れることを選択した。
だけど、彼が何故か追って来て……
「なんで俺から離れるんだ⁉」
「私にハーレムは無理!」
初恋くらい、奇麗に終わらせたいんだけどな⁉
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎関連作品
『野良錬金術師ネモの異世界転生放浪録(旧題:野良錬金術師は頭のネジを投げ捨てた!)』
『野良錬金術師ネモの異世界学園騒動録』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎お知らせ
2022/01/13
いつも閲覧いただき、ありがとうございます。
今回、『ハーレム主人公とサヨナラしました』の書籍化のお話しを頂き、現在調整中です。
また、その調整の中で、改題を検討中です。
改題をする事になりましたら、旧題も載せておきますが、少し混乱をさせてしまうかもしれません。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
2022/01/20
現在書籍化の話が進んでいるため、該当部分を1月27日を目途に引き下げることになりました。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
2022/01/27
書籍化調整にあたり、改題をいたしました。
また、設定の一部変更がありましたことをお知らせいたします。
イヴァン(男爵令息→伯爵令息)
書籍化予定の該当部分の小説を引き下げをいたしました。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
2022/02/28
書籍の販売が開始されました。
お手に取ってご覧いただけましたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる