1 / 30
1
しおりを挟む
「君との婚約を破棄する」
それは突然のことだった。15歳になったばかりの私は婚約者であるラインハルト皇太子に呼び出されたかと思うと、一方的に婚約破棄を言い渡されたのだ。
「えっと、殿下……? 一体何の冗談ですか?」
あまりに唐突なことで頭がうまく働かない。
まるで悪い夢でも見ているかのようだった。
「僕は君のような性悪女とはやっていけないんだ」
ラインハルト皇太子は淡々とそう告げると私に背を向ける。そして私の目の前で別の女に寄り添った。
「リリアーヌ、君のような優しい女性が婚約者でよかったよ」
「私も殿下が婚約相手で幸せです」
私の前で堂々と抱き合っている彼らを見て頭が真っ白になった。
いや、正確には怒りを通り越して呆れていたのだろう。彼らはこの期に及んで私を悪女だと言い張るつもりらしい。
「さぁ帰ろう、リリアーヌ! これからはずっと一緒だ!」
「はい殿下!」
二人は私に見せつけるように唇を重ねた。それはまるで愛し合う恋人のようだった。
「っ……」
怒りと悲しみが同時にこみ上げてきた。けれどここで感情のままに振る舞うわけにはいかない。私はこの国の未来を担う者として、公的な場での礼儀作法をしっかり教え込まれて育ってきたのだ。だから私は笑顔を取り繕った。
「さようなら殿下」
優雅にドレスの裾を持ち上げ、最大限の敬意を示す礼をする。そして彼らの前から去った。去り際に振り返ると二人はまだ抱き合っていた。それが余計に私の心を傷つけた。
「……ふふっ」
二人の姿が見えなくなってから、思わず笑みがこぼれてしまう。
「ふふっ……あははっ!!」
堪えきれずに声を上げて笑い出す。笑いすぎてお腹の筋肉が痛くなってきた頃、ようやく落ち着いた私は涙を拭いながら呟いた。
「私……捨てられたんだ……」
その瞬間、私の心は空っぽになった気がした。それと同時に頭の中に浮かんだのは復讐の二文字だった。
「……許さない」
怒りに任せて握りしめた拳が震える。爪が皮膚に食い込み血が滲むほど強く握っているせいで痛みが走る。けれどそれでも私は力を緩めなかった。
「絶対に許さないんだから!」
その日から私は復讐を心に誓った。
それは突然のことだった。15歳になったばかりの私は婚約者であるラインハルト皇太子に呼び出されたかと思うと、一方的に婚約破棄を言い渡されたのだ。
「えっと、殿下……? 一体何の冗談ですか?」
あまりに唐突なことで頭がうまく働かない。
まるで悪い夢でも見ているかのようだった。
「僕は君のような性悪女とはやっていけないんだ」
ラインハルト皇太子は淡々とそう告げると私に背を向ける。そして私の目の前で別の女に寄り添った。
「リリアーヌ、君のような優しい女性が婚約者でよかったよ」
「私も殿下が婚約相手で幸せです」
私の前で堂々と抱き合っている彼らを見て頭が真っ白になった。
いや、正確には怒りを通り越して呆れていたのだろう。彼らはこの期に及んで私を悪女だと言い張るつもりらしい。
「さぁ帰ろう、リリアーヌ! これからはずっと一緒だ!」
「はい殿下!」
二人は私に見せつけるように唇を重ねた。それはまるで愛し合う恋人のようだった。
「っ……」
怒りと悲しみが同時にこみ上げてきた。けれどここで感情のままに振る舞うわけにはいかない。私はこの国の未来を担う者として、公的な場での礼儀作法をしっかり教え込まれて育ってきたのだ。だから私は笑顔を取り繕った。
「さようなら殿下」
優雅にドレスの裾を持ち上げ、最大限の敬意を示す礼をする。そして彼らの前から去った。去り際に振り返ると二人はまだ抱き合っていた。それが余計に私の心を傷つけた。
「……ふふっ」
二人の姿が見えなくなってから、思わず笑みがこぼれてしまう。
「ふふっ……あははっ!!」
堪えきれずに声を上げて笑い出す。笑いすぎてお腹の筋肉が痛くなってきた頃、ようやく落ち着いた私は涙を拭いながら呟いた。
「私……捨てられたんだ……」
その瞬間、私の心は空っぽになった気がした。それと同時に頭の中に浮かんだのは復讐の二文字だった。
「……許さない」
怒りに任せて握りしめた拳が震える。爪が皮膚に食い込み血が滲むほど強く握っているせいで痛みが走る。けれどそれでも私は力を緩めなかった。
「絶対に許さないんだから!」
その日から私は復讐を心に誓った。
0
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
あなたの剣になりたい
四季
恋愛
——思えば、それがすべての始まりだった。
親や使用人らと退屈ながら穏やかな日々を送っていた令嬢、エアリ・フィールド。
彼女はある夜、買い物を終え村へ帰る途中の森で、気を失っている見知らぬ少年リゴールと出会う。
だが、その時エアリはまだ知らない。
彼との邂逅が、己の人生に大きな変化をもたらすということを——。
美しかったホワイトスター。
憎しみに満ちるブラックスター。
そして、穏やかで平凡な地上界。
近くて遠い三つの世界。これは、そこに生きる人々の物語。
著作者:四季 無断転載は固く禁じます。
※2019.2.10~2019.9.22 に執筆したものです。
卒業記念パーティーに参加していた伯爵家の嫡男です。
剣伎 竜星
恋愛
「私、ルカス・アバロンはソフィア・アルビオン公爵令嬢との婚約を破棄するとともに、このカレン・バーバリアス男爵令嬢を新たな婚約者とすることをここに宣言する!」
本日はアバロン王立学園の卒業式で、式はつつがなく終了し、今は式後の記念パーティーが開催されていた。しかし、突然、学園で評判の悪いルカス第一王子とその取り巻き、そして男爵令嬢が乱入。第一王子が前述の婚約破棄宣言を行った。
※投稿リハビリ作品です。
※R15は保険です。
※本編は前編中編後編の3部構成予定で、後編は後日談です。
処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~
インバーターエアコン
恋愛
王宮で働く少女ナナ。王様の誕生日パーティーに普段通りに給仕をしていた彼女だったが、突然第一王子の暗殺未遂事件が起きる。
ナナは最初、それを他人事のように見ていたが……。
「この女よ! 王子を殺そうと毒を盛ったのは!」
「はい?」
叫んだのは第二王子の婚約者であるビリアだった。
王位を巡る争いに巻き込まれ、王子暗殺未遂の罪を着せられるナナだったが、相手が貴族でも、彼女はやられたままで終わる女ではなかった。
(私をドロドロした内争に巻き込んだ罪は贖ってもらいますので……)
得意の転移魔法でその場を離脱し反撃を始める。
相手が悪かったことに、ビリアは間もなく気付くこととなる。
もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜
おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。
それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。
精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。
だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————
パーティー会場で婚約破棄するなんて、物語の中だけだと思います
みこと
ファンタジー
「マルティーナ!貴様はルシア・エレーロ男爵令嬢に悪質な虐めをしていたな。そのような者は俺の妃として相応しくない。よって貴様との婚約の破棄そして、ルシアとの婚約をここに宣言する!!」
ここ、魔術学院の創立記念パーティーの最中、壇上から声高らかに宣言したのは、ベルナルド・アルガンデ。ここ、アルガンデ王国の王太子だ。
何故かふわふわピンク髪の女性がベルナルド王太子にぶら下がって、大きな胸を押し付けている。
私、マルティーナはフローレス侯爵家の次女。残念ながらこのベルナルド王太子の婚約者である。
パーティー会場で婚約破棄って、物語の中だけだと思っていたらこのザマです。
設定はゆるいです。色々とご容赦お願い致しますm(*_ _)m
間違った方法で幸せになろうとする人の犠牲になるのはお断りします。
ひづき
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄されるという未来を見た公爵令嬢ユーリエ。
───王子との婚約そのものを回避すれば婚約破棄など起こらない。
───冤罪も継母も嫌なので家出しよう。
婚約を回避したのに、何故か家出した先で王子に懐かれました。
今度は異母妹の様子がおかしい?
助けてというなら助けましょう!
※2021年5月15日 完結
※2021年5月16日
お気に入り100超えΣ(゚ロ゚;)
ありがとうございます!
※残酷な表現を含みます、ご注意ください
天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~
キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。
事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。
イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる
どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。
当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。
どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。
そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。
報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。
こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる