上 下
4 / 27

4

しおりを挟む
翌日、私はいつも通りの時間に目を覚ました。そして身支度を済ませ、朝食を食べる。その後は勉強の時間だ。


「本日のお勉強はこちらになります」


そう言ってメイさんが私に紙束を渡してくれる。そこには数学の問題と解説が書かれている。


「わかりました」


私は早速問題に取りかかることにした。最初は簡単な計算問題だったが、徐々に難しくなっていく。でも大丈夫、カイト様から教わったことを思い出せば良いだけだ!


「ふぅ……」


二時間ほど経った頃だろうか、ようやく最後の問題まで終わった。


「お疲れ様でした、フィーナ様」


メイさんがお茶を持ってきてくれた。私はそれを一口飲むと、一息つくことができた。するとそこへカイト様が書斎からやってきた。


「フィーナ、今いいか?」


「はい!」


私は元気よく返事をする。


「少し出かけることになった。準備をしておいてくれ」


「わかりました」


私は席を立ち、自室に戻ることにした。そして部屋に戻って着替えを始めることにする。クローゼットの中には様々な服があったけど、どれを着たらいいのか迷ったのでメイドのメイさんに相談することにした。


「あの、どれを着たらいいかわからなくて……」


「そうですね……フィーナ様はとてもお美しいお方ですからどのようなドレスでもお似合いになるかと思いますが……こちらなんていかがでしょうか?」


そう言ってメイさんが見せてくれたのは白いワンピースだ。デザインはシンプルだけどとても可愛い。私は早速それを着てみることにした。スカート丈が少し短いような気がしたけど気にしないことにしよう。着替え終わった私を見て、メイさんは少し驚いた顔をしていた。どうしたんだろう?


「どうかしましたか?」


「いえ、フィーナ様があまりにもお美しいので見惚れてしまいました……」


「そんなことないですよ!」


私はつい顔を赤くしてしまう。でも褒められるのは嬉しいことだ。そうして私は着替え終わった後、再び書斎に向かった。するとそこにカイト様がやってきた。


「準備はできたかい?」


「はい、大丈夫です」


私がそう答えると、カイト様は微笑みながら言った。


「では行こうか」


そんなやり取りの後、私とカイト様は屋敷を出たのだった――。


「あの、カイト様。どちらへ行かれるのですか?」


「それは着いてからのお楽しみだよ」


「そうですか……」


私はそれ以上深く聞かなかった。きっと何か理由があるんだろうと思ったからだ。しばらく馬車に乗っていると、目的地に着いたらしい。そこは小さなカフェだった。中に入ると店内は落ち着いた雰囲気で居心地がいい。私たちは窓際の席に座り、メニューを見ることにした。


「フィーナは何が食べたい?」


「そうですね……ではこのケーキセットにしようと思います」


私が選んだのはショートケーキと紅茶のセットだ。カイト様が頼んだのはサンドイッチとコーヒーだった。注文を終えるとしばらくして料理が運ばれてきた。


「いただきます」


まずはケーキを食べてみることにする。一口食べると、口の中に甘さが広がり幸せな気分になる。紅茶を飲むとさっぱりとした味わいになり、口の中がリセットされるような感覚に陥る。とても美味しい!


「美味しかったです!」


私がそう言うと、カイト様は微笑みながら言った。


「それは良かったよ」


そんな会話をしながら食事を終えた後、私たちは店を後にしたのだった――。その後も私たちは色々な場所を回った。公園に行って散歩をしたり、カフェでお茶したり……。そして日が暮れてきた頃、カイト様は私に言った。


「今日は楽しかったかい?」


「はい! とても楽しかったです!」


私は満面の笑みで答えた。こんなに充実した一日を過ごしたのは初めてかもしれない。だからつい興奮気味に答えてしまった。するとカイト様は少しだけ照れくさそうな表情をしながら言った。


「それなら良かった」


そんな会話を交わした後、私たちは帰路についたのだった――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」 その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。 「了承しました」 ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。 (わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの) そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。 (それに欲しいものは手に入れたわ) 壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。 (愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?) エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。 「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」 類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。 だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。 今後は自分の力で頑張ってもらおう。 ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。 ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。 カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、もう終わりにしませんか

岡暁舟
恋愛
公爵令嬢ナターシャの婚約者は自由奔放な公爵ボリスだった。頭はいいけど人格は破綻。でも、両親が決めた婚約だから仕方がなかった。 「ナターシャ!!!お前はいつも不細工だな!!!」 ボリスはナターシャに会うと、いつもそう言っていた。そして、男前なボリスには他にも婚約者がいるとの噂が広まっていき……。 本編終了しました。続きは「気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、もう終わりにします」となります。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

処理中です...