「お前のような奴とは結婚できない」と婚約破棄されたので飛び降りましたが、国を救った英雄に求婚されました

1

「フィーナ・リンフォード、貴様との婚約を破棄する！」


王立学園の卒業パーティーで、私の婚約者であるラインハルト侯爵の声が響き渡る。


「ど、どうしてですか……？」


突然の婚約破棄に、私は動揺を隠しきれない。


「ふん！ 貴様は俺にふさわしくない。だから婚約を破棄するのだ」


ラインハルト侯爵は悪びれる様子もなくそう言い放った。


「そんな……」


私はその場で崩れ落ちた。せっかく伯爵令嬢として学園に入学し、様々なことを努力して彼に相応しい女になろうとしてきたのに……。こんなのってないよ……。


「今までご苦労様。これからは私がラインハルト様の妻になりますわ」


その横には同級生のクロエが勝ち誇った笑みで私を見下していた。


「クロエ……。どうして……」


私は呆然としながらクロエを見上げる。


「だってあなた、地味だし、太ってるし、頭も悪いじゃない。そんなあなたがラインハルト様の婚約者だなんてふさわしくないわ」

クロエは私にそう言い放った。


「そんな……」


私はショックを隠しきれなかった。私は確かに地味だし、太ってるし、頭も悪いけど……それでも学園ではみんなと仲良くなれるよう頑張ってきたつもりだ。それなのに……。


「わかったなら出ていけ！ 二度と俺の前に姿を見せるな！」


ラインハルト侯爵がそう怒鳴りつける。


「……わかりました」


そんなラインハルト侯爵の怒鳴り声に、私は反論する気力もなかった。私はその場を立ち去るしかなかった。


「……死のう」


私はパーティー会場を出て、学園の校舎裏にある古びた塔にやってきた。ここでなら誰にも見られることなく死ねるだろう。私は塔のてっぺんに上り、そこから飛び降りた――――


◇


目が覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。


「……ここはどこ？」


「目が覚めたかい」


見知らぬ男性から声をかけられる。どうやらここはその男性の部屋のようだ。


「あなたは……？」


私はベッドから起き上がり、男性にそう尋ねる。男性は私に微笑みながら言った。


「俺はこの塔の持ち主であるカイトだ。君が塔のてっぺんから飛び降りたところを俺が助けたのだ」


「……」


「なぜあんな真似をした？」


カイトと名乗る男性は私に尋ねる。


「私は婚約者に婚約を破棄されたんです……。もう生きる気力もなくなりました」


「それで自殺を図ったのか……」


「……はい」


「また死ぬつもりかい？」


「生きてる意味がありませんから……」


「ならば俺が君を癒そう。君が幸せでいられるよう、俺が君を守ってみせる」


「えっ？」


カイトは私にそう言った。


「君の名前は？」


「フィーナ・リンフォードと申します」


「フィーナか。良い名前だ」


「ありがとうございます」


私はカイトから褒められ、少し嬉しかった。カイトが私を見つめる目が、どこかラインハルト侯爵に似ているような気がした。すると突然、カイトは私に抱きついてきた。私は突然のことに驚いてしまう。


「ちょっと！ いきなり何をなさるんですか！？」


私がそう尋ねると、カイトは私の目を見つめて言った。


「君を俺のものにする」


「どういうことですか？」


私はカイトにそう尋ねる。カイトは微笑みながら言った。


「そのままの意味だ。俺は君と一緒に暮らしたい」


「そ、そんな……私なんて……」


私は突然の出来事に戸惑うばかりだった。


「私は地味だし、太ってるし、頭も悪いのに……」


「そんなことは関係ない」


カイトはそう断言する。


「君は自分で思っている以上に魅力的な女性だ」


カイトはそう言って私にキスをした。


「……んっ」


私はファーストキスを体験した。それはとても幸せな時間だった。しかし、私は婚約者に裏切られて絶望していたはず……なのに、なぜか胸が高鳴っているのを感じていた。カイトはキスを終えると、再び私に言った。


「取りあえず家に帰るんだ。君のご両親も心配しているだろう」


「嫌です！ もう家も、私も全部どうでもいいんです……」


私はそう言ったが、カイトは私の両肩を掴んで言った。


「ダメだ」


「……わかりました」


私はしぶしぶ了承した。こうして死にぞこなった私は実家に帰ってきた。両親からは泣きながら「生きていてよかった」と言われた。私もつられて泣いてしまった。しかし、私の心にはカイトのことが引っかかっていた。私は再び塔を訪れたが、カイトの姿はどこを探しても見つからなかった。