悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした～娘は私が責任もって育てて見せます～

22

数日後、私は再び彼と会う約束をしていた。場所は前回と同じ中庭である。


「やあ、ソフィア」


笑顔で手を振ってくる彼を見た瞬間、胸が高鳴るのを感じた私は思わず顔を赤くして俯いてしまったのだ……。そんな私の様子を心配した彼が声をかけてきたので慌てて平静を装ったのだがそれでも動揺を隠しきれていなかったようで心配させてしまったようだった……


「大丈夫かい？」


そう言って顔を覗き込んでくる彼にドキドキしながらも何とか誤魔化そうと必死に言い訳を考えていたのだが結局何も思いつかなかった私は正直に話すことにしたのだった……


「実は……その……先日の件ですけど……」


そこまで言ったところで再び顔が熱くなってきたのを感じた私はそれ以上続けることができなくなってしまったのだがそれでも何とか最後まで言い切ることができたのである……！


「あの、私で良ければ喜んでお受けいたします……！」


私がそう言うと彼はホッとした表情を見せた後で優しく抱きしめてくれたのだった……。


「ありがとう、ソフィア！ 嬉しいよ！」


その言葉に私も嬉しくなって思わず涙が溢れ出してしまったのだが、そんな私を慰めるように彼は頭を撫でてくれたのだった……


「泣かないでおくれ、ソフィア。君に涙は似合わないよ」


そう言って涙を拭ってくれる彼の優しさに感謝しながら私は笑顔を浮かべることに成功したのだった……！


「ありがとうございます、リュート様……」


それから私は彼の実家に挨拶に行くことになった。そしてついに当日を迎えることになる……


「あの、本当によろしいのでしょうか？」


不安そうな表情を浮かべる私とは対照的に彼は笑顔で答えてくれたのだった。


「もちろんさ！ 君は何も心配しなくていいからね」


そんなやり取りの後、私たちは彼の実家へと向かったのである……！ 道中は緊張のあまりほとんど会話がなかったのだが、それでも不思議と気まずくはならなかったのだ。むしろお互いが側にいるというだけで心が安らぎ幸せな気持ちになれたほどだった。


「ここが僕の実家だよ」


そう言って彼が指差したのは大きなお屋敷だった。その大きさに圧倒されていると彼が私の手を取り中へと案内してくれたのだった……


「初めまして、ソフィア様。私はこのお屋敷で働かせていただいているメイド長のアリアと申します。以後お見知りおきくださいますようお願い申し上げます」


中に入るとまず最初に出迎えてくれたのはメイド長を名乗る女性だった。彼女は丁寧にお辞儀をした後で自己紹介をしてくれたのである！


「あ、どうも初めまして……」


緊張しながら挨拶を返す私だったがそんな様子を見てクスリと笑みをこぼした彼女は優しく語りかけてくれたのだった……。


「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ？ ゆっくり慣れていってくだされば構いませんからね」


その言葉に少しだけ落ち着きを取り戻した私は改めて周りを見回してみたところとても綺麗な内装が施されておりまるで高級ホテルのような雰囲気を感じたのだった……。


「あの、本当に私なんかがお邪魔して大丈夫なんでしょうか……？」


恐る恐る尋ねてみると彼女は笑顔で答えてくれたのだった。


「はい、もちろんです！リュート様たってのご希望でしたので喜んでお迎えさせていただきますよ」


そんなやり取りをした後、私たちは客間へと案内されることになったのである。そしてソファーに腰掛けたところでお茶を出してくれたのだがその味はとても美味しくて思わず感動してしまったほどだった……。


「とても美味しいです……！」


そう言うと彼女も嬉しそうに微笑んでくれたのだ！ それからしばらく雑談をしている内に緊張も解けてきた私は少しずつリラックスできるようになっていったのだった……。


「それでソフィア様はリュート様と将来を誓い合われたのですね？」


アリアさんの言葉に顔を真っ赤に染め上げる私だったがそれでも素直に答えたのである……！


「はい、そうです……」


すると彼女はニッコリと笑ってこう言ってくれたのだ！


「おめでとうございます。お二人の幸せを心よりお祈り申し上げますね」


その言葉に感動した私は思わず泣いてしまったもののすぐに落ち着きを取り戻すことができたので改めてお礼を言った後で話題を変えることにしたのだった……。


「ところでリュート様のご家族の方はどちらにいらっしゃるのでしょうか？」


私がそう尋ねると彼女は少し困ったような表情を浮かべながらも答えてくれたのだった……。


「実はですね、旦那さまも奥様もお忙しい方ですのであまり顔を合わせる機会が少ないのですよ……」


その言葉に少しだけ不安を覚えた私だったがそれでもここで引き下がるわけにはいかなかったので思い切って聞いてみたところ予想外の言葉が返ってきたのである！


「そうですか、でしたらお会いできる時を楽しみにしていますね！」


笑顔で答える私を見た彼女は安心したような表情を見せた後で改めて挨拶をしてくれたのだった！


「それでは私はこれで失礼させていただきますね。何かございましたらいつでもお呼びください」


そう言って立ち去ろうとする彼女を慌てて呼び止めた私だったが、振り返った彼女に向かってこう言ったのである……！


「あの、リュート様の両親ってどんな方なんですか？ もしよろしければ教えていただきたいのですが……」


それを聞いた彼女は少し考える素振りを見せた後でこう答えてくれたのだった。


「そうですね……旦那さまは厳格な方ですがお優しい一面もあるお方ですし、奥様はとても明るい性格の方でリュート様のことを溺愛していらっしゃいますね」


「ありがとうございます！ とても参考になりました」


そう言って頭を下げる私に彼女はニッコリと笑ってくれた後で改めて挨拶をしてくれたのである！


「それでは私はこれで失礼いたしますね。ごゆっくりしていってください」


こうしてアリアさんは部屋から出て行ったのだった……！


「今日はこの辺で失礼しますね」と言って部屋を出て行ったアリアさんを見送ると、私はリュート様の方を見上げた。彼は微笑みながら私の手を取り、ソファーの方へと導いてくれた。


「緊張していたみたいだけど、少しは落ち着いたかな？」


リュート様の問いかけに、私は小さく頷いた。


「はい、少しだけ。でも、まだ少し不安です……」


そんな私を見て、彼は優しく微笑んだ。


「大丈夫だよ、ソフィア。僕の両親もきっと君を気に入ってくれるはずだよ。だって、君は本当に素晴らしい人だからね」


その後、私たちはしばらく静かにお茶を楽しんだ。リュート様は私の緊張をほぐすために、いろいろな話をしてくれた。彼の優しさと気遣いに触れる度に、私はますます彼に惹かれていった。