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数日後、私はリュートの部屋を訪ねることにしたのである。本当はもっと早く会いに行きたかったのだが、あの時のことを思い出すとどうしても勇気が出なかったのだ。でもいつまでも逃げているわけにはいかないと思い直し、覚悟を決めて部屋を訪れたのだ。
「失礼します……」
私が部屋に入るとリュートは驚きの表情を浮かべていたものの快く迎え入れてくれたのだった。そして私たちはしばらくの間他愛のない会話を楽しんだ後、本題に入ることにしたのである。
「あの……この前のことなんですけど……」
そこまで言いかけたところでリュートが遮ってきたのだ。
「その話はもういいんだ」
「え……?」
私は思わず言葉を失ってしまった。まさか彼がそんなことを言うとは思ってもみなかったからだ。すると彼は真剣な眼差しで私を見つめてきたのである。そしてゆっくりと口を開いたのだった。
「君が俺のことを好きだと言ってくれて嬉しかったよ」
その言葉に私の心臓は大きく跳ね上がったような気がした。恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっているであろうことが自分でもよく分かったほどだ。そんな私の様子を見ていたリュートはさらに言葉を続けたのだ。
「でも……ごめん、今はその気持ちに応えることはできないんだ」
私は分かっていた。リュートはフィーナのことをまだ想っているということを……。それでも彼に自分の気持ちを伝えたかったのである。たとえそれが自己満足だとしてもだ。
「そうですよね……」
私の言葉を聞いてリュートは少し悲しそうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔に戻るとこう言ったのだ。
「でもいつか必ず答えを出すからそれまで待っていてほしいんだ」
その言葉に私は胸が締め付けられるような感覚を覚えたのだが、それでも何とか平静を装って言ったのである。
「はい! いつまでも待ちます!リュート様の答えが出るまでずっと!」
私は笑顔で答えたつもりだったのだが、もしかしたら少しぎこちなかったかもしれない。それでもリュートは私の気持ちを受け入れてくれたのだ。それだけで十分だと思えたのだった……。
「リュート様、今日は一緒にお散歩に行きませんか?」
私は思い切ってそう提案してみたのだが、彼はあまり気乗りしない様子だった。やはりまだ心の整理がついてないのだろうと思い、それ以上は何も言えなかったのである。だがそれでも諦めずに何度か誘ってみた結果、ようやく承諾してくれたのだ。
「分かったよ……それじゃあ行こうか」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
私は嬉しさのあまりその場で飛び跳ねてしまったほどだった。その様子を見たリュートは苦笑しながらも優しく見守ってくれていたのである。そして私たちは一緒に出かけることになったのだ……。
「ねえ、リュート様はどうして私を選んでくれたんですか?」
歩きながら私はふと疑問に思ったことを口にした。それはずっと聞いてみたいと思っていたことでもあったのだ。すると彼は少し考え込んだ後で答えてくれたのだった。
「そうだな……やっぱりフィーナの代わりとして見ていたからかな……」
その言葉を聞いた瞬間、私の心はズキリと痛んだ気がしたがそれでも平静を装って聞き返したのだ。
「そうだったんですね……」
「うん、だから本当は君のことを好きになれたら良かったんだけど……まだ気持ちの整理がつかないんだ」
その言葉を聞いた瞬間、私は泣きそうになったがぐっと堪えることに成功したのである。ここで泣いたりしたら彼に迷惑をかけてしまうと思ったからだ。そして私たちは無言のまま歩き続けたのだった……。
しばらく経ってから私たちは街外れにある花畑までやってきたのだが、そこで不意にリュートが立ち止まったのである。どうしたんだろうと思って視線を向けると彼は真剣な表情を浮かべてこちらを見つめ返してきたのだ。その迫力に圧倒された私は何も言えずにただ黙って見つめ返すことしかできなかった。すると彼はゆっくりと口を開いて言ったのである。
「君には申し訳ないと思っているんだ」
突然の言葉に驚いてしまった私だったが、それでも何とか平静を装って聞き返したのだ。
「どうしてですか?」
「だって君はこんなにも僕のことを愛してくれているのに……僕はその気持ちに応えてあげられないからさ」
その言葉に胸が熱くなったような気がした。本当に私のことを想ってくれているんだなと思ったからだ。だからこそ私は自分の気持ちを正直に伝えることにしたのである。
「いいんです、リュート様……今は無理して答えを出さなくてもいいんです。いつかきっと私の想いが届くと信じていますから!」
そう言って微笑む私の顔を見たリュートは一瞬だけ驚いたような表情を浮かべた後で微笑んでくれたのだった……。
「失礼します……」
私が部屋に入るとリュートは驚きの表情を浮かべていたものの快く迎え入れてくれたのだった。そして私たちはしばらくの間他愛のない会話を楽しんだ後、本題に入ることにしたのである。
「あの……この前のことなんですけど……」
そこまで言いかけたところでリュートが遮ってきたのだ。
「その話はもういいんだ」
「え……?」
私は思わず言葉を失ってしまった。まさか彼がそんなことを言うとは思ってもみなかったからだ。すると彼は真剣な眼差しで私を見つめてきたのである。そしてゆっくりと口を開いたのだった。
「君が俺のことを好きだと言ってくれて嬉しかったよ」
その言葉に私の心臓は大きく跳ね上がったような気がした。恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっているであろうことが自分でもよく分かったほどだ。そんな私の様子を見ていたリュートはさらに言葉を続けたのだ。
「でも……ごめん、今はその気持ちに応えることはできないんだ」
私は分かっていた。リュートはフィーナのことをまだ想っているということを……。それでも彼に自分の気持ちを伝えたかったのである。たとえそれが自己満足だとしてもだ。
「そうですよね……」
私の言葉を聞いてリュートは少し悲しそうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔に戻るとこう言ったのだ。
「でもいつか必ず答えを出すからそれまで待っていてほしいんだ」
その言葉に私は胸が締め付けられるような感覚を覚えたのだが、それでも何とか平静を装って言ったのである。
「はい! いつまでも待ちます!リュート様の答えが出るまでずっと!」
私は笑顔で答えたつもりだったのだが、もしかしたら少しぎこちなかったかもしれない。それでもリュートは私の気持ちを受け入れてくれたのだ。それだけで十分だと思えたのだった……。
「リュート様、今日は一緒にお散歩に行きませんか?」
私は思い切ってそう提案してみたのだが、彼はあまり気乗りしない様子だった。やはりまだ心の整理がついてないのだろうと思い、それ以上は何も言えなかったのである。だがそれでも諦めずに何度か誘ってみた結果、ようやく承諾してくれたのだ。
「分かったよ……それじゃあ行こうか」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
私は嬉しさのあまりその場で飛び跳ねてしまったほどだった。その様子を見たリュートは苦笑しながらも優しく見守ってくれていたのである。そして私たちは一緒に出かけることになったのだ……。
「ねえ、リュート様はどうして私を選んでくれたんですか?」
歩きながら私はふと疑問に思ったことを口にした。それはずっと聞いてみたいと思っていたことでもあったのだ。すると彼は少し考え込んだ後で答えてくれたのだった。
「そうだな……やっぱりフィーナの代わりとして見ていたからかな……」
その言葉を聞いた瞬間、私の心はズキリと痛んだ気がしたがそれでも平静を装って聞き返したのだ。
「そうだったんですね……」
「うん、だから本当は君のことを好きになれたら良かったんだけど……まだ気持ちの整理がつかないんだ」
その言葉を聞いた瞬間、私は泣きそうになったがぐっと堪えることに成功したのである。ここで泣いたりしたら彼に迷惑をかけてしまうと思ったからだ。そして私たちは無言のまま歩き続けたのだった……。
しばらく経ってから私たちは街外れにある花畑までやってきたのだが、そこで不意にリュートが立ち止まったのである。どうしたんだろうと思って視線を向けると彼は真剣な表情を浮かべてこちらを見つめ返してきたのだ。その迫力に圧倒された私は何も言えずにただ黙って見つめ返すことしかできなかった。すると彼はゆっくりと口を開いて言ったのである。
「君には申し訳ないと思っているんだ」
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「どうしてですか?」
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その言葉に胸が熱くなったような気がした。本当に私のことを想ってくれているんだなと思ったからだ。だからこそ私は自分の気持ちを正直に伝えることにしたのである。
「いいんです、リュート様……今は無理して答えを出さなくてもいいんです。いつかきっと私の想いが届くと信じていますから!」
そう言って微笑む私の顔を見たリュートは一瞬だけ驚いたような表情を浮かべた後で微笑んでくれたのだった……。
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