悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした～娘は私が責任もって育てて見せます～

7

次の日、私はエレローラを連れて冒険者ギルドに向かうことにした。昨日の男性に改めてお礼が言いたかったからである。ギルドに着くと私たちはすぐに受付嬢の元へと向かったのだった。


「すみません、昨日ここにいらした冒険者の方にお礼を言いたいのですが」


私が尋ねると、受付嬢はすぐに手を上げて一人の冒険者を呼んでくれたのだ。そして私を見ると納得したように微笑んでくれる。おそらく私のことを覚えていたのだろう。


「あの方ならクエストに行ってますよ」


「そうですか……いつ頃お戻りになるか分かりますか？」


私の質問に対して彼女は少し考え込んだ後で口を開いたのだ。


「そうですね……早ければ今日中には戻ると思いますが」


「わかりました、ありがとうございます」


私は彼が戻ってくるまでギルドで待つことにしたのである。その間、エレローラと一緒に食事を取ったり世間話をして時間を潰したのだった。そして夕方近くになってようやく彼が戻ってきたのである。


「あ！ いた！」


私とエレローラが駆け寄ると彼は笑顔で迎えてくれたのだ。そんな彼に私は改めてお礼を言ったのである。


「昨日は本当に助かりました！ なんとお礼を言っていいか……」


「いやいや、気にしないでいいよ。俺は当然のことをしたまでだから」


彼はそう言って微笑んでくれたのだ。その優しい笑顔に私も自然と笑みが溢れてしまった。それから少し話をした後で私は改めて彼の顔を見たのである。


「私はソフィアと申します。こちらは娘のエレローラです」


「エレローラと申します、よろしくお願いします！」


私達が名乗ると彼もまた名前を教えてくれたのだ。彼の名前はリュートさんと言うらしい。年齢は20代前半くらいに見える。身長が高く体格もいいためとても頼り甲斐がありそうだと思ったのである。


「もしよければ、お礼をさせて欲しいのですが……」


「いや、本当に気にしないでいいよ」


私の言葉に彼は優しく微笑んでくれた。その笑顔を見ていると何故か心が落ち着くような感覚を覚えたのである。そして同時にこの人になら娘を任せられるかもしれないと思ったのだった。


「いえ、そうはいきません！」


私は食い下がるように続けたのだ。このまま何もせずに帰るわけにはいかないという気持ちがあったからである。そんな私の様子を見て彼は少し考えた後で口を開いたのだ。


「……じゃあこうしよう！ 今度俺が困っていたら助けてくれるかい？」


その言葉に私は一瞬キョトンとしてしまったがすぐに笑顔で頷いたのである。


「はい！ 必ずお力になります！」


私の言葉に彼もまた微笑んでくれたのだった。それが私とリュートさんの出会いだったのだ。その後、私たちは一緒に食事を摂ることになったのである。彼との話はとても楽しく時間が経つのを忘れるほどだった。


「リュートさんは普段は何をしていらっしゃるのですか？」


「うーん……色々してるかな……」


彼ははぐらかすように答えた。おそらく聞かれたくないことだったのだろうと思い、それ以上は追求しなかったのである。それからも彼との話は弾み、気が付けばすっかり夜遅くなってしまったのだった。


「おっと！ もうこんな時間か！」


リュートさんが慌てて立ち上がる姿を見て私も立ち上がったのだ。そして改めて彼にお礼を言ったのである。


「今日は本当にありがとうございました」


「いやいや、こちらこそ楽しかったよ」


そう言って微笑む彼の笑顔はとても素敵だった。そんな彼ともっと一緒にいたいという気持ちが強くなっていったのである。しかし、これ以上彼を引き止めるのは迷惑になるだろうと思い諦めることにしたのだ。


「では、私達はこれで失礼しますね」


「ああ、また会おう」


別れ際にリュートさんは一枚の紙を渡してくれたのだ。そこには彼の連絡先が書かれていたのである。


「何かあったらいつでも連絡してくれ、力になるよ」


そう言って彼は笑顔で手を振ってくれたのだった。その優しい笑顔に見送られながら私たちは帰路についたのである。そして家に着いてからも彼のことが頭から離れずずっとドキドキしっぱなしだったのだ。