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「君との婚約を破棄する」


ダンスパーティーに出席した私ことクロエは婚約者のオズワルド王子から突然婚約破棄を言い渡された。


「なぜですか?」


「君なんかより素晴らしい女性を見つけたんだ」


1人の女性が入って来る。豪華なドレスを身にまとった美しい女性だった。


「紹介しよう。アルカディア王国のエリザベート王女だ」


「初めまして、クロエ様」


そう言って彼女は優雅にお辞儀をする。美しく整った顔に、ドレスからでもわかる豊満なバストが私の心を刺激する。


「元々ただの政略結婚だ。庶民の人気取りのために、冴えない君と婚約したに過ぎない。だが、その必要はなくなった。これからは自由に生きるといい」


私もお父様に言われるままに結婚を決められた。公爵家と結婚すれば財政は潤うという理由で。愛などない政略結婚だった。

それでも私はオズワルドを愛そうと努力していた。しかし、彼にはその気持ちは届かなかったらしい。


「もちろん体裁上の問題もある。すぐには婚約解消はしない。庶民に大人気の聖女様を振ったとなれば問題になる。君はどこかの修道院に行くといい」


オズワルドの言っていることが理解できない。私は彼の婚約者で、これまでも彼を支えてきたつもりだ。それなのにどうして婚約を破棄されなければならないのか。


「そんな……」


「君のような女と結婚するより、彼女は私に相応しい女性だ」


その言葉に私の心は切り裂かれたように痛んだ。


(ひどい……。どうしてこんな仕打ちをするの?)


そう叫びたかったけれど、王族相手にそんなことできるはずもない。私は唇を嚙み締めて耐えることしかできなかった。


「……分かりましたわ」


「そうか。みっともなく泣くかとも思ったが、そのくらいのプライドは持ち合わせているようだな」


そう言ってオズワルドたちは去って行った。1人残された私は呆然としていた。

なんだったんだろう。これまでの人生は。彼のために尽くしてきたのに、その思いは届いていなかった。

たとえどんなに虐げられたとしても、いつか彼があたしのことを心から愛してくれると思っていたのに。


(ああ、そうか……)


私は彼のことを愛してなんかいなかったんだ。ただ彼が好きだっただけで、婚約関係が続くことが嬉しかっただけ。だから彼の心が離れても悲しくないんだ。

きっとこの心の痛みは彼への気持ちに気づいたからだろう。


(でも、もう遅いわね……)


もう、彼には愛想が尽きた。彼のことがどうでもよくなった。

これからは自由に生きることができる。それだけが唯一の救いだった。


(これからは新しい幸せを探しにいこう)


私は馬車に乗って、この国を出た。輝かしい未来を掴むために……。
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