悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています

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ある日のこと、私はお兄様と一緒に図書室で勉強をしていました。静かな室内に響くペンの音。窓の外は晴れ渡っていて、穏やかな空気が漂っていました。ふと視線を上げると、隣の席に座っているお兄様の姿が目に入りました。真剣な眼差しで問題集に取り組んでいる姿を見ていると、なんだか胸の奥がきゅっと締め付けられるような気持ちになります。


「どうかしましたか？」お兄様が私に声をかけます。


「いえ……なんでもないです」そう言って誤魔化しますが、本当はあなたの横顔を見つめていましたなんて言えませんでした。


「少し休憩しましょうか」そう言うと、お兄様は立ち上がります。


「何か飲み物を持ってきますね」そう言って部屋を出ていくお兄様の後ろ姿を見つめます。その背中がやけに遠く感じてしまいました。


「はぁ……」私は小さくため息をつきます。お兄様は私のことをどう思っているのだろう？ そんな考えが頭をよぎります。もしも、私があなたに恋心を抱いていると言ったらどんな反応をするでしょうか？それとも、兄妹としてしか見ていないのでしょうか？ 考えれば考えるほど不安になります。


「おまたせしました」飲み物を片手にお兄様が戻ってきました。


「ありがとうございます」私はカップを受け取り、一口飲みます。甘くて温かいココアの味が口の中に広がりました。


「美味しいです」私が微笑むと、お兄様も笑顔を見せてくれました。その笑顔を見るだけで幸せな気持ちになります。ああ、やっぱり私はこの人のことが好きなんだなと思うのです。だから……もっと近づきたいと思ってしまうんです。


「……あの……」と言いかけたところで言葉を飲み込みます。このまま気持ちを伝えてもいいのだろうか？ もし拒絶されたら？ そんなことを考えているうちに何も言えなくなってしまいました。


「どうかしましたか？」お兄様が不思議そうな顔でこちらを見ています。


「……いえ、なんでもありません」私は首を横に振りました。今はまだこれでいいのです。いつかきっと伝えられる日が来るはずだから……。


そう自分に言い聞かせながら、窓の外に広がる青空を見つめます。雲一つない空はどこまでも続いていました。


「そろそろ戻らないと授業に遅れてしまいますね」時計を見ると、昼休みの終わりが迫っていました。


「ああ……そうですね」私は名残惜しげに答えました。もっとお兄様と一緒にいたかったな……そんなことを考えている自分に気がつき、顔が熱くなるのを感じます。


お兄様と一緒に図書室を出て、廊下を歩き始めました。静かな図書室から一歩出ると、廊下には生徒たちの話し声や足音が響いています。


「今日の午後は何の授業でしたっけ？」お兄様が私に尋ねました。


「確か……数学の授業だったと思います」私は答えながら、お兄様の横顔をちらりと見ました。


「そうでしたね。今日は三角関数の続きですよ」お兄様が言いました。「難しい内容だけど、一緒に頑張りましょう」


その言葉に、私の心臓が少し早く鼓動しました。「はい、お兄様と一緒なら頑張れます」と答えると、お兄様は優しく微笑んでくれました。


廊下の窓から差し込む陽光が、お兄様の髪を柔らかく照らしています。その姿を見ていると、ますます胸が締め付けられるような気持ちになりました。


「あの、お兄様……」私は勇気を出して声をかけました。


「何でしょうか？」お兄様が立ち止まって、私の方を向きました。


「いつも……私のことを気にかけてくれてありがとうございます」言いたいことはもっとたくさんあるのに、それだけしか言えませんでした。


お兄様は少し驚いたような表情を見せましたが、すぐに優しい笑顔に戻りました。「当たり前のことですよ。あなたは大切な妹なんだから」


その言葉を聞いて、嬉しさと少しの切なさが入り混じった複雑な気持ちになりました。私にとってお兄様は特別な存在なのに、お兄様の中では私はただの妹なのでしょうか。


「さあ、教室に行きましょう」お兄様が言いました。「遅刻したら先生に怒られてしまいますからね」


私は頷いて、お兄様の後を追いかけました。このままずっとお兄様の背中を追いかけていくのだろうか。いつか並んで歩けるようになるのだろうか。そんなことを考えながら、私たちは教室へと向かっていきました。


授業が始まり、先生の説明を聞きながらも、私の心はお兄様のことでいっぱいでした。隣の席で真剣に授業を受けているお兄様の横顔を、時々こっそりと見つめています。


「この問題、誰か解いてみてくれますか？」先生が言いました。


クラスメイトたちが躊躇している中、お兄様が手を挙げました。「はい、やってみます」


黒板の前に立つお兄様の姿を見て、私は誇らしい気持ちになりました。難しい問題を解きながら、丁寧に説明するお兄様。その姿に、クラスメイトたちも感心している様子です。


「さすがですね。完璧な解答です」先生が褒めると、クラス中から拍手が起こりました。


お兄様が席に戻ってくると、私は小さな声で「すごかったです」と言いました。お兄様は照れくさそうに微笑み、「ありがとう」と答えてくれました。


授業が終わり、下校時間になりました。私たちは一緒に帰路につきます。夕暮れの空が、オレンジ色に染まっていきます。


「今日も一日お疲れ様でした」お兄様が言いました。


「お兄様こそ、お疲れ様でした」私は答えます。


並んで歩きながら、私は密かに決意しました。いつかきっと、この気持ちを伝えよう。たとえ今はまだ伝えられなくても、いつか必ず……。


そう思いながら、私たちは夕焼けに染まる道を、ゆっくりと歩いていきました。